こんにちは、ワンキャリ編集部です。
日本を代表する総合商社7社が一堂に会する特別企画「総合商社の採用戦略」。
今回は丸紅の採用・人材開発課 課長を務める松尾さんにお話を伺いました。
丸紅の採用戦略 押さえるポイントはここ!
・入社10年で経営、投資、MBA。ここまで経験できるのは丸紅だけ
・キャリア志向と育成方針を「見える化」。組織として個々人の成長を支援
・男女問わず、子供を育てながら働くのが「当たり前」の空気感
松尾さんのプロフィール
1998年 入社、電子機器部 電子機器第三課配属。翌年、事業会社へ出向
2004年 航空機・防衛システム部 航空機ビジネス課へ異動
2007年 社内公募制度で投資金融部へ異動、PEファンドへ出向
2009年 専門分野研修生(MBA)として米国アトランタへ留学
2011年 人事部 キャリア開発課。2012年 育児休職、2013年 復職。
2016年 同部 採用・人材開発課へ異動、2017年より現職
10年間で経営、投資、MBA。この経験ができる商社は、きっと丸紅だけ
──本日はよろしくお願いします。インタビューにあたり松尾さんのご経歴を拝見しましたが、商社パーソンとして非常に華やかなキャリアを歩まれていますね。
松尾:ありがとうございます。1998年の入社以来、情報産業、航空、金融、人事という4つの領域に携わってきました。産休・育休も経て、社会人歴はちょうど20年になります。
松尾 麻記子(まつお まきこ):丸紅株式会社 人事部 採用・人材開発課 課長。1998年入社、10年で電子機器部、航空機・防衛システム部、投資金融部と3つの部署を経験する。その後、PEファンドへ出向し、2009年には専門分野研修生(MBA)に。2011年に人事部キャリア開発課に配属され、育児休職を取得後、同課に復職。2017年より現職。総合商社唯一の女性採用課長。
──事業会社への出向、投資、そしてMBA取得と、多くの商社志望の学生が思い描く「王道のキャリア」といえますね。各事業分野でのご経験を、時系列で伺えますか?
松尾:最初の6年間はPCソフトウェアを取り扱う部署に配属され、事業会社への出向も経験しました。そこでは特定メーカーの市場戦略づくりの支援や流通している店頭在庫のコントロールなど、主にサプライチェーンに関わる業務を担いました。
──その部署で印象的だったエピソードはありますか?
松尾:市場データ分析によって、部署の売上を数十億円から100億円以上と倍以上に伸ばしたのが印象に残っていますね。私の所属部署はBtoBが中心で、大手量販店や法人向けシステム販売会社などがクライアントでしたが、当時は市場が飽和状態となり、悩んでいる時期でした。
そこで私たちは、クライアント店舗の先にいるエンドユーザーの購買動向を分析し、オペレーションの改善を行いました。例えば、注文に応じて買い手がつきにくい高額なソフトばかりを卸すのではなく、売れ筋商品重視の棚割りを提案するなど、自社から取引先へのSell-outではなく、取引先からエンドユーザーへのSell-throughのてこ入れを心がけました。細かな工夫と改善の積み重ねが売上に繋がると実感し、とても嬉しかったですね。
──入社数年で、数十億円規模の売上増を担ったのですね。2004年からは、航空機・防衛システム部に異動なさっています。
松尾:同部署ではブラジルのジェット機メーカーと連携し、日本市場向けの販売代理店ビジネスの担当などをしていました。約3年間、国内の大手エアラインへの営業や、新規のリージョナルエアラインの立ち上げ、新規投資案件の検討に関わりました。
コンサル、投資銀行、MBAホルダー。彼らが話す共通のフレームワークを理解したかった
──松尾さんはその後、社内公募制度を利用して投資金融部に移られます。総合商社では、一つの事業領域で専門性を高めていく道もありえますが、異動を決断した理由は何だったのですか?
松尾:新規投資案件の検討に携わった際、今後商社ではますます投資案件が増えていくことを肌で感じ、専門の部署での業務を経験してみたかったのです。同部署でPEファンドへ出向したことをきっかけに、自分のキャリアの幅をさらに広げるために社内制度で海外MBAを取得しました。コンサルティングファームや外資系投資銀行の出身者など、高い視座をもって事業や経営を語る方々と接する機会が増え、「彼らが話す共通のフレームワークを理解したい」という思いから、アトランタのビジネススクールへ2年間留学しました。
──新卒から10年でここまで濃密な経験を得たいなら、プロファームでないと難しいと考える学生も多いと思います。松尾さんは丸紅の環境や制度を活用して、望むキャリアを叶えてこられたのですね。商社の「下積みの長いイメージ」とは一線を画しますね。
松尾:それぞれの部署で一から勉強し、それなりに下積みはしているつもりですが、ここまで自由に見えるキャリアを歩んで来られたのは、「チャンスをつかもうとする者には寛大」な、丸紅らしい経歴といえるかもしれません。
上長の異動で育成方針に断絶が起きるのはもったいない。だからキャリアプランと育成方針は「見える化」しました
──しかし、全ての社員が松尾さんのようなキャリアを歩めるとは限りませんよね。丸紅では、若手はどのように自分のキャリアパスを明確にし、それを達成しているのでしょうか?
松尾: 風土と制度の両面で、若手が自らキャリアを形成できるよう支援しています。まず風土について、そもそも丸紅は自律性を重んじるスタンスです。具体的な制度で言えば、多くの研修は社員が好きなタイミングで受ければよく、無理矢理押し付けるようなことはしません。その時々の仕事内容や今後のビジョンによって、必要になる知識やスキルは違うはずですから、研修の受講タイミングも自分で考えて、判断してもらうんです。部署異動に関しても、私が利用した社内公募制度や、自分から希望の部署を申告する「ジョブマッチング制度」があります。
──興味深い一方で、たとえジョブローテーションなど制度が整っていても、実態が伴うとは限りません。その他に、丸紅ならではの工夫や取り組みはありますか?
松尾:各人のキャリアプランや育成方針をシステム上に記録し、「見える化」しています。以前は属人的に若手の育成が行われ、上長が変われば育成方針に断絶が起きてしまっていたケースもありました。システム化を進めた結果、社員一人ひとりのこれまでのキャリアや将来のキャリア志向を上長がいつでも確認できるようになり、その成長を会社全体で支援できるようになったのです。この制度設計は、私が人事に配属された後の初仕事なので、思い入れがありますね。
──他の総合商社は、いわゆる「メンター制度」を人材育成の肝に据えることも多いですが、確かに上司や部署によって働き方が左右される弱みがあります。丸紅ではあえて属人化をなくすことで、若手が自らキャリアプランを設定し、会社はそれを支援する体制が整っていると。
業務面においての若手の活躍ぶりも教えてください。1年目から海外出張を経験するなど、若手に挑戦させる風土は昨年のインタビューでもお聞きしました。
松尾:はい。丸紅では一貫して、「若手でも任せる」ではなく「若手だからこそ任せる」というマインドがあります。経験豊富なベテランは、時として過去の成功体験にこだわってしまう。そこで、「一番現場を知っている若手だからこそ見える世界も必ずある」と、若手の考えや意見を積極的に吸い上げているのです。時代の変化を柔軟にキャッチし、総合商社として生き残っていくためにも、若手を積極的に応援しています。私自身も入社2年目と9年目で、2度の出向を経験しているので、その実感がありますね。
男女問わず、子供を育てながら働くのが「当たり前」の空気感はあります
──キャリアパスに関連して、女性の働き方についても伺います。学生の中には、「総合商社=男性社会」というイメージが根強く存在します。その中で松尾さんは産休・育休を取得し、現在は課長職も務めるなど、第一線でキャリアを積まれてきました。丸紅という会社は女性にとって働きやすい会社なのでしょうか?
松尾:はい。もちろん制度は一通り揃っていますが、むしろ周囲の理解こそが働きやすさにつながっていると思います。子育てを応援するというよりも、子供を育てながら働くのが「当たり前」という空気さえありますね。昔は結婚・出産を機に退職する人も多かったようですが、最近では多くの女性社員が産休後に復職して活躍しています。
復職後に仕事と育児を両立するうえでも、ビジネスパーソンとして認められ、思いきり働ける環境が整っていると思います。例えば時短勤務の間も、単調な仕事を任せるわけではありません。仕事も育児も満足度高く取り組めるよう、裁量を与えられますし、相応の成果も求められます。本来仕事がしたくて復職したはずなのに、やりがいのある仕事を任せてもらえない方が辛いものです。
──本人が望む働き方を、周りも協力して実現させてくれるということですね。
松尾:そうですね。また、総合職だけでなく、一般職も同じ制度を利用することができます。商社が男性社会というのは昔の話かもしれませんね。私以外にも、様々なキャリアを歩み、後輩たちのロールモデルとなってくれる人がどんどん現れるはずです。
丸紅グループとして強い「個」になっていくために
──インタビューも終盤です。就活生にとっても気になる、丸紅の将来像についてお聞きします。丸紅の今後の展望と、このタイミングだからこそ求める人物像を教えていただけますか。
松尾:これは採用キャッチコピーでもあるのですが、「世界のトッププレーヤーとの競争に勝ち抜く」ことを基本姿勢として、それぞれの業界でトッププレーヤーと戦い、勝ち抜けるような強い組織作りを目指しています。中期経営計画(Global Challenge 2018)にも示した通り、丸紅は社員一人ひとりが、そして一つの企業体としても、「強い『個』」になっていくことを目標としています。
──面白い表現です。今後、強い「個」として、丸紅が強くなっていくために、どのようなことに取り組んでいきますか?
松尾:強い「個」になっていくためには、自社の理解をより深めていくことが不可欠です。「そもそも丸紅のコア(核)となるアセットとは何か?」を再定義する段階にあります。様々な事業分野のビジネスモデルを洗い直し、部署間の情報共有をより密にする中で、新たなビジネスチャンスやアイデアの種を見つけていきたいですね。
──実際に、既に動き出している事業はありますか?
松尾:昨年の4月から「IoTビッグデータ戦略室」(2018年4月より「デジタル・イノベーション部」)という組織を新設しました。そこでは、各事業や営業領域でIoTを使ったらどんなことができるか、研究・実験しています。現場から上がってくる多様なアイデアとテクノロジーを組み合わせ、新たな価値を生んでいくようなチャレンジは、これから本格化させていきたいですね。
面接で見るのは「自然な言葉のキャッチボール」
──では、強い「個」となるため、採用する学生に求める素養などはありますか?
松尾:根底となる部分はあまり変わっていません。当事者意識と責任感を持って、きっちり物事をやりぬく実行力のある人。好奇心があって、色んなことにアンテナを張りながら、チャレンジしていける人。また社内外問わず、多くの利害関係者と接する仕事でもありますから、コミュニケーション能力もよく見極めています。
──丸紅で求める「コミュニケーション能力」について、面接でどのような点を見ていますか?
松尾:会話のキャッチボールが気持ちよくできるかどうかを重視しています。事前に用意した回答をそのまま答えるのではなく、こちらの質問を咀嚼し、自分の言葉で都度リアクションをできる人を評価しています。面接ではぜひ堅くなりすぎず、素の自分を出してほしいですね。
──最後に、就活を控える学生たちにメッセージをお願いします。
松尾:いくつもの部署を経験した上で感じたことは、丸紅には、どの部署にも尊敬できる人がいるのだな、ということです。だからこそ、学生のみなさんにも就職活動で多くの社員に会ってほしいと思います。そうすることで、新たに発見することもたくさんあるでしょうし、何よりも丸紅という会社や特徴や色を、肌で感じられるはずです。私たちもイベントや説明会などさまざまな機会を設けますので、色々な面から丸紅という会社を知り、ファンになってもらえたら嬉しいです。
──ありがとうございました。
▼丸紅 新卒採用サイトはこちら
▼総合商社7社が参加! 商社業界研究セミナーの詳細はこちら
▼特別企画『総合商社の採用戦略』
・【豊田通商】世界最先端のものづくりと並走する仕事。豊田通商のキャリアと魅力
・【双日】一番新しい総合商社だから「何度でも挑める」んです。失敗は恐れない。
・【丸紅】自らチャンスをつかみ、挑戦する。強い「個」を育てる丸紅の風土
・【住友商事】「確固たる事業精神」「徹底した現場主義」、住友商事の強さと魅力に迫る ・【伊藤忠商事】目指すは「厳しくとも、働きがいのある会社」少数精鋭の商人たちのDNA ・【三井物産】合宿選考の真相が明らかに。仕掛人が語る「挑戦と創造」の採用戦略 ・【三菱商事】三菱商事の魅力は「強い想いを持つ社員」と「目指すゴールへの無限の道筋」人事と1年目社員が語るキャリア論