はじめまして、ある外資マーケ人の告白(@markesaiyo)です。
外資系企業でマーケティングのお仕事と、たまにマーケティング職採用のお仕事をしています。
<今回の見どころはコチラ>
●学園祭の模擬店で分かる「マーケターの仕事」
・1. マーケットを分析する
・2. 強いコンセプトを作る
・3. 社内を動かしコンセプトを実現する
・4. 買いたい人が買える状態を整える
・5. 広告などで価値を伝える
●なぜマーケ職のESで「リーダーシップ」を聞くのか? マーケティングの本質は「キャプテン」だから
さて突然ですが、「マーケティングをやっている人」と聞いて、どんな仕事をしている人を思い浮かべましたか?
市場分析をする「アナリスト職」を思い浮かべた人もいるかもしれません。広告を作る「プランナー職」を想像した人もいるでしょう。
しかしながらそれらは、マーケティングの一部でしかありません。
比較的マーケティングが体系化されているローテクノロジーかつBtoCの企業のマーケティング部門において、マーケティングはもっともっと広い範囲を指します。
専門書には、こう書いてあります。
「マーケティングは売れる必然を作ること」
「マーケティングは売れる仕組みを作ること」
……なかなかバクッとしていますね。
このあたりの解像度を上げて説明したいと思います。
モノが売れるまでの過程に沿って説明すると、マーケティングの具体的な業務は以下の5つです。
1. マーケットを分析し
2. 強いコンセプトを作り
3. 社内を動かしコンセプトを実現させたら
4. 買いたい人が買える状態を整え
5. 広告などで価値を消費者に伝える
今回は学園祭の模擬店を例に、マーケティングの5つのお仕事を説明したいと思います。
学園祭の模擬店で分かる「マーケターの仕事」
とある名門大学、京東大学のフットサルサークルに所属する一年生のあなたが、学園祭の模擬店でマーケティング係に任命されたことにして話を進めていきます。
模擬店のマーケティング係のあなたは、売上に責任を持っています。
ここでマーケティング係が意識しないといけないのは、「売れるようにすること」です。そのために何でもやらないといけないし、いろいろな人を巻き込まないといけません。
あなたがマーケティング係として行うことを上述の「5つの仕事」に沿って説明していきます。
1. マーケットを分析する
まずは、過去の学園祭の参加者や人気店の傾向について先輩などから情報収集し、どの層、どのジャンルにチャンスがあるかを見定めます。
・他大学から学園祭に来ている人は女性だけのグループが多い
・彼女たちは消費額が大きく、定番商品よりも変わり種を好む
・彼女たちのうち、10%くらいが自分たちの模擬店で買ってくれたら目標を達成する
このくらいまでターゲット像と方向性、目標達成への筋道を絞り込めると、次以降のステップでやることが明確になります。
2. 強いコンセプトを作る
いわゆる「売り」を作るフェーズです。
ここで、ターゲットに刺さり、競合を出し抜く「売り」が作れるかが、マーケティングの肝です。
ターゲットにインタビューを行ったり、試作品を見せてどのくらいの確率で買いたいと思うかを測ったりしながら、アイデアをツイストしていきます。
マーケティング係のあなたは、ターゲットとする他大学の女性グループは
・実は京東大生との出会いを求めている
・京東大の学園祭にはブッとんだ体験を求めている
ということをあぶり出し、次のようなコンセプトを考え出しました。
世界のドキドキメニューが食べられる出会いカフェ
・相席居酒屋のような形式
・ワニの肉や、世界一臭い缶詰など、ドキドキするような食材を使ったメニュー
また、このコンセプトであればターゲットの10%以上が「行ってみたい」という反応を示していることも分かりました。
3. 社内を動かしコンセプトを実現する
正直、勝負の7割は「2. 強いコンセプトを作る」までで決まります。しかし、マーケティング係が時間や労力を注ぐのは、これ以降の作業です。
あなたが考えたコンセプトをサークルのメンバーに共有すると、調理係はまずこう言います。
「無理だ。難しすぎる」と。
調達係はこう言います。
「どこで食材を買えるかちゃんと考えた?」
接客係も乗っかってきます。
「回転率も悪くなるし、人手も掛かりすぎる」
気がめいってしまいそうでしょうか?
でも、このようにキックオフで集中砲火を浴びるのもマーケティング係の役割です(笑)。
こういった状況でメンバーを不貞腐れずにモチベートして、実現する方法を考えるよう仕向けるのも、マーケティングの仕事の一つです。
売上の責任を負っているのはあなたですから、自分が作ったコンセプトを信じているのであれば、それがブレないよう「妥協しない意思」が必要です。
4. 買いたい人が買える状態を整える
せっかく強いコンセプトが実現できても、ターゲットの目に触れる状態でないと購買してもらえません。
学園祭では、出店場所が非常に重要です。学園祭実行委員会との調整係に戦略を共有し、より多くのターゲットが通過するような位置に出店できるよう頑張ってもらう必要があります。
5. 広告などで価値を伝える
買いたい人が買える場所を作っても、多くの人が商品の価値を知らないままでは、ビジネスは計画通りにいきません。
そこで必要になってくるのが広告です。
マーケティング係のあなたは、絵がうまい必要も、洒落(しゃれ)たキャッチコピーをひねり出す必要もありません。得意な人に任せましょう。
例えばチラシで広告することを決めたら、目標を達成するためにどのくらいチラシをまくのかを決め、広告の絵や文章がターゲットに刺さる内容になるようリードするのがあなたの役割です。
こうしてしっかり練り上げたプランが実行され、売れればあなたの成果に、売れなければあなたの責任になります。それがマーケティングの世界です。
なぜマーケ職のESで「リーダーシップ」を聞くのか? マーケティングの本質は「キャプテン」だから
マーケティングのお仕事を聞いてみて、どう感じましたか。想像以上に関わる人が多くないでしょうか?
マーケターは「アナリスト」であり、「プランナー」でもあります。このようにいろいろなことをしないといけないのがマーケティングのお仕事ですが、私は、その本質は売上向上チームの「キャプテン」だと思っています。
売れる必然や、売れる仕組みを作るために、コートの中心に立って作戦を考え、メンバーを動かすのがマーケティングの仕事なのです。
外資系各社のマーケティング職のエントリーシートで、そろいもそろって「周囲を巻き込んでリーダーシップを発揮した経験」を聞かれるのは、マーケティングの仕事では「キャプテン」として多くの人を動かすことが必要だからです。
意外に感じた方も多いかもしれませんが、これを読んで少しでもマーケティングの仕事に興味を持ってくれる人がいたら、ぜひインターンシップや選考にチャレンジしてみてくださいね。
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▼シリーズ:ある外資マーケ人の告白
【第一回】もしもマーケターが学園祭の模擬店を出したら:現役外資マーケターが語る、マーケティングの5つのお仕事
【第二回】「広告」を作っているのは誰?現役外資マーケターが語る、一つの広告が世に出るまで
【第三回】そのエピソードで大丈夫?外資マーケターが教える自己PRの書き方
(Photo:TierneyMJ/Shutterstock.com)
※こちらは2018年11月に公開された記事の再掲です。