人口減少にともなう働き手の不足は、日本社会に影を落としており、今後も厳しい状況が続く見込みです。また、自然災害の激甚化も大きな課題であり、いかに被害を軽減できるかが問われています。
そこで期待されているのが「テクノロジー」の活用です。セーフィーは「映像から未来をつくる」というビジョンを掲げ、防犯カメラなどの映像を集めてリアルタイムに解析することで、課題解決に貢献しようと挑戦しています。
創業から上場を経て9年目を迎えるセーフィー。これまで社会人経験者のみを採用してきましたが、昨年から新卒採用を開始しています。
ワンキャリア編集部はセーフィー 代表取締役社長CEO(最高経営責任者)の佐渡島隆平さん、執行役員、営業本部副本部長の鈴木竜太さんに、ビジネスの現状と市場の可能性、そして新卒採用を始めた背景と期待についてお話を伺いました。
<目次>
●セーフィーの原点と起業経験者が感じた魅力
●音声+映像とプラットフォームによる社会課題解決の可能性
●街づくりや防災でも活用されているセーフィー
●デジタルネイティブ世代の発想が映像の可能性をさらにひらく
●世界で語り継がれる「伝説のメンバー」になってほしい
セーフィーの原点と起業経験者が感じた魅力
──まず、佐渡島さんがセーフィーを創業した経緯について教えてください。
佐渡島:学生時代の起業を経て、新卒でソニーグループに入社しました。入社10年ほどたって、ソニー木原研究所からスピンアウトしたモーションポートレートという子会社に出向しました、そこでは機械学習を用いた顔認識技術を作り、ライセンスやアプリケーションを制作していました。世界最高水準の画像処理技術を持つ会社ですが、せっかくいい映像や画像処理技術があるのに、まだまだその価値を引き出せていないと考えていました。
佐渡島 隆平(さどしま りゅうへい):セーフィー 代表取締役社長CEO
1999年、大学在学中にDaigakunote.comを創業。2002年、ソニーネットワークコミュニケーションズへ入社。2010年、同社出資のモーションポートレートCMO(最高マーケティング責任者)就任。2014年、セーフィーを創業。2017年より「クラウド録画サービスシェアNo.1」を継続。2020年、「Forbes JAPAN日本の起業家ランキング2021」第1位を受賞し、2021年9月に東京証券取引所マザーズ(現グロース市場)へ新規上場。
そんなとき子どもが生まれて家を建てることになり、カメラを付けてみたいなと思ったのがセーフィーを起業したきっかけです。当時の防犯カメラは低スペックなのに高価で、設置費用も高かったので、自分たちで創り、もっと手軽に使えるようにしたいと考えました。
──鈴⽊さんはセーフィーの設立から2年、まだ現在のビジネスが確立されていない時期に入社したそうですね。それまでのキャリアや入社動機について教えてください。
鈴木:インターネットやエンターテインメント領域に関心があり、新卒で両方に強みを持つジュピターテレコム(現在のJCOM)に入って営業を経験した後、エンターテインメント関連ウェブアプリの会社を起業しました。その後、もっとインターネットの可能性を広く感じたいという気持ちがどんどん高まってセーフィーに参画しました。
鈴木 竜太(すずき りゅうた):セーフィー 執行役員 営業本部副本部長
セーフィー 執行役員 営業本部副本部長 兼 セールスイネーブルメント室長。2004年、株式会社ジュピターテレコム(現 JCOM)へ入社。2011年、株式会社g&h 取締役CSO(最高戦略責任者)就任。2016年にセーフィーへ営業部長としてジョイン後、2018年10月にパートナー営業本部長、2020年12月に執行役員に就任、2023年にはセールスイネーブルメントオフィスの立ち上げをリードし現在に至る。
セーフィーはウェブアプリだけでなく、「モノのインターネット」と訳されるIoTのハードウエアがあり、通信領域、カメラに搭載するOS、画像解析AI(人工知能)、データ活用など、インターネットの醍醐味(だいごみ)だと思っている要素が全部詰まったチャレンジをしているので、面白いなと思いました。
また、インターネットの世界でビジネスをやるならグローバル市場に出ないと意味がないと思っていたので、当時は10名ぐらいの規模とはいえ、その可能性を感じられたことも決め手になりました。加えて、子どもが生まれて間もない時期だったことも影響して、より直接的に社会貢献できるサービスに携わりたいという気持ちが芽生えていたのも理由です。
佐渡島と初めて会ったとき開口一番に「うちは、防犯カメラの会社ではありません。スマートフォンのAndroidみたいな存在だと思ってください」と言われイメージを覆されたのですが、ITの世界にずっといて、プラットフォームの重要性を理解していたのでぐっとテンションが上がったことをよく覚えています。
音声+映像とプラットフォームによる社会課題解決の可能性
──防犯カメラの会社ではない、という話がありましたが、実際はどういう会社なのですか?
佐渡島:「映像プラットフォームを提供している会社」であり、世界中のカメラの映像をクラウド化して、自分や社会のために、誰もが活用できる社会の実現を目指しています。
セーフィーのビジョン「映像から未来をつくる」には、映像データを活用できるインフラを作りたいという強い思いを込めています。2030年ごろを見据えて、まず必要だと考えたのがカメラをクラウド化してSaaSで利用できるようにすること。さらにセーフィー以外のカメラやアプリケーションが載るプラットフォームに発展させるつもりでシステムを開発してきました。データが集まれば集まるほど、面白い取り組みができるだろうという期待があります。私たちはこのビジネス展開を、VDaaS(Video and Data as a Service)と呼んでいます。
セーフィーは(1)クラウドドリブンなカメラOS(2)強固なセキュリティ(3)誰もが使える高品質なUI・UX(4)拡張性の高いプラットフォームを提供している。
当初は家庭や店舗を想定して「置くだけで簡単に使えて賢くなるカメラ」を開発してきましたが、最近では据え置き型だけでなくウエアラブルカメラも開発。建設現場のDXにもつながっているなど、あらゆる産業のいろんな現場で「目」となり、働き方を変えています。
建設現場は担い手が不足しているのに加えて、2024年に時間外労働の規制が強化されるため働き方改革が急務です。人の代わりになる技術がなければ社会を維持できなくなりますが、われわれが目指すVDaaSの世界を実現できれば、人手や社会コストを減らせます。
また、自動運転車が普及して人が運転する自動車と共存するようになれば、安全性を高めたりスムーズな交通の流れを作ったりするのに、街角のカメラが重要な役割を果たすようになるでしょう。
──鈴木さんは営業でお客さまを回る中で、セーフィーならではの提供価値や強みを感じることがありますか?
鈴木:テキストや音声だけでは解決できない課題も、情報量の多い映像+音声なら、いろんな角度から解決できます。セーフィーに入社してお客さまと会えば会うほど、可能性を感じています。互いにどんどんアイデアが出てきて用途が広がっていくので、お客さまと一緒に市場を作っている感覚がありますね。
店舗や建設現場、オフィスビルなどが全部つながっていくと、やがて街全体のデータが集まるようになるので、いろんな切り口から社会課題の解決を図ったり、現場に向けて新しい価値を生み出したりと、とても大きな可能性があります。
街づくりや防災でも活用されているセーフィー
──具体的にどのような領域で取り組みが進んでいるのでしょうか? また、特にセーフィーの価値を発揮できると考えている領域についても教えてください。
鈴木:直近の街づくり事例では、渋谷区が宮下公園を再開発するにあたってカメラを設置し、開発者や設計者の思惑通りに利用されているか定量的に測定できるようになっています。セーフィーの解析に関する提案と、電源さえあればLTE通信でデータを集められる設置の手軽さ、価格などが評価されて採択に至りました。
渋谷区のプロジェクトのイメージ図
佐渡島:街づくりに限らず、今まで勘に頼っていたのがデータエビデンスに基づいた判断や評価が簡単にできるようになるわけです。人口動態が変わるのにともなって、店づくりや街づくりの概念がこれから変わってくる中で、セーフィーの価値は高まっていくだろうと考えています。
また、防災や災害対応にも大きなポテンシャルがあります。災害時にはドローンに搭載したカメラで被害状況を迅速に把握することで、消防や救急隊員への指示出しや、保険金の支払い迅速化などにも役立てられています。
──鈴木さんが入社時に期待していた、直接的に社会貢献できるビジネスがすでに始まっているのですね。
佐渡島:2016年の熊本地震では、現場の交通状況を把握できない問題があったので、弊社がカメラを送って交通量計測で協力しました。最近は被災地に無償でお貸しします。
鈴木:災害は基本的にいつ起こるか分からないし、起こるのは数日だけなので、高スペックなカメラなどを常に用いるのは合理的でありません。例えば、河川が氾濫する前には大雨や台風の情報が入ります。クラウドサービスなら、直前に街中のカメラの設定を変えて高解像度のデータを集められるようにし、AIを駆動させて詳細な分析を行うような運用が可能です。
デジタルネイティブ世代の発想が映像の可能性をさらにひらく
──お客さまも気づいていない切り口で、解像度の高い提案力が求められることでしょう。それにはビジネス経験が必要なのではと思うのですが、あえて昨年から新卒採用を開始したのはなぜですか?
佐渡島:付加価値を作り、新しい時代やこれからのセーフィーを創っていただきたいからです。
これまでの経緯を振り返ると、想像していなかったユースケースをお客さまと向き合う中で発見し、成長に結びつけることができました。
そうして、小売、建設、スマートビルディング、さらに街づくりなど公共での実績が豊富になってきました。それをグローバルに展開していく海外事業もスタートしています。
その上で、カメラがAIでさらに賢くなるこれからの時代では、カメラの使い方を想像して自分なりにアレンジしていけるデジタルネイティブ世代の発想が欠かせないと考えています。
おそらくiPhoneを電話だと思って使っていない世代であり、何をするのにもスマホ前提が当たり前の世代です。われわれが作ってきた映像のシステムサービスを「当たり前でしょ」という前提で物事を組み立てていける人たちが、そのような新しい付加価値や新しい時代を創っていける人たちだと思います。
──新卒社員が入社したばかりですが、これからどのように育成しようと考えているのでしょうか?
鈴木:営業本部で伝えているのは「守破離」の大切さです。まずは先輩に学んで型を作り、少し破って自分なりのやり方で仕事を進められるまで約1年が目安です。最後は自分が作ったオリジナルの「離」を掛け合わせて、本当のオリジナルを作っていく段階を踏んでほしいですね。
研修では、最初の2週間でロジカルシンキングなどのベーシックなスキルを学びます。次に職能別研修があり、営業本部が52日間に6つのプログラムを用意。先輩との同行も実施しますが、上司や部をまたいだ経験ができるようにスケジュールを組んでいます。それ以外にも懇親会を含めたオリエンテーション、約50コンテンツあるイーラーニング、営業ロールプレイング、テクニカルサポート研修、Salesforce基本活用などトレーナーと共にスケジュールや目標を決めて実施します。
新卒研修をリードしているセールスイネーブルメント組織立ち上げ時に佐渡島と会話して、ユニークでセーフィーらしいメニューとして、教養を身につけることも強く推奨している点。SaaSは継続的なお付き合いのビジネスですから、契約をした後にもお客さまと会話して関係を継続してもらうためには、教養がありビジネスマンとして面白い人物である必要があります。最初は簡単な読書感想文から始まりますが、外の人に会いに行く機会を増やすための制度も用意していきたいと思っています。
研修メニューはもちろんブラッシュアップして、来年はよりよい研修にしていきます。
世界で語り継がれる「伝説のメンバー」になってほしい
──今後、どのような方に入社していただきたいですか?
鈴木:「守」は素直さ、「破」は突破力、「離」はオリジナル、これらをバランスよく持っている人に入社してほしいですね。
まずは地に足をつけながらですが、大きなビジョンも描けるバランスは必要。「地に足」の観点では、現場に根ざし、1人のお客さまの立場に立って解決に導こうとできる人です。
また、新卒同期と競うだけでなく、昨日の自分や去年の自分と競って伸びていけるような人はいいですね。
佐渡島:ひたすらPDCAを回せるチャレンジャーであってほしいと思います。
映像であらゆる産業のDXをしたり、それをグローバルに輸出していったりとセーフィーは今後も新しいチャレンジをしていくので、そのようなマインドを持っている方と一緒に働いていきたいです。
それから、多能的であってほしいとも思います。DXは社内横断の推進力、知識、経験が求められるため、営業は営業、開発は開発、オペレーションはオペレーションと分離した経験を積んでしまったのでは、お客さまのDXを担えきれません。
多能的に経験を積むことでお客さまに寄り添えるし、想像を超えられ、感動してもらえるようなサービスを作れるようになる。それは守破離の「離」であり、そういう人が次世代の経営を担える人だと思っています。
──最後に、就活生に向けてメッセージをお願いします。
佐渡島:あらゆる才能が集結し、新しい時代とともに新しい何か生み出していくものだと考えているので、セーフィーは「異才一体」のチームづくりを大事にしています。お客さまの課題をよりよく解決するには、自分の才能だけでなく、みんなの才能を結集させることが大切。そのためにも、人を巻き込んでいける人を育てたい。新卒の人たちは白地だからこそ、そうした素養が身につきやすいだろうと期待しています。そして、これから新しいセーフィーの価値を作ってもらいたいですね。
鈴木:ソニーグループやトヨタ自動車のような本当にグローバルで躍動するメイド・イン・ジャパンの会社を一緒に作っていきたい。そうした会社の歴史をひもとくと「伝説のメンバー」がいるものです。セーフィーは今、400名に満たない規模ですので、まだまだこれから。伝説として後世に語り継がれるような人になるチャンスですし、そう意気込む人の参画を待ち望んでいます。
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