コロナ禍をきっかけに、対面でのコミュニケーションが減り続ける今、就活の「主戦場」は完全にWeb上に移ったと言っていい。学生同士の情報交換も選考も、ほとんどがオンラインで行われる。数年前には考えもしなかった光景だ。
そんな状況で学生が何を考えて就活をしているのか。それを簡単に知れるのがWeb上で公開されている「クチコミ」だ。
ワンキャリアは2月28日(月)、就活生から集めた6万件以上の体験談をもとに「就活クチコミアワード2022」を発表した。
2019年に始めた「就活クチコミアワード」も今年でもう4年目。例年と違うのは、クチコミを投稿してくれた方のほとんどが、就活スタートからコロナ禍という、いわゆる「ウィズコロナ」で就活を進めた学生だということ。
それによって、クチコミの傾向が急激に変わるわけではないが、企業の評価軸が少しずつ変わっていることは、彼らの生の声から伝わってきた。コロナ禍が収まっても、就活が今まで通りの姿に戻るとは考えにくい。その点で、今年のクチコミはアフターコロナの就活を予期させるものになっているはずだ。
クチコミアワードは「説明会」「インターン」「本選考」の3部門に分かれているほか、2022年度版では学生から評価の高いベンチャー企業10社を選出している。この記事ではGOLD賞を受賞した説明会、インターン、本選考の各部門のTOP10社から、特筆すべきクチコミを紹介していこう。ベンチャー企業10社については、別記事で解説する予定だ。
<目次>
●説明会部門:社風を伝えるのはもはや当たり前。満足度は「業界理解」で差がつく時代に?
●インターン部門:王道を貫くコンサルが人気、「中継」で学生のニーズに応える企業に注目
●本選考部門:コロナ禍で不安な学生に、どれだけ寄り添えるかが試される
●クチコミは、企業と学生の「パワーバランス」を保つツールに他ならない
説明会部門:社風を伝えるのはもはや当たり前。満足度は「業界理解」で差がつく時代に?
まずは説明会部門から。コロナ禍が続く中、当たり前となったオンラインでの説明会。対面コミュニケーションが減少しているからこそ、画面越しで話される社員の「言葉」が重要になっているのは言うまでもない。
2022年版でGOLDを受賞した10社は以下の通り。各々のクチコミを見ていくと、社風の理解以外にも学生が注目しているポイントがあることがうかがえる。
まずは、2年連続でGOLD受賞となったベイン・アンド・カンパニーのクチコミからご紹介。「社員同士のやり取りを見せて、社風を感じてもらいながら、学生からの疑問に答える」という基本に忠実な取り組みだ。
オンラインの説明会では、より「双方向性」が大切な点になるが、単に質問を集めれば良いというものではない。ユニリーバのクチコミからは、匿名性を保つという、オンラインならではの工夫の余地があることが分かるだろう。
また、今回のクチコミでは「業界理解」に対する内容が多かったのも特徴だ。一例として川崎汽船と鈴与の説明会に対する感想を取り上げた。就活では、学生にとってなじみがなかった企業と出会う機会も多い。最初の接点となるであろう説明会で、どれだけ業界に興味を持たせされるか。これが学生の満足度にも直結する要素になっているのだ。
インターン部門:王道を貫くコンサルが人気、「中継」で学生のニーズに応える企業に注目
インターン部門は業界が非常に偏っているのが大きな特徴だ。GOLDを受賞した10社のうち半分以上、なんと6社がコンサルティング業界の企業である。
オンラインで行われるインターンシップが始まって今年は2年目。評価が高かった残りの4社は「自社の強みをオンラインでうまく表現できた企業」だったといえるだろう。
インターンでコンサルが人気なのは、理屈としては単純だ。「選考直結」「スキルが身に付く実務(に近い)経験」「優秀な社員の手厚いフォロー(フィードバック)」という学生からの人気が出やすい要素がそろっているために他ならない。EYストラテジー・アンド・コンサルティングに寄せられたクチコミは、それを端的に表している。
これを「コンサルだから」と捉えるのではなく、自社のインターンシップにどう取り入れるかが、学生からの人気を左右するようになるだろう。これらのポイントを押さえつつ、キリンホールディングスや三井物産はそれぞれ工場、海外拠点という資産をインターン中に中継するという「技」が光る。
「インターンシップのプログラム自体が1つのエンターテインメントのような印象を受けた」というクチコミが寄せられたユー・エス・ジェイも印象的だったほか、オフラインでの開催を喜ぶ学生のクチコミも少なからず見受けられた。学生のニーズを考えると、コロナ禍が過ぎれば、インターンは対面での開催が望ましいのかもしれない。
本選考部門:コロナ禍で不安な学生に、どれだけ寄り添えるかが試される
最後は本選考部門。例年、学生へのフォローが丁寧な企業に高評価が集まる傾向があるが、今年はそれがより顕著になった印象だ。GOLD賞を受賞した企業の顔ぶれも、日系の大企業がほとんどを占めた。
代表的なのは三菱UFJ信託銀行に寄せられたクチコミだ。面接時に学生と丁寧に向き合っていることが伝わってくるだろう。このほかにも「最終面接の際には手紙をくれる」というエピソードが披露された伊藤忠商事のクチコミにも驚いた。
複数内定をもらって悩む学生の相談に乗った、というサントリーホールディングスのエピソードも印象的だ。残念ながらいわゆる「オワハラ」もまだ残る昨今、学生の進路に真摯(しんし)に向き合える企業は、学生からの支持を集めやすいだろう。
特に個人向けの商品やサービスを展開している企業において、学生への対応は企業ブランドに関わるファクターだ。学生との接点は就活だけではない。学生に好印象を持ってもらえれば、将来的に企業や商品のファンになってもらえる可能性がある。
また、周りの学生の優秀さに目が行きやすい説明会やインターンに比べ、本選考は面接などで「社員の優秀さ」を見るタイミングといえるだろう。ソニーのクチコミを見てみると、社員から刺激をもらうことで、志望度が高まるケースも多いことが分かる。
クチコミは、企業と学生の「パワーバランス」を保つツールに他ならない
コロナ禍でオンライン化が進んだ就活。それは企業や学生にとって良いことなのか、というと判断が難しい。
時間や空間の制限がなくなり、便利になったり、チャンスが生まれたりする学生がいる一方で、ミスマッチが増えるなど、さまざまなリスクもあるためだ。個人的には「買い手市場」に傾くことで、企業と就活生のパワーバランスが企業側に振れてしまうことを危惧している。
だからこそ、クチコミには「バランサー」の役割を期待しているのだ。企業が学生を評価するように、学生もクチコミを通じて企業を「評価」する──理想論かもしれないが、そうでないと、企業と学生が対等な形にはならないだろう。
より多くの人が納得してファーストキャリアを選べる、そんな就活(採用)を行われる世界を目指し、今後もワンキャリアは人事と学生の双方に、価値ある情報を届けていくつもりだ。
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就活クチコミアワード2022
(Photo:Salmanalfa/Shutterstock.com)