こんにちは、ワンキャリ編集部です。
アジア・新興国からのインバウンド拡大を受け、成長を続ける航空業界。CAやパイロットなどの華やかなイメージが強い一方、事務職のキャリアはなかなか知る機会がなく、働くイメージが描きにくいのも実情です。今回は全日本空輸(ANA)でキャリア20年を誇る「空のプロフェッショナル」たちにお話を伺いました。
【本日お話を伺うのはこの4人(写真左から)】
岩崎さん:1日に約1000便が飛ぶANAグループのオペレーションの最終的な意思決定に関わっている。
鴨田さん: 財務省、企画室ネットワーク戦略部などを経験。現在は人事制度などに携わる。
林さん:業務プロセス改革室などを経験。現在は羽田空港の国際線旅客サービスの責任者を務める。
田辺さん:客室本部、ホーチミン支店(現ハノイ・ホーチミン支店)、商品戦略部を経験。現在は採用に携わる。
2020年以降、航空業界は伸びますか? カギを握るのは海外マーケット
──本日はよろしくお願いします。今回はANAに新卒入社されて20年という、同期の皆さんがそろいました。就活生がANAや航空業界に感じる不安に、ストレートに答えていただきたいと思います。いきなりですが「航空業界は2020年の東京オリンピック以降の成長性が心配」という声がありました。これにはどうお答えになりますか?
鴨田:私たちも東京オリンピック・パラリンピックのオフィシャルエアラインパートナーとして、大会の成功に貢献しようとしているので、学生の皆さんにはそう見えている部分もあると思います。ただ個人的には、成長の機会はオリンピック・パラリンピックに限らないと思っています。日本国内だけで見ると、人口減少という問題もあると思いますが、世界的に見ると航空需要はずっと拡大してきています(※)。オリンピックが終わったからといって、縮小するイメージは持てませんね。
(※)2017年の航空旅客数は40億人。2036年には78億人になり、年平均成長率は3.6%(出典:国際航空運送協会(IATA)「2036 Forecast Reveals Air Passengers Will Nearly Double to 7.8 Billion」)
──確かに、ANAグループの中期経営計画には、「首都圏空港の発着枠拡大」「アジア・新興国の経済成長」などがビジネスチャンスとして挙がっています。今後の戦略として、アジアや南米地域といった未就航エリアへの進出と、海外エアラインとの提携戦略を打ち出していますね。
鴨田:はい。海外でのプレゼンス拡大は、私たちの課題でありチャンスでもあると捉えています。海外においてANAはまだまだ伸びる余地があり、2020年の東京オリンピック・パラリンピックは海外需要を取り込むきっかけにもなると思います。
鴨田 純一郎(かもだ じゅんいちろう):人財戦略室人事部
1998年入社。新卒で東京空港支店旅客部に配属。2000年より財務部。2005年には財務省に派遣。その後、企画室ネットワーク戦略部(現在のマーケティング室ネットワーク部)、ANA成田エアポートサービスへの出向を経て、2018年4月より現職。
6年連続5スターの真価。ANAの強さは、真似できない「人の力」にある
──航空需要が未だ拡大傾向にある中で、ANAならではの強みを伺います。SKYTRAX社によるワールド・エアライン・スター・レーティングにおいては、6年連続で最高ランクの5スターに認定されています。この理由はどこにあると思われますか?
岩崎:現場力にあると思います。背景には、人財育成や訓練を重視し、必要な時間とお金をきちんとかけていることにあるのではないでしょうか。私が携わっているオペレーションの部門では、配属時に、航空気象や航空法といった、運航に関わる基本的な知識を思いっきりたたき込まれます。また、覚えて終わりではなく、知識や技量を維持するために定期的に訓練や審査を受けるようになっています。日々の地道な努力と積み重ねが現場での対応力の源泉にあると考えています。
林:最後は「人の力」が世界に勝つ要素だと思います。例えば今、海外の航空会社は情報システムに莫大な投資をしています。これは、旅先を決める瞬間から予約・発券・空港・ラウンジ・機内に至るまで、自動化・効率的したサービスを提供するとともにお客様の要望を把握するためです。しかし、大事なのはお客様の要望にどう応えきるかです。ANAとお客様との接点では、お客様一人ひとりの好みやその時の状況に応じてサービスをカスタマイズできる「人の力」があると考えています。料理と似ていますね。良質な具材を集めることができても、食する側がおいしいと感じるか口に合わないと感じるかは料理人の腕、つまり「人の力」次第です。こういった「人の力」はなかなか真似できるものではありませんし、ANAのお客様サービスはここで勝負しています。
林 剛史(はやし たけし):ANAエアポートサービス出向
1998年入社。新卒で情報システム本部に配属。全日空システム企画への出向、福岡支店販売部、IT推進室、業務プロセス改革室を経て、2017年4月より現職。
褒め合う・高め合う文化。本気でナンバーワンを目指す組織
──ANAの強さが「人の力」というのは納得ですが、その一方でスキルが属人化してしまう危険性はありませんか? 社員全員でマインドを共有する工夫はあるのでしょうか。
鴨田:ANA’s Wayという行動指針があります。これはトップダウンでできたものではなく、現場の社員たちの声を基にボトムアップで作ったものです。
──ANAグループのような組織規模で、現場の社員が行動指針を作るケースは珍しいですね。
田辺:私はこの中でも「チームスピリット」と「努力と挑戦」が好きです。どちらも競合と比べて、ANAに特徴的な風土だと思います。前者の「チームスピリット」については、ただ仲がいいだけでなく、それぞれの仕事にこだわりを持ちながらも、組織全体を俯瞰して行動することを求められます。後者の「努力と挑戦」は、愚直に一番を目指す姿勢からです。リーディングカンパニーとしてナンバーワンを目指すと掲げる会社は他にもあると思うのですが、ANAほどにそれを真顔で語り、一丸となって頑張れる会社は決して多くないと思っています。
林:制度としては、「Good Job Card」を社員同士が送り合う仕組みがあります。イントラネットを通じて、ANA’s Wayに沿ったいい仕事をした同僚に感謝のメッセージを送り、褒め合う文化を醸成するものです。また、各拠点別に行動指針を浸透させるような取り組みも進んでいます。私が所属する羽田空港では、この行動指針をもとに「Haneda’s Pride Book」というものを作り全社員が日々携行していますし、1年に1回プロフェッショナルなおもてなしを実演で競うスキルコンテストも行っています。
危機への強さと結束力。職人気質のDNAが受け継がれている
──では、ANA’s Wayを感じるような、具体的なエピソードは何かありますか? 皆さんが20年のキャリアで、印象的だった仕事のエピソードを教えてください。
岩崎:私は入社2年目、1999年に起きた全日空61便ハイジャック事件です。当時、私は羽田のステーションコントロール部に勤務していましたが、オペレーション全体が大きく乱れる中、何もできなかった自分を本当に悔しく思いましたし、オペレーションの重要性を痛感しました。当時いたベテラン社員の方々には職人気質の人が多く、いつもは気難しくて厳しい方々ばかりでしたが、危機や緊急時に的確に指示して対処している姿に「すごい」と感じました。危機や緊急時に、部署、年次を越えて結集して協力し合う風土は、今もANAグループのDNAとして脈々と受け継がれていると思います。
岩崎 倫敦(いわさき ともあつ):オペレーションマネジメントセンター オペレーションマネジメント部
1998年入社。新卒で東京空港支店ステーションコントロール部に配属。運航の現場で各種管理業務などを行う。その後、成田空港支店旅客部、成田空港支店ステーションコントロール部。成田空港支店ステーションコントロール部では、1年間ロンドン支店空港所での海外実務研修を経験。2015年より現職。
鴨田:私はネットワーク戦略部時代に経験した、羽田空港の国際化と成田空港の増枠です。発着枠の拡大を受けて新規路線開設や増便を積極的に行いましたが、そのための機材・人員・施設といった、リソースの確保や調整が想像以上に大変でした。「飛びたいだけでは飛べない」多くの人たちが関わって初めて飛行機は飛ぶのだ……と実感した経験です。
新路線開設、新規プロジェクトは苦労の連続。その反面、社会的な意義も感じられる
──新規路線に関連して、田辺さんはベトナムのホーチミン支店で、2014年の羽田ーハノイ線の開設に関わっていらっしゃいますね。
田辺:はい。ホーチミン支店では、総務・マーケティング&セールス・貨物と3つの責任者を兼任していました。それまで競合が成田ーハノイ線を運航するなか、ANAが新たに羽田ーハノイ線を開設するタイミングでした。ベトナムにとって日本は近しい国ですし、当時も世間からの反響も大きかったです。羽田ーハノイ線の開設前には、採算が取れていなかった自社貨物部門を外部委託化する経験をしました。そのために英語の法律用語をゼロから勉強したり、貨物倉庫で貨物部門に所属するスタッフたちと向き合ったことは印象深いですね。
田辺 剛(たなべ つよし):人財戦略室 ANA人財大学
1998年入社。新卒で大阪支店 販売部 国内販売課に配属。その後、客室本部 東京客室部、営業推進本部 宣伝部、ホーチミン支店(現ハノイ・ホーチミン支店)、CS&プロダクトサービス室 商品戦略部を経験。2016年より現職。
──林さんはいかがでしょう。
林:2012年、当時6,000名いた客室乗務員全員にiPadを導入したことですね。以前は3冊で2キロあるマニュアルを常に携行しており、客室乗務員たちの負担は相当なものでした。さらにマニュアルが改訂されると、2カ月に1回、100ページほどを手作業で数時間かけて差し替えなければいけませんでした。そこにiPadを導入し、マニュアルの電子化を進めたことは印象深いですね。また当時集合形式中心だった教育をiPadによる自己学習に切り替え、動画教材を活用した覚えやすい環境を構築することで生産性の向上にもつなげることができました。客室乗務員全員にiPadを配布した航空会社はわれわれが世界初だったこともあり、世間の注目度も高かったです。この取り組みが成功したことで、客室乗務員がさらにお客様への接遇に集中できるようになったのではないかと思います。
私たちの仕事はキラキラなんかしていない。評価されるのは、お客様・仲間のための泥臭さ
──航空業界はパイロットやCAのイメージから「キラキラした業界」という先入観も強いです。皆さんのお話を聞くと、印象が変わりますね。
岩崎:航空産業は労働集約型産業ですから、むしろ泥臭さが求められています。さまざまな人がさまざまな思いを持ちながら働いていますし、お客様やともに働く仲間に対して誠実であることが重要です。そういう点では、スタイリッシュでもないですし、キラキラもしていません。
鴨田:人事を担当する人間としてのコメントとしてはふさわしくないかもしれませんが、「華やかさ」「カッコよさ」に憧れて入社するとがっかりするかもしれませんね(笑)。ですが、泥臭い仕事だからこそ団結もしますし、自社に愛着を持つ人が多い会社だとも感じます。グループ外で仕事をしたときにも感じましたが、20年働いていて、自分たちの会社やブランド、サービスにここまで思い入れを感じられることは実は貴重なことなのではないかと思います。
田辺:先輩たちは、すごくよく後輩を見ています。いつも正面から助けるのではなく、頑張るだけ頑張らせて、本当に困ったときにはきちんと助けるのです。その上で、自分自身を高める努力も怠っていません。さらに言えば、後輩へのプレゼンテーションにアドバイスするときなど、しっかり内容を見た上で「笑いも取れ」と言ってきたりするのが格好いいし面白いですね。
航空業界は第一志望ではなかった? 自分が思い入れを持てるサービス・商品を扱う会社に就職したい
──皆さん新卒で入社されていますが、学生時代は、そもそも航空業界が第一志望でしたか?
鴨田:いいえ。最初は軸もないまま就職活動を始めた記憶があります。経済学部だったので、周囲では金融や商社が人気でしたね。その中で航空業界を選んだのは、いろいろな企業を見ているうちに「自社の商品に思い入れを持てること」が自分にとって大切だと感じたからです。そう考えたときに、選んだのが航空業界でした。
──これまで「ANAを辞めたい」と思ったことはありませんか?
岩崎:私はありますね。「自分は航空業界でしか通用しないのではないか」という漠然とした不安を抱えていました。それが解消したのは40代に入った頃です。毎日、安全に飛行機を運航し続けられることこそが、私たちの最大の価値だと感じたからです。だから今の仕事には意味があるし、そこに専門性を持っている自分も、ビジネスパーソンとして社会に貢献できていると思えました。
現場の課題に、部門を横断して解決。本気で議論して、汗をかく
──今後、ANAで皆さんが取り組みたいことや目標はありますか?
岩崎:新しいことに取り組んでいくことも重要ですが、いま起きている問題をちゃんと解決していくことの方が重要だと考えながら仕事をしています。オペレーションにおいて、お客様のクレームで一番多いのは「飛行機が遅れると分かっているなら、もっと早く知りたかった」というものです。こういう日々の問題をきちんと解決できる会社であれば、ANAはさらに伸びると思います。
林:本気で議論して、汗をかくのが私たちのアイデンティティです。同じフィールドに立ってしまえば、先輩も後輩も関係ありません。しかし一方で、営業・空港・機内といった各部門の問題を自部門で解決しなければと頑張ってしまうことがあります。日々発生する問題について、部門を横断して原因がどこにあるか、それをいかに本質的に解決していくかが、今後の課題かもしれません。マネジメント層も含め、もっと全体最適で働きやすい職場にしたいですね。
「飛行機を飛ばす仕事は、楽しい」20年を経ても、いい会社だと毎日感じられる
──最後に学生に向けてメッセージをいただけますでしょうか。
鴨田:せっかくの機会なので、就活では幅広い企業に触れてもらいたいと思っています。もしその中でANAに魅力を感じてもらえるのであれば、ぜひ一緒に働きたいと思います。
岩崎:飛行機を飛ばす仕事は地道なことの積み重ねですがとても楽しいです。その楽しさをより多くの人に経験してほしいですし、そういう楽しさを感じたい人に来てもらいたいですね。
林:全てはお客様のために、そして一緒に働く仲間のために、本気の汗をかける、そんなPassionを持った人に来ていただきたいです。
田辺:飛行機というキーワードでつながりながら、個性豊かな仲間と働ける場所です。いい仕事だなと、20年経った今になって思いますね。「いい会社だな」と毎日感じられる職場なので、そんな思いを感じたい学生さんに来てほしいですね。
──皆さん、ありがとうございました。
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【ライター:yalesna 写真:友寄英樹 インタビュー・編集:めいこ】