※こちらは2018年5月に公開された記事の再掲です。新型コロナウイルスの感染拡大などにより、働き方に関して変化している部分もあります。
こんにちは、トイアンナです。「外資系コンサルティングファームへ行きたい」と語る学生は例年多いものです。
が、その数がここ数年で異常なほど増加しています。
まるで「とりあえずコンサルになりたいと言っておけばよかろう」とでも言わんばかりの、猫もしゃく子もコンサル志望。しかしコンサルタントは適性ある人材が限られる専門職です。
向いていないのに入社すると、ミスマッチによって壮絶な苦労が予想されます。
そこで今回は、近年のコンサルブームの原因を解明しつつ、あなたがコンサル向きの人材かチェックできる診断をお届けしたいと思います。
原因は○○の増加:人材の質低下に悩むコンサルティングファーム
きっかけは、現役コンサルタントからのこんな声でした。
「最近、入社してくる学生の質が低すぎる。ロジカルに話せない子が多い。論理的に話す方法論なら訓練で育てられるけれど『この文と次の文、論理が飛躍しているよね?』と指摘しても、何がどう飛躍しているかすら理解できない子が増えた。これでは仕事にならない。」
(27歳、外資系コンサルティング)
一体なぜ、このような「人材の質低下」が発生しているのでしょうか。
その原因は「学生」ではなく、「採用側」にありました。
かつて「10人内定するかどうか」と言われていたボストン・コンサルティング・グループ(BCG)をはじめ、有名戦略ファームが数年前から採用人数を拡大しています。
また、大規模なIT部門を抱える某社は、毎年500人近く採用しているとの情報もあります。
各所から情報を集めたところ、コンサルティングファーム数社を合計するだけで内定数は1,000人を超え、採用規模はメガバンクへ追いつく勢いです。
採用数が増えるならば当然、以前ほど人材の質は担保できません。数年前なら1次面接で落としていたような学生も、内定できる可能性が出てきました。
「受かりやすくてラッキー」は落とし穴。ミスマッチに耐える覚悟はありますか?
難関コンサル就活生から見ればありがたい情報に思えますが、実際にはそうでもありません。入社後はこれまでと同じ基準で能力を発揮することが求められます。
もともとコンサル向きでない学生が入社すれば、1年以内にミスマッチを起こし離職するリスクも跳ね上がるのです。
しかし、現在は「内定できそうだから」と安易にコンサルティングファームを志望する学生が後を絶ちません。
なおかつ、採用枠を大きく広げたファーム側も、何年かバリューを出せそうならマッチングにかかわらず学生を採用する可能性が高いのです。
また、かつてに比べてリストラが少なくなったとはいえ、あまりにパフォーマンスが低ければ「コンサルには向いていないんじゃない?」とやんわり転職を示唆されることもありえます。
その時、出世する同期をよそに「一生ヒラ社員でもいい」としがみつく根性があればたくましいのですが、多くは失意のうちに職場を去ることになります。それでもあなたは耐えられるのでしょうか。
コンサル向きの学生チェックリスト10項目
このように、コンサルは能力面の優秀さもさることながら「適した性格の人」が限られる業界です。
狭き門というよりは「変なカタチの門」と言うに近しいでしょう。
以下のリストが、具体的な「コンサル向きな典型的人材」のチェックリストです。コンサル志望の学生はぜひお試しください。
【コンサル向きの学生チェックリスト】
1. どんな分野でも知らないことには興味を持つ
2. 追い込まれれば追い込まれるほどやる気が出る
3. 感じたことを話せ、と言われても論理的に整理して話してしまう
4. 感情的な話をされると「つまり何?」とイライラする
5. 学内の友人・恋人作りは戦略的に行ってきた
6. 人から「サイボーグっぽい」と誤解される
7. 成果のためできない人を切り捨てる決断を下したことがある
8. 失敗しても成長するので「あれは挫折だった」と思わない
9. 物事を終わらせるために徹夜を何度もしたことがある
10. 学内に自分を崇拝する人がいる
さあ、あなたはいくつ当てはまったでしょうか。
はっきり申し上げて、この条件にすべて合致する就活生が年間1,000人もいたら日本社会は終わりです。
コンサルタント自身もそのことはよく分かっており、「俺らはマイノリティでよかった」と飲み会では自虐的にはしゃぎます。
確かにこれらの条件を満たす方々は優秀でしょう。ロジカルでリーダーシップもあり、理不尽な状況も切り抜ける胆力を持ちながら冷酷な決断も下せる。
経営者、あるいは経営層へ助言する参謀として最高です。
しかし、ビジネスの多くは気合、努力、コネなどの人を巻き込む「お気持ち」で回っています。
そして、サークルの大会優勝、バイトの売上アップ、指導した生徒の偏差値向上……学生が人生でこれまでに積む経験もまた、大半は「お気持ち」で何とかしてきた経験ではないでしょうか。
しかし、そこでお気持ちを無視してでも合理化のメスを入れるのがコンサルタントの業務。学内でも、とがったキャラクターとして目立っているくらいの人材が適しているのです。
「コンサル内定=能力の証明」じゃない。相性がいい会社は、きっと他にある
私がこの記事を書こうと思ったのは、ある外資系コンサルティングファーム志望の学生へ「ケース面接」の指導を行っていたときでした。
「ケース面接」とは実際のコンサル案件で出されるような課題を出し、5分程度でどこまで論理的に解決策を提案できるかを見るテストです。
「A案とB案、どちらがよいか」という課題に対し、私が「A案・B案のメリットとデメリットを並べてみましょう」と伝えたところ、その学生は「メリットって、どうやって思いついたらいいんでしょうか?」と質問したのです。
彼は決して地頭が悪いわけではありません。成績も優秀であり、サークルでもトップを務めていました。ただ、これまでに「長所と短所を並べて比較し、合理的に得する案を選択する」という考え方をしたことがなかっただけです。
しかし「これまでに合理的思考をしたことがない」という過去は「これまでコンサル的な思考のプロセスを想定したことがない」ことを意味します。それだけでコンサルとはミスマッチであることが分かります。
もしコンサルに向いている性質の学生なら、大学受験の科目選択や人間関係など、些細(ささい)なことでも合理的に比較検討しているはずだからです。
能力面の優秀さは鍛えることができますが、性質はそう変わりません。こういった学生はコンサルティングファームよりも、人間関係の中で仕事を動かす商社やメーカーの営業職の方が適しています。
実際に、彼は最終的に総合商社と大手保険会社に内定しました。
しかし、コンサルティングファームの採用人数が爆増した近年では、このような義理人情型の学生も「鍛えれば何とかなるかもしれない」とポテンシャル採用される恐れがあります。
ここで気をつけてほしいのは、マッチングを無視して人気企業に行くことが、あなたのキャリアを保証するわけではないことです。
1年後に病むかもしれない企業へ行くくらいなら、能力を発揮しながら10年先まで働ける企業のほうが長期的にあなたを幸せにするでしょう。
「優秀だからコンサルとして選ばれる」と考える前に、今一度自分がコンサル向きかどうか、振り返ってみてください。