名だたる外資系・日系の超人気企業。その内定者が、どのような一年を過ごし、どんな企業を受けていたのかを探る『トップ就活生レポート』。
今回は就活生から圧倒的な人気を誇る総合商社(総合職・一般職)・専門商社に内定した2019年卒のトップ就活生レポートをもとに、商社で「無双」した就活生の勝ちパターンをご紹介します。
【目次】
・商社強者の就活の進め方、軸は?
└【最も重視していた要素】「得ることのできるスキル」
└【やっておいてよかったこと】「早期からのSPI対策・業界研究」「自分史の作成」
└【やっておけばよかったこと】「OB/OG訪問+α」
・ズバリ! 内定獲得の秘訣とは?
・商社内定者はいつ、何を対策していた?
商社内定者の就活の進め方・軸は?
【最も重視していた要素】「得ることのできるスキル・経験」
商社に内定している就活生は、商社ならではの2つの軸のどちらかで就活をしている人が目立ちました。
・「海外での仕事」や「高年収」であること
・「やりたいことがまだ定まっていない」
・「海外での仕事」や「高収入」であること
「海外での仕事」という面では、商社はメインの業務として、海外の事業会社や資源権益への「事業投資」を行っており、海外での事業経営に携わることが可能であること。また三菱商事で行われている「グローバル研修生制度(年間約120名の若手社員を海外へ派遣)」のように、各社で海外での研修制度を積極的に行っていることが魅力となっています。
「得ることのできるスキル・経験」
世界を舞台に働きたいという思いが強くあったため、海外での経験が積める会社かどうかを基準にしました。
【佐賀大学Aさん:九州電力、ユアサ商事内定】
「得ることのできるスキル・経験」
「海外に赴いての仕事」と「出向先での事業経営」を軸に企業を見ていたためです。
【早稲田大学Bさん:丸紅、伊藤忠商事内定】
「高年収」という点では、平均年収が三菱商事の1540万円、伊藤忠商事の1460万円のように平均年収ランキングのTOP30に5大商社全てがランキングするなど、依然として商社の給与水準は高く、そこに魅力を感じる学生もいるようです(参考:東洋経済ONLINE「最新!平均年収「全国トップ500社」ランキング」)。
「年収」
経済的に自立した人間でありたかったからです。
【千葉大学Aさん:伊藤忠商事内定】
・「やりたいことが定まっていない」
商社、特に総合商社は「ラーメンからミサイルまで」と言われるように取り扱う商品、事業が多岐にわたっているため配属次第で全く違った商品・事業に携わることが可能です。また将来何かでビジネスを起こすために、商社のスケール・規模感で視野を広げておきたいと考えている内定者も見られました。
だからこそ、併願先としてリクルートなどを志望する人も見られました。
「得ることのできるスキル・経験」
やりたいことが明確になった際に、いつでも動ける状態にしておくためです。
【岩手大学Aさん:豊田通商、キーエンス、リクルート内定】
「得ることのできるスキル・経験」
将来的には自分で何かビジネスをしたいからです。また、多くのことを学べば、視野が広がると考えたからです。
【早稲田大学Fさん:伊藤忠商事、三井物産、住友商事内定】
また、商社の一般職の内定者は「自分の思い描く人生を歩む」、「転勤の有無」を軸に就活を進めていました。
商社の一般職は、しっかりと休日があり、転勤もなく長く働ける上にメーカーの総合職より給与が高いこともある「いいところ取り」であると感じ、もともと総合職志望だった人が商社の一般職を目指すこともあるといいます。
商社の一般職を目指す方にはこちらの記事もオススメです。
・商社の一般職はいいとこ取り?〜広告志望のワセジョが一般職志望に変えた理由〜
「自分の思い描く人生を歩む」
総合商社の一般職の方と実際に会って話を聞いた際に、
・仕事に対するモチベーションが高い人が多い
・会社としても「いるだけでいい」とは思っていない=求めるレベルがある程度高い
・結婚をしたら辞めようと思っている人はあまりいない
・会社としても長く仕事を続けてもらいたいと思っている
と説明を受けたことをきっかけに「仕事も家庭も大事にしたい」「結婚・出産後も仕事を続けたい」Dさんは総合商社の一般職を受ける決意をしました。
【明治大学Dさん:丸紅(一般職)、双日(一般職)、ANA(CA職)内定】
「転勤の有無」
転勤がない方が長く働けると考えたからです。
【上智大学Dさん:住友商事(一般職)内定】
【やっておいてよかったこと】「早期からのSPI対策・業界研究」「外資インターン参加」
商社に内定している就活生は、本選考エントリー開始までに「早期からのSPI対策」「外資インターン参加」「他業界の情報収集」などの対策を行っていました。
・早期からのSPI対策
5大商社には多くの学生からの応募が殺到しますが、面接に呼ぶことのできる学生は限られています。
そのため、絞り込みのために行われる筆記試験は全般的に高倍率になります。
東大、京大、早慶レベルの学生でも、基準点に達しなければ容赦なく振り落とされてしまうため、早期からの対策が必須になります。
・外資インターン参加
商社志望者が外資企業のインターンや本選考に参加するメリットは「自分の優秀さをひと目で分からせるファクト」を作ることが可能になるということです。
総合商社は1社で5,000人を超える多数のエントリーがあり、本選考の面接は20〜30分程度の面接で志願者を激しくふるいに掛ける選考ステップも多くあります。そこで効力を発揮するのが、他社の内定です。
特にトップ企業の総合商社で効力を発揮するのは、競合の5大商社や外資系投資銀行、外資系戦略コンサルなど、同様にトップクラスの人気と入社難易度を誇る企業です。
実際に三菱商事や三井物産などには「外銀・戦略コンサル内定枠」が存在するといわれています(※1)。
・他業界の業界研究
商社の内定を勝ち取るには、商社間の比較に加えて「なぜ他業界でなく総合商社なのか」といった差別化を自分の中でしておく必要があります。
自分が併願している業界に関しては、明確に総合商社との差別化ができるよう努めましょう。
「SPIの勉強(3年夏〜)」
エントリーが殺到する3月期に余計な時間を取られずに済みました。周囲が筆記試験対策で焦っている時期にESの執筆に時間を割く事ができたので、エントリー数が多い人ほど筆記試験の対策は早めに取り組むべきです。
「外資インターン参加(3年夏)」
はく付け効果(特に日系インターン選考において)がありました。まずESでは落ちなくなりました。また、 ある総合商社のインターンの最終面接において、面接官が外資系金融のインターン参加を確認してからは勝手に「すごい学生」だと判断してくれました。心なしか自分に自信が持てるようになった気がします。
「他業界(志望業界の併願先)の情報収集(3年夏〜)」
面接にて、他業界との比較で志望業界の魅力を語ることができました。実体験で語ることができたので、説得力も違ったように感じます。総合商社を志望していたので、(1)金融(2)コンサル(3)メーカーを中心に最低でも説明会で話を聞くようにはしていました。
【早稲田大学Bさん:丸紅、伊藤忠商事内定】
「就活スタート時にほぼすべての業界の研究を行った」
(1)就職活動スタートと同時(修士1年の2月)に業界地図を読み込み、各業界のトップ企業、業界の近年の動向などを理解しました。
(2)2月、3月に開催される合同説明会、合同セミナーに参加し、業界内の違う企業や各業界のトップ企業など、とにかく数を稼ぐイメージでたくさんの企業の話を聞きに行きました。
(3)興味を持った業界については専門本(『伊藤忠躍進の秘密』洋泉社MOOK など)を読み込み、業界内の客観的な比較情報を仕入れました。
さまざまな業界を研究したことで就活や社会全体の構造が理解でき、面接での受け答えに役立ちました。面接での「業界全体の問題点や今後の展望は?」という重要な問いに対して、実感を持ってクリティカルに答えることができました。
【東京大学Bさん:三井物産、伊藤忠商事、丸紅内定】
また、商社の一般職はSPIのボーダーが「総合職よりも高い」こともあるようです(※2)。
一般職だからと筆記試験で手を抜いてしまうと、面接すら受けられないという事態に陥りかねません。
しっかりと対策を行いましょう。
「WEBテスト/筆記対策」
SPIの参考書を2周解いた上に、練習としてテストセンターを7、8回受験。また、エントリーするだけでWEBテストを受けられる企業を選び、WEBテストを10回近く受けた。
何回も実践練習を重ねたことで同じ問題が出てきて解きやすくなり、本命の企業で最高のパフォーマンスができた。
【明治大学Dさん:丸紅(一般職)、双日(一般職)、ANA(CA職)内定】
(※1)参考:「商社志望者こそ外資系企業を受けよう」〜商社内定者の就活1年間〜
(※2)参考:<内定の必殺技は1人カラオケ!〜女子大生が激戦を勝ち抜き、総合商社一般職に内定を獲得した理由とは〜
【やっておけばよかったこと】「OB/OG訪問+α」
「商社の内定獲得にはOB訪問が不可欠だ」といったフレーズが就活生の間でよく聞かれます。
では、なぜ商社を受ける上でOB/OG訪問が必要となるのでしょうか。
まず1点目は「志望動機を具体的に説明できるようになる」ことです。
商社では、「なぜ他の総合商社ではなく弊社を志望しているのか」を問われることが多々あります。
これは、内定を出した学生が競合の内定を得て自社を辞退することを避けるべく、志望度の高さを見極めるためだと考えられます。
これに対して志望度をアピールする軸は、事業・理念・文化・人・待遇など多々ありますが、商社では、理念や人に絡めた志望理由が無難といえます。事業や待遇は、学生が知り得る限りは各社横並びで比較が難しいためです。
一方で、人を軸にして話す場合は、OB/OG訪問をその主張の根拠にすることができるので、考えやすいというメリットがあるのです。
また、商社の面接ではその商社のイメージについて聞かれることが多くあります。下記に引用している早稲田大学のBさんが「住友商事の社員の雰囲気をうまく伝えることができず、志望度が低いと判断されてしまった」と感じていることからも、「具体的にその商社のイメージを説明できること」が内定獲得に必要になると考えられます。
さらに下記のように、最終面接で直接OB/OG訪問について質問されることもあるようです。
三井物産:志望動機の深掘りよりも、OB訪問の人数や印象に残った社員の話を聞かれた(参考:三井物産|2019年卒総合職(担当職)の最終面接)
伊藤忠商事:OB訪問の有無や人数、配属カンパニー、その社員との関係性などを詳しく聞かれた(参考:伊藤忠商事|2019年卒総合職の最終面接)
2点目は「選考優遇がある」ことです。
実際に、いくつかの総合商社では、OB/OG訪問をすることで評価がつけられ、一次面接免除などの選考優遇を得られる可能性があるようです。
上記の2点があるからこそ、「商社の内定獲得にはOB訪問が不可欠だ」と言われるのです。
さらに、ただOB/OG訪問をするのではなく、好印象を得られるように筋の良い質問をすることや、社会人1年目レベルの事前準備を徹底することも心がけましょう。
「OB/OG訪問」
先輩や知り合いにOB/OG訪問の対象がいないと諦めていましたが、もう少し工夫をして自らOB/OG訪問のチャンスを作り出せば良かったです。商社業界を受ける上で、周りの学生がOB/OG訪問をして具体的に自分が働くイメージを持って面接に挑んでいる姿を見て、自分との差を感じ、とても不安になってしまいました。不安を取り除くためにも、OB/OG訪問は少なくとも各企業1人ずつはした方がいいと思いました。
【千葉大学Aさん:伊藤忠商事内定】
「OB/OG訪問で感じた社員の雰囲気を自分の中で言語化すること(3年3月〜)」
社員の雰囲気が自分の中で固まらないまま選考に臨むことになってしまい、内定を取れませんでした。
住友商事の最終面接で社員の雰囲気をうまく伝えることができず、志望度が低いと判断されてしまったように感じます。社員には一定数会っていたので、その際に感じた社員の雰囲気をまとめておけば良かったと感じます。
【早稲田大学Bさん:丸紅、伊藤忠商事内定】
ズバリ! 内定獲得の秘訣とは?
商社の内定獲得には、総合職も一般職も「自分の姿を自然体でアピール」することが有効だと考えられます。
「愚直に話したこと」
聞かれてくる質問に対して何一つうそをつかずに愚直に答えて、「自分がどういう人間なのか」を分かりやすいように伝えました。その際は端的に答えるようにしました。そのことが結果につながり、面接官に対してもそのような人間であると分かっていただけたように感じました。また、一貫性を持たせることで、ゼミ活動や語学勉強の話からも「自分がどういう人間なのか」を伝えるようにしました。
【早稲田大学Fさん:伊藤忠商事、三井物産、住友商事内定】
「面接では飾らずに話すようにしたこと」
面接でどのような質問をされても返せるように、全て正直に話しました。1時間の面接が4回行われた企業もあったので、そのような面接でうそをついたらばれると考え、全て正直に話すようにしました。その結果、内定先の最終面接では「あなたは自分を飾らないで正直に話してくれるから、面接をしていてとても楽しかった」と面接官に言っていただけました。
【上智大学Dさん:住友商事(一般職)内定】
実際、自身が内定を獲得することができた理由として、三菱商事社員はインタビューで「『うそをつかない』『会話のキャッチボール』の2つを意識できたからだと思います。うそをつかないことは、就活中に一貫して心掛けていたことです。他社の選考状況を聞かれたときは、正直に伝えるようにしました。」と語っています(※1)。
また伊藤忠商事社員も「『素直さ』が全ての基礎だと思います。どれだけ優秀な人でも、一人でできることは限られています。大きな仕事をしたいのなら、どんどん人を巻き込みつつ、特に若いうちはいろいろな人のアドバイスを素直に受け入れる姿勢がないと、成長も成功もありません。就活においても、率直さや素直さが鍵になると思います。」と話していることからも、商社の選考で「愚直さ」「うそをつかないこと」が大切になると言えます(※2)。
(※3)参考:【商社特集:三菱商事】前例なき挑戦を成功に導く、三菱商事の強さを7年目社員が語る
(※4)参考:【商社特集:伊藤忠商事】マーケットを動かすのは、伊藤忠パーソンたちの「泥臭さ」と「スマートさ」
「面接では、自分の言葉で受け答えをする」
こういった質問にはこう答えればいい、といったテンプレは存在しますが、相手は面接のプロなので、そんなものはすぐに見透かされます。そのため、最低限のマナー・言葉遣いには配慮しつつも、あまり準備し過ぎず、話を盛らず、とにかく自分という人間を知ってもらった上で評価してもらおうと面接に臨みました。
【佐賀大学Aさん:九州電力、ユアサ商事内定】
「面接において、相手に信用される話し方をすること」
作り笑いや、変に気取った言い回しはしないようにしました。丁寧な言葉づかいにはしながらも、「ESに書くのは少しはばかられたので」「正直な思いを申しますと」など、面接官に心を開いている様を匂わせました。また、向こうが自分の深掘りしてほしいところを聞いてくれるように誘導すべく、少し話し足りないくらいにすることも気をつけました。
【慶應義塾大学Hさん:三井物産、日産自動車、日立製作所内定】
その他には千葉大学Aさん:伊藤忠商事内定、明治大学Dさん:丸紅(一般職)、双日(一般職)、ANA(CA職)内定も同様でした。
商社内定者はいつ、何を対策してた?
商社内定に欠かせないのが「WEBテスト/筆記試験対策」と「OB/OG訪問」です。
トップ就活生レポートで見事商社の内定を勝ち取った人の中には、3年の8月からWEBテスト/筆記試験対策を始めている人や、3年生の10月以前からOB/OG訪問を始めている人もみられました。
自分の受けようと考えている企業がこれまでどのような形式で筆記試験を実施しているかを把握し、対策本などを使って早めに対策を始めましょう。商社では、SPIのテストセンターが選考で課されることが多いようです。
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まとめ
いかがだったでしょうか。
ここで紹介した勝ちパターンや先輩の反省点を生かして、ぜひあなたも商社で無双しましょう!
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(Photo:Avigator Fortuner/Shutterstock.com)