「受けていく中で志望度が下がった。あの企業には受かっても行きたくない」
なぜ、就活生は企業の本選考に不満を抱くのだろうか。
もちろん「行きたかった企業の内定がもらえなかった」という理由で不満を持つ人もいるだろう。だが、そういう人は今や少数派かもしれない。仮にそれだけが不満の理由ならば、多くの学生を落とさざるを得ない大企業の方が、多くの不満が集まるはずだからだ。
しかし、現実には100名を超える採用を行う企業でも学生の満足度が高い企業はあるし、少数の採用でも満足度が低い企業もある。私はこの原因は「学生と企業の期待値調整」という問題に帰着すると考えている。両者の期待値がズレたときに学生は落胆してしまうのだ。そのパターンは、大きく分けて3つにまとめられる。
【目次】
(1)学生が、自分を出し切れない:選考設計の問題
(2)学生が、何を評価しているのか分からない:評価方法の問題
(3)学生が、次の選考に生かせない:成長機会の問題
ワンキャリアでは、就活生からの声、つまりクチコミを蓄積して、学生から見た選考の評価を可視化しようとしている。今回、2018年にリリースしたクチコミサービスに寄せられたコメントや評価を通して分かった、良い本選考と悪い本選考を分けるポイントをこの3つの観点で紹介しよう。
(1)自身を出し切れない:選考設計の問題
一般的に、受ける学生が多くなればなるほど、1人あたりの学生に企業がかけられる時間は少なくなる。しかし、学生からすると受けられる企業の数は限られているため、1社1社の本選考に対する思いは強くなるだろう。従って、準備したものを出し切れないような選考を課す企業に対しては、当然、クチコミの評価が低くなりがちだ。
実際にクチコミアワードで入賞している企業には以下のようなクチコミが寄せられている。
【大企業なのに全て個人面接】
大企業であるにもかかわらず、GDや集団面接などは一切なく、全て個人面接。また、1〜3次を通して逆質問に多くの時間を割かれる。つまり、自身の言いたいことを100%できる選考だと思う。面接官自体も1〜3次を通して、温厚な雰囲気で行われるので、安心して面接できて、非常にやりやすい環境だった。※出典:富士通のクチコミ
【完全に個別面接でしっかり話ができる】
最初から個別面接で、私の話をしっかり聞いてくれた印象です。短い時間の中で、話すべきことを話せるように、導いてくださったようにも感じられます。※出典:KDDIのクチコミ
反対にクチコミでの評価が低い企業には
- 面接官1人に対して就活生7人という集団面接で、本当に見られているのか疑問が残る
- GDの時間が短く、なおかつ15人を1人で見ていて、評価が適切にできていないと思った
- 圧迫面接で志望度を聞くだけであり、人柄を見られていないと感じた
などの声が散見された。
こうしたコメントからも、学生が自身を出し切れる採用を行うには「適切な時間と場所を提供すること」や「学生と企業がフェアに語り合える場を提供すること」が重要だと分かるだろう。
【選考設計チェックリスト】
・学生が話す時間を十分に確保しているか
・学生を十分に見られるだけの社員を割けているか
・学生が準備してきた話ができる質問をしているか(志望動機よりも自己PR)
・学生が集中して臨める環境で選考を行えているか
(2) 何を評価しているのか分からない:評価方法の問題
企業に自分の話を聞いてもらうことだけでなく、「自分がどのような評価をされているのか」という点も学生は気にしている。
この点に関しては、内定獲得の有無によらず「自分の何が買われているのか」「何が原因で落ちたのか」が分からないと、学生の満足度が低くなる傾向にあった。
実際にクチコミアワードで入賞した企業には、以下のようなクチコミが寄せられている。
【インターン中から人柄を見られる面接】
とにかく自分の人柄を見てくれます。この会社に合っているのか。合っているとしたら、どの部署なのかということをていねいに教えていただきました。人事の方の誠実な対応に非常に感謝しております。選考もスムーズで、「自分がどうしてこの会社に入りたいのか。どんな部署に行きたいか」を聞かれます。※出典:野村不動産のクチコミ
【自分のどこが評価されているかわかる選考】
3回の面接は全て穏やかな雰囲気だった。自分が行ったことに対して全てに理由を問われ、やったことよりも人間性を見られていた印象。電話でフィードバックをもらえるので自分のどんな部分が評価されたか理解できた。※出典:NTT東日本のクチコミ
反対にクチコミでの評価が低い企業には、
- 何を評価しているのか分からない
- 笑顔で最後まで見送られたのに、すぐに落ちた通知が来た
- 質問の意図が分からず、何を答えたら受かるのかよく分からなかった
- 内定したが、企業として私に何を求めているかが分からず、自分でなくても良いのではないかと思い、内定を辞退した
といったコメントが散見された。これらの声を鑑みると、単に学生と良好なコミュニケーションを取るのではなく、選考に受かった要因や落ちた要因がはっきりとする選考や、面接での質問などが、企業に求められることになるだろう。
【評価方法チェックリスト】
・企業が、選考の通過、および落選の理由を学生にしっかりと伝えているか
・学生が落ちた理由を納得できるような質問を、面接官ができているか
・当たり障りのない選考に留まらず、会話の中で自社に合っている/合わないという点を学生に感じさせているか
(3)次の選考に生かせない:成長機会の問題
意外に思われるかもしれないが、学生は説明会やインターンシップだけでなく、本選考にも自己成長を求めている。これは、就職活動が長期化し「さまざまな企業の選考を受けた後、最終的に本命企業を受けている」というトレンドがあるためだろう。
実際にクチコミアワードで入賞している企業には以下のようなクチコミが寄せられている。
【選考を通して成長できた】
説得面接や要素面接などと呼ばれる特殊な選考形式を取っており、その準備やフィードバックを通して、「人を説得するときにはどのような手順で行えば良いか」などといった、仕事に生かせる営業術のようなものを学ぶことができた。※出典:キーエンスのクチコミ
【経験値になるので、どうせ無理と思わず挑戦してほしい企業】
まず、社員さんが日本人、中国人、インド人と多様でした。グループワークのお題自体は一般的なものでしたが、視野の広い学生が多く、とにかく楽しかったです。英語のESを出さなければいけないというハードルの高さはありましたが、絶対に選考自体が経験値になると思います。※出典:グーグル(Google)のクチコミ
といったクチコミが寄せられており、時期によっては、ある種「インターンシップの延長」と捉えている学生もいると考えられる。
逆に、低評価が多い企業のクチコミとしては
- 期待していたよりも周りの学生のレベルが低く、途中で選考を辞退した
- GDを全く見ていないし、お題もニッチ過ぎ、さらにはフィードバックもなかったため、早期に受けた意味が全くなかった
などの声が散見された。内定の有無に関わらず、学生に対して、何かプラスの経験になるような選考が支持を集められることがよく分かる。
【成長機会チェックリスト】
・学生にフィードバックをしているか
・フィードバックが今回の選考を適切に捉え、次回に生かせる形で示されているか
・周りの学生と交流があり、切磋琢磨(せっさたくま)できるように調整されているか
・選考内容が他社と差別化されており、自分の企業を受ける要因となっているか
良いと思える本選考が広がるために
インターンシップや説明会のような認知や魅力付けと異なり、本選考はあくまで学生を採用するのが目的だ。しかし、だからといって、学生をないがしろにして良いわけでは決してない。
学生が満足できる本選考を行うメリットは2つある。まず考えたいのは、選考を受けた学生がその後、顧客となる可能性が大いにある点だ。それは消費者という形かもしれないし、もしかしたら取引先という形になるかもしれない。不必要にネガティブな印象を与えてしまうのは、明らかな損失だ。
もう一つは次年度の採用への影響だ。クチコミメディアの登場により、就活情報はWeb上に蓄積されるようになった。今の学生への対応が、次年度の学生たちの評判につながることはもう、避けられないだろう。
ワンキャリアでは、学生と企業の立場を対等にすべく、就活の透明化を目指している。学生とフェアに選考を行う企業をワンキャリアは応援しているし、そういった企業が増えることで就活というイベントに漂う「不合理感」はなくなっていくはずだ。
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(Photo:gualtiero boffi/Shutterstock.com)