ワンキャリア執行役員の北野唯我が執筆した『転職の思考法』が発売2カ月で10万部のベストセラーになりました。今回はその出版元でビジネスマン向けに連載した記事を、学生の皆さん向けにリバイスしてお届けします。
転職エージェントは「先に接点を持った会社」から儲かるモデル
転職活動を始めたら、多くの人がやることの1つは「転職エージェント」に登録することです。エージェントからのメールを受け取り、オフィスを訪れると、まず、キャリアアドバイザーと呼ばれる「相談役」の人が現れます。あなたは、次の仕事に求める希望を伝えます。すると早速、案件を紹介されます。具体的には最近であれば、求人倍率が高い、医療系やIT、サービスなどを勧められることが多いでしょう。(詳しくは下図を参考ください)
※業界別の求人倍率と平均年収の推移(著者作成)
ですが、断言します。もしもあなたが「自分で今後のキャリアを設計していきたい」と思うのであれば、転職エージェントの提案の中だけで選ばないようにしてください。
なぜでしょうか?
そもそも採用には5つのチャネルが存在し、価格が異なる
転職する立場からすれば、企業がどんな手段で人を採ろうが、大差がないように見えます。私もかつてはそう思っていました。ですが、実際に自分が「採用する側」に回ってみると、採用活動は「どの方法で人を取るか」によって大きくコストが異なることに気づきました。具体的には、採用には5つの方法が存在しています。
1. ヘッドハンティングを受ける
2. 転職エージェントに登録し紹介を受ける
3. ダイレクトリクルーティング型のサービスを使う
4. SNSなどマッチングサービスを使う
5. 直接応募、または友人から紹介してもらう
そして、それぞれは「コスト」が違います。具体的には、上から順番に「金がかかる順番」になっています。たとえば、一番上の「ヘッドハンティング」はもっとも金がかかる手法です。たとえば年収1000万円であれば、数百万から1000万円かかるようなイメージでしょうか。年収に「◯◯%」をかける形で金額が決まります。一方で、一番下の「直接応募・友人からの紹介」の場合、お金がまったくかかりません。紹介元となる社員への謝礼金を除けば、ほとんどの場合0円です。
となると、あなたがもし賢い採用担当だったとしたら、当然チャネルを「使い分ける」はずです。
具体的には、わざわざ「お金をかけなくても採れるような人」はヘッドハンティングや転職エージェントではなく、もっと単価の安い方法を使うはず。一方で「ヘッドハンティングや転職エージェント」は、金をかけてでも採りたい人に絞るでしょう。このように「付加価値の低いところは金をかけずに、付加価値の高いところは金をかける」はずです。
これを、仕事を探す人の立場、つまり、あなたから見るとどうなるでしょうか?
もしあなたが「極めて優秀な人物」や「高い実績を出した人物」であれば、エージェントは本気になって、素晴らしい案件を紹介してくれるはずです。しかし、もしあなたが「ほどほどの人物」で「普通の成果」を出してきたにすぎないのであれば、企業からすると「わざわざあなたに高い金を払って雇う理由」がないわけです。それでも高いフィーがかかるエージェントを使わざるをえない何らかの理由がある。そう考えるほうが自然です。転職エージェントがやたら強く推してくる会社は、むしろ注意したほうがいいのです。
伸びる企業ほど「リファラル採用」がうまくいっている。あなたは例外か?
もう一つ、転職エージェントがやたら推してくる会社を注意した方がいい理由は、リファラル採用や、直接応募では人が採れていない可能性があるからです。リファラル採用とは、社員の紹介による採用です。Aさんが、Bさんを紹介してくれた、というようなケースです。
というのも、そもそもですが、本当に優れた会社には、勝手に人が集まってくることがほとんどです。たとえば、少し前のメルカリのようにあえて「社員紹介メイン」で、人員を拡大していくケースがわかりやすいでしょう。リファラル採用は、費用が安いのに加えて、その会社のカルチャーにフィットすることも担保されています。かつ、「優秀な人が紹介する人は優秀」という理屈も働きます。
これは自分の身に当てはめてみても、しっくりくる話です。もしあなたが「今の会社にめちゃくちゃ満足している」として、友人や後輩・先輩で転職を考えている人がいたとしたら、紹介したいと思いませんか? 就活生に「自分の会社をオススメする」リクルーターのようなイメージでしょうか。優れた企業はこのように、社員が自然に評判を作り、新しい社員を呼んでくるサイクルができているケースがほとんどです。
反対に言えば、転職エージェントを使いまくるのは「リファラル採用がうまくいっていない」可能性があり、リファラル採用がうまくいっていない=「働いている人の満足度が低い」かもしれない、ということです。これが転職エージェントがやたら推してくる会社を注意した方がいい理由のもう一つの側面です。
自分がやりたい業界・業種が決まっている場合「自分で調べること」を忘れるな
ではどうすればいいのか?
結論をいうと、SNS型のサービスや、口コミサービスで「自分で調べること」を忘れないことです。具体的には、Wantedlyや、Vorkersなどのサイトがオススメです。これらのサービスを使って(1)自分のやりたい業種や職種を検索、(2)その企業のブログやSNSを見て詳しくみる、(3)その中で興味がわいた企業に「実際に会ってみる」の3段階で進めていくことをオススメします。
「そんなことして、大丈夫なのかな?」とあなたは思うかもしれません。しかし、ほとんどの「伸びている会社」では常に、「いい人がいれば採りたい」というニーズを持っています。したがって、HPやSNSサービスなどを使って、ドアをノックしてきた場合、話を聞いてくれることがほとんどです。
加えて、上記のサービスは「転職先のダブルチェック」にも使えます。あなたが、面接の場で興味をもった企業があった場合、その企業を上記の2つのサービスで検証するわけです。さらに突っ込んだ企業の見分け方は書籍『転職の思考法』に譲りますが、少なくとも、こうすれば「本当に働きやすいか?」などの検証ができます。
人材マーケットを俯瞰している身でないと、なかなか「自分で調べて、応募する」という選択肢はでてこないかもしれません。ですが、なんでも「ググれる」時代。自分で調べるという選択肢をぜひ、持ってみてはいかがでしょうか。
※この記事はダイヤモンド・オンラインに同タイトルで掲載した記事の転載です。
(Photo:soft_light/Shutterstock.com)
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