企業理解や選考優遇など、就活にとってさまざまなメリットがあるインターンシップ(インターン)。最近では、インターンを実施する企業は増え続ける一方で、学生の参加率もこの4〜5年で右肩上がりに増え、8割以上に達するとも言われています。
しかしその一方で、時間の浪費に終わってしまうインターンがあるのも事実。ワンキャリアの調査では、実に27%のインターンについて、就活生が「ムダだった」と答えています。
そんな状況を鑑み、ワンキャリアは5万件以上のクチコミから「本当に行ってよかった」と思うインターンのランキングを「就活クチコミアワード」として公開しました。そのトップ10社である「GOLD賞」を受賞した企業のうち、今回はFringe81をインタビュー。彼らのインターンにかける思いやこだわりを人事の浦川さんに伺いました。
──「就活クチコミアワード インターン部門」のGOLD賞、おめでとうございます!
浦川:率直にうれしいですね。就活生のリアルなクチコミをベースにしたアワードということで、参加した学生が弊社を評価してくれたのは、非常に光栄なことだと思っています。
Fringe81 人事部 部長 シニアマネージャーの浦川 雄志(うらかわ ゆうし)さん
──ありがとうございます。あらためて、Fringe81が実施しているインターンの内容を教えていただけますか?
浦川:調査に重きを置いた3日間の「リサーチサマージョブ」を行っています。米国のVC(ベンチャーキャピタル)が投資をしているスタートアップ100社以上から1社を選び、その企業がどのように成長するか仮説を立て、役員陣にプレゼンするというものです。
──リサーチがテーマのインターンは珍しいですよね。どうしてこのようなインターンを行っているのですか?
浦川:弊社代表の田中が学生時代に経験したインターンがベースになっています。あの頃はWebベンチャーの黎明(れいめい)期で、さまざまな事業が出てきてワクワクすることが多かった。そういう経験を今の学生にもしてもらいたい、という思いがあるんですよ。新規事業って「アイデア」で勝敗が分かれるイメージを持つ人が多いですが、実際は綿密な市場の調査など、リサーチやファクトの方が成否を分けるポイントになりやすいです。
とはいえ「リサーチ」というテーマ自体は非常に難しいです。リサーチの対象となるのは、シード期の海外スタートアップなので、英語のWebサイトを読むというところから言語の壁がありますし、サービスの内容を見ても、学生にとっては何をやっているのか理解が難しい部分もあるでしょう。そうした企業に対して、未知なる可能性をリサーチし、ビジネスのプロである役員陣に提案するのは、簡単なことではありません。
リサーチサマージョブの様子
──インターンの中で工夫されているポイントはどんな点でしょうか。
浦川:まずはメンターが手厚いサポートを行っていることですね。1つのチームに5人の学生がいるのですが、そこに2人の社員が参加します。一般的にインターンに出るメンターは、学生からの「見栄え」もありますし、その企業におけるエース社員が選ばれることが多いです。しかし、エース社員は実務が非常に忙しいので、学生にフィードバックする時間がなかなか取れません。
弊社の場合は、採用活動で「ウソをつかない」「誠実にやること」という2つのことを大切にしています。インターンにアサインする2名は、入社して1~2年の若手と、4~5年目の先輩社員。こうすることで、社員の生の姿が分かるし、キャリアのイメージもしやすくなります。メンター同士も協力しており、インターン中は参加者の様子を共有するために、学生ごとのSlackチャンネルが立つほどです。
また、リサーチのアウトプットに加えて、課題に取り組むスタンスや、チームビルディングにおける素養など、ビジネススキルにも丁寧にフィードバックを行います。インターン後のアンケートでは「メンターが熱い」という感想も多く、今回のアワードを受賞したのは、インターンの内容だけではなく、チームビルディングワークの満足度が高いからだと思っています。
──チームビルディングワークですか?
浦川:インターンでは、高い成果を出せるチームをどう作るかというワークも行っているんです。実は参加者のグループ分けも工夫しており、ESや履歴書、面接のログなどから「リーダータイプ」「左脳派」「右脳派」といった形でカテゴライズし、バランスがよくなるように配置しています。
とはいえ、それはあくまで私たちの仮説。インターンの中で、チームのバランサー的な役割だった学生が、突然リーダーに化けることも過去にはありました。採用担当としても、非常にうれしい瞬間です。リサーチではありませんが、相手の性格や特長を把握するにも、仮説検証を素早く繰り返すことが重要だと思います。ひいては、それが高い成果を出すチーム作りにつながるわけです。
──3日間のインターン期間を通して、学生に「こういう考え方を持ち帰ってほしい」といった思いはありますか?
浦川:「今、何をやりたい」というよりも、長いキャリアの中で「人としてどうありたいのか」という自分の価値観を見つけてほしいと思っています。なぜかというと、弊社は広告やHRテックなど複数の事業を展開していますし、今後も増やしていきたいので「マーケティングだけをやりたい」というような考え方だと、会社のカルチャーにフィットしません。
そのため、3日間の中で自分自身がどういう価値観を持っているのか、今後ブレることがない思いに気付いてほしい。採用面接においても、そこを見るようにしています。
──近年、インターンを開催する企業も参加する学生も増えてきていますが、御社にとって、インターンはどのような役割を果たしていますか?
浦川:採用PRですね。弊社は事業内容だけを見ると分かりづらい部分があるので、今回のアワードもそうですが、「Fringe81のインターンは面白い」というイメージが醸成されるのは会社の資産であり、こうした取り組みがPRにつながっていくと考えています。
一方で、効率で見ると、社員のリソースも多く使うので、決して良いとは言えません。今後1~2年は続けますが、5年後くらいに続けているかは分かりません。新しい手段として、長期インターンやマッチング系サービスでの採用なども検討し始めています。
──御社はインターン参加者に内定を出すケースもありますよね。その際に大事にしている点などはありますか。
浦川:最近は就職活動が早期化しており、早期に動く学生の多くは夏の段階で内定を持っているため、内定を出しても「1つの切符を手に入れた」くらいの感覚になってしまいます。この傾向は今後さらに加速していくでしょう。
しかし、インターンという機会の中で学生と企業が出会い、「お互いに合いそうだな」「マッチするかもな」と感じるご縁はそうあるものではありません。双方にとっての貴重な縁に価値を感じていただけるようにすることが大事だと考えているので、会社のカルチャーにフィットするかを継続的に確認し合うなど、入社までの体験設計を工夫しています。
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