本日はいよいよ企業/業界分析についてまとめる。今回の「第3講」はとても重要である。下の図を見てほしい。
<今までの講義まとめ>
・第1講:企業研究はするな!東大生に勝てる、たった1つの法則
・第2講:就活は最終面接から逆算せよ
第1講、第2講で説明したのは「就活の考え方」だ。読みごたえはあるが、実践に移すのは難しい。一方で第3講からは具体的な「就活の戦い方」をフェーズごとに扱っていく。だから、読んだら必ず実践をしてほしい。
少し復習をしよう。第1講で就活における相手は「人事」とした。第2講では就活の全体像を把握したうえで、「流れ」の意識について述べた。
今回の企業/業界分析はその先のESや面接の出発点だ。そのことを意識して読んでほしい。内定を得るまでに面接があり、面接で使うためにESを書く。では、よりよいESを書くためにどうすればいいか? 企業/業界分析は欠かせない。
つまり、企業・業界分析は表面上見えない0次選考だ。そこから選考は始まっている。
「自分の長所、短所をリストアップ!?」そんな自己分析やめてしまえ!
「私は、サークルで幹部をやっているから『リーダーシップ』があるはず!」
「僕は、ずっと体育会系の部活を続けてきたから『集中力』があるはず!」
企業分析をそっちのけに、手帳や紙の上に自分の長所や短所を書き出しているそこのアナタ……
「そんな自己分析やめてしまえ!」
それは『自分の・自分による・自分のための自己分析』にすぎない。
なぜダメか。就活で求められる自己分析とは、「ビジネスの現場において他者から見たアナタ」だからである。アナタ自身「これが長所だ!」「これが短所だ!」と個人的に思っているものも、ビジネスという現場で他者から見たら異なるかもしれないということだ。
例えば先ほど出した「サークルの幹部=リーダーシップがある」というロジックは、ビジネスの現場で通用するだろうか? こう尋ねた途端、自信をなくす就活生は少なくないだろう。
では、どうすればいいか? 以下に解説していく。
正しくは企業/業界分析→自己分析の流れ
まずアナタがすべきことは、「企業/業界分析」だ。
相手が必要な能力を分析し、その能力の中からいくつかの能力を証明できるエピソードを探す/作ることが自然な流れだ。正しい順番は企業/業界分析→自己分析なのだ。
そして勘の鋭い方ならもう気付いているかもしれないが、「自己分析=ESの設問に答えること」といってもよい。つまり、企業に必要な資質を考えるのが企業/業界分析であり、その資質を証明していく作業がESや自己分析といえるのだ。
私は就活中幾度となくこんな光景を見てきた。
<面接控室にて>
ノートにきれいな字で、その会社の事細かい情報が書いてある。
「IRとか本とかたくさん読んでまとめたのだろうなー。」
「人によっては新聞記事をたくさん貼ってある。」
面接前に、「それを暗記でもするのか?」というレベルでひたすら読み込んでいるのだ。
確かに、就活生っぽい……。
だが、私は「内定もらう気あるの?」と本気で思う。問題は2つ。
1. 面接直前にノートを見返している時点で、頭の中で要点がまとまっていない。
試験直前にノートを必死に見返す、一夜漬けの受験生か?
2. ノートに書いてあるのは「アナタがその会社に入るべき理由」ではなく、無機質なデータ
自分を人事にアピールする場なのに、データを読み上げるつもりか?
自分が営業マンだと仮定してほしい。相手の企業に着いてから必要資料を必死に暗記するって……いかにも仕事ができなそうだ。話すべき内容は事前にインプットしておき、面接会場に着いてからは身だしなみのチェックでもしていた方が、よっぽど安心感がある。
企業/業界分析は「誰に、何を、どうやって」
きれいでそれっぽい扱いきれない企業分析ではなく、単純で言葉にできる等身大の企業分析をした方がよい。
できないことを思い煩うより、今できることは何かを考え、取り組んでほしい。IR? 成長戦略? もちろん、そのうち必要ではあるがもっと重要なことがある。
さて、ここから特に注目! 本日の要点!
・企業は (1)誰かに(2)何かを(3)さまざまな手法を使って売る ことで利益を得ている
・前提として、企業は利潤を追求する集団である
=(1)(2)(3)を体現できる人間を採用できれば利益が増える
下図に分析の具体例を出そう。電機製品メーカーの事務系(文系)総合職の場合……。
企業分析は簡単。まず、自分がこの会社に入った場合の配属される可能性のある部署を想像し、(1)(2)(3)を考えればよいのだ。その上で、それぞれの部署に配属されたつもりで「(1)誰に、(2)何を、(3)どうやって提供し利益を生むのか」を考えればいい。
もうひとつ具体例を出す。例えば塾の教室運営者(塾業界総合職)の業界分析をする。
塾業界は……
(1)誰に:(法人ではなく)一般家庭に
(2)何を:成績向上のノウハウを
(3)どうやって:職員が授業を提供する形で
利益を得ている
簡単でしょう? これを行うことで、「その企業がどんな人間を欲しているか」明確になってくる。もう少し掘り下げよう。
(1)誰に:(法人ではなく)一般家庭に
一般家庭相手ならば、単に専門知識を伝えても意味がない。塾に通っていた方はわかると思うが、もちろん設備は大事だが親身になってくれる先生はそれ以上に魅力的だろう。
それを能力に置き換えるならば、信頼をしていただける「誠実さ」や知識をかみ砕いて伝える「表現力」が必要だろう。
必要な能力:誠実さ、表現力
(2)何を:成績向上のノウハウを
成績向上を実現するのは授業や面談などである。そこには準備のための「計画性」や「集中力」が必要である。
必要な能力:計画性、集中力
(3)どうやって:授業の形で
授業をする人(講師)自身が「商品」となる点で、メーカーなどとは異なる。難しい知識を平易に伝える「表現力」などが必要だ。
必要な能力:表現力
このように、(1)(2)(3)だけで、「誠実さ、表現力、準備、継続力」とキーワードが出てくる。後は自分が証明できそうな資質についてエピソードを練れば、もう立派な自己分析だ。さらに、それを文字に起こせば、もうそれは立派なESの材料となる。
塾には講師の他にも、教室運営業務などがある。その場合はまた新たに、自分が教室業務にあたるときに「(1)誰に、(2)何を、(3)どうやって提供するか」を考え、必要な能力を抽出してほしい。
あとは企業ごとに詳しく見ていけばよいのだ。例えば今はやりの映像系塾ならば、「(1)一般家庭に (2)成績向上のノウハウを (3)映像授業 という形で」提供することになる。すると、「(3)で問われるのは表現力より商材把握になるはずなので、準備力が必要だ」と推測できる。
演習:あの業界を分析してみよう
さて、記事冒頭でも述べたように、この第3講からは「就活の戦い方」を扱う。この記事を通して戦う「武器」を身につけてほしい。ここから先は演習に入る。以下の項目に実際に書き込んで、業界分析をしてみてほしい。
STEP1:分析する業界は?
[ ]業界
STEP2:その業界で自身が配属される可能性のある部署(職種)は?
[ ]
STEP3:分析してみよう(誰に、何を、どうやって)
1)分析する職種は?
[ ]職
2)誰に、何を、どうやって?
[ ]に
[ ]を
[ ]で提供する。
3)働く際に求められる能力と、その理由は?
[ ]力:[ ]だから
[ ]力:[ ]だから
STEP4:出てきた能力を証明するエピソードを考えてみよう!
[ ]力:大学〇年の時……
今回は、皆様が目指すであろう業界で演習してみよう。
※以下は演習問題の解説になるので、ぜひ解いてみてから読んでほしい。
演習:解説編
では、解説を始める。
まずは実際に町田がシートを記入してみた。
STEP1:分析する業界は?
電機メーカー
STEP2:その業界で自身が配属される可能性のある部署(職種)は?
商品企画・広報・営業(法人/家電量販店)・コーポレート部門
STEP3:分析してみよう(誰に、何を、どうやって)
1)分析する職種は?
法人営業
2)誰に、何を、どうやって?
法人(企業を相手)に
自社製品を用いた業務効率化を
コンサルティング営業で提供する。
3)働く際に求められる能力と、その理由は?
コミュニケーション能力:営業には必須だから
論理的思考力:ただの営業ではなく相手の課題を考えつつ、商品を売り込むから。
STEP4:出てきた能力を証明するエピソードを考えてみよう!
コミュニケーション能力:大学◯年の時……
以下、STEPごとに解説を加えていく。
STEP1:分析する業界は?
電機メーカー
STEP2:その業界で自身が配属される可能性のある部署(職種)は?
商品企画・広報・営業(法人/家電量販店)・コーポレート部門
ここでは自分(例えば新卒文系学部生)が配属される可能性のある部署をリストアップしてほしい。憧れの職種だけでなく、できるだけ可能性のあるすべての部署を出すこと。
もし全然思い浮かばないならば、その業界を代表する企業のHPを見て調べればよい。会社概要の組織図のページや、丁寧な会社なら採用情報のページに職種をまとめてくれていることがある。こうやって目的を持って会社について調べ出したらもう立派な業界分析の始まりである。目的もなく、ただなんとなくHPを見てIRなどをみていた頃とは質がはるかに異なるのである。
また、同時にその会社の全体的な流れも想像してみるとよい。その会社が行うフェーズを簡単に図にすればよいのだ。
STEP3:分析してみよう(誰に、何を、どうやって)
1)分析する職種は?
法人営業
2)誰に、何を、どうやって?
法人(企業を相手)に
自社製品を用いた業務効率化を
コンサルティング営業で提供する。
3)働く際に求められる能力は?
コミュニケーション能力:営業には必須だから
論理的思考力:ただの営業ではなく相手の課題を考えつつ、商品を売り込むから。
STEP1で挙げた職種の中から、今回は「営業」を選択する。
「どの職種からやればよいか」という点では、できればその業界特有なものからやるとよい。例えば、経理などのコーポレート部門は一般的にどの企業にもあるので、自分なりの説明がしにくいのだ。「営業もさまざまな会社にあるじゃん」と言われそうだが、営業は業界によって顧客も手法も求められるものも大きく異なるので、優先順位が高い。また、営業は直接企業に利益をもたらす部門だ。ゆえに人数を割く会社は多く、新卒が配属される可能性も高いのである。
もしも部門や職種の想像がつかなければ、企業HPのIR情報から、セグメント別の業績や説明資料のPPTを見ればよい。当然、力を入れている部門は売上が高いし、これから力を入れる部門も強調されているはずである。
では、ここから具体的な分析に入る。
今回の「電機メーカーの法人営業」ならば、相手は法人なので、当然高度な専門知識が求められる。また、売るものは製品だけでなく、その製品を用いた業務効率化など、パッケージで提案する可能性もある。目に見ないサービスを売るには、相手のニーズを捉えつつ、自社製品を買ってもらわなければならない。ただの営業ではなく「コンサルティング営業」と書いたのもそのためである。
次に、それぞれに必要な能力を以下のように単語にしていく。
そして、ここで言語化した能力を証明できるエピソードをSTEP4で書いていく。
STEP4:出てきた能力を証明するエピソードを考えてみよう!
コミュニケーション能力:大学〇年の時……
これは次講「ES編」で詳しく解説する。STEP3で明らかにした「○○力」を証明するエピソードを、200字程度で考えて書いてみてほしい。
最後に、今回も宿題を出す。今回からはかなりボリュームがあるので、しっかりと復習してほしい。次回はいよいよ、具体的なESの執筆テクニックをお伝えする。
STEP1:分析する業界は?
[ ]業界
STEP2:その業界で自身が配属される可能性のある部署(職種)は?
[ ]
STEP3:分析してみよう(誰に、何を、どうやって)
1)分析する職種は?
[ ]職
2)誰に、何を、どうやって?
[ ]に
[ ]を
[ ]で提供する。
3)働く際に求められる能力と、その理由は?
[ ]力:[ ]だから
[ ]力:[ ]だから
──【第4講:ESは自慢大会ではない!「平凡でも受かる」回答を生み出す最強ツール】につづく
──町田イチロー、Twitterやってます。相談や質問はこちら(@MARCHdaICHIRO)へ
<町田イチロー 「MARCH生の就活全勝メソッド」講座一覧>
・第1講:企業研究はするな!東大生に勝てる、たった1つの法則
・第2講:就活は最終面接から逆算せよ
・第3講:そんな自己分析やめてしまえ!すべては等身大の企業・業界分析から始まる
・第4講:ESは自慢大会ではない!「平凡でも受かる」回答を生み出す最強ツール
・第5講:面接は「完璧」がスタートライン。無敵の回答のカギは4Kにあり
・第6講:OB訪問・説明会を攻略せよ。「それっぽい」就活生を脱するコツ
・第7講:MARCH生こそ胸を張れ
・課外授業:合説に参加するか否かを自分で考えるための仮説検証
・第8講:面接まであと1週間、後悔しないための「最終チェックリスト」
※こちらは2017年11月に公開された記事の再掲です。