こんにちは、ワンキャリ編集部の外銀担当チームです。
今回は外銀志望者の間でも謎が多いとされる「リサーチ部門」の業務についてお伝えします。
リサーチ部門はフロントオフィスにも貢献する「外銀の頭脳」
リサーチ部門とは、市場や為替などの動向から世界情勢までを考慮・分析し、顧客が「どこに投資すべきか」を検討する際の判断材料となるレポートを書いて発表する「外銀の頭脳」と呼べる部門です。
リサーチはミドルオフィスとして認識されることが多いリサーチ部門ですが、実際に顧客向け資料を提供しているため業務内容はフロントオフィスに近いといえます。例えば、リサーチ部門の書いたレポートについて、筋が良いほど顧客からの注文をマーケット部門の営業が受けやすくなるなど、マーケットやIBDといったフロントオフィスの業務とも密接に関わりがあるからです。
シニアアナリストが担う2つの機能:「レポート」と「営業支援」
リサーチ部門で働く人々は一般的に「アナリスト」と呼ばれ、新卒から3年目までのジュニアアナリストと4年目以降のシニアアナリストに分けられます。
シニアアナリストの仕事は、主に金融や株、為替など、経済全般について自身の得意分野を生かしレポートを書いて発表することです。このレポートを企業へ販売するほか、社内の他部署(営業)へ提供して会社の利益へ貢献しています。
質の高いレポートを書くためには、経済のスペシャリストとして高い専門性を持つことは大前提として、個々の企業へと足を運ぶ地道なヒアリングが欠かせません。
また、IBDが営業先に行く際は同席して金融商品の説明をする役割も担います。取引先に商品を買ってもらうためにいかに分かりやすく説明ができるか、良い印象を残せるかがポイントです。
このように部屋にこもってガリガリとレポートを書いていると思われがちなリサーチ部門ですが、実はかなり外回りの多い仕事でもあります。例えば、「A社の株価の動向」といった個別事例を調査する担当者は、足しげくA社や関連各社の株主総会へ通うようなことがあります。
シニアアナリストは自分の名前で勝負するため、足を使って「質の高い情報」を集めることが求められる
良いレポートを書くアナリストは、日経ヴェリタスに名前が掲載されたり、噂で評判が広まったりすることで業界内の名を上げ、より大きな仕事をつかんでいきます。
自分の名前で勝負していくことが求められるシニアアナリストには、質の高いレポートを書くために、「足で稼いだ情報」を得ることが必須。
そして、質の高い情報を手に入れるには、そのシニアアナリスト個人が「担当企業/業界の内情を知る人」とのコネクションを作ることが重要です。そのため、シニアアナリストには「相手と信頼関係を築きながら、本当に価値のある情報を引き出す力」が求められます。
なお、自分の名前で勝負することへの抵抗感がある方は不向きでしょう。実際、シティグループ証券の調査本部の本選考では、面接官が「アナリストランキングという形で個人の名前で評価されることに抵抗は無いか?」と候補者に直接質問をするほどです。(※無料の新規会員登録/ログインが必要です)
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ジュニアアナリストは、シニアの補助業務を通じて業界の知見を深める
対してジュニアアナリストの仕事は先輩アナリストの補助と、レポート作成の訓練がメインです。具体的には先輩アナリストが作ったレポートに使う表・グラフやヒアリングした情報をまとめる作業です。数年後にシニアの仲間入りに向けて自身の名前でレポートが発表できるようになるため、下積みとして幅広く経済への知見を深めていきます。
「知力と体力の勝負」であることはフロントオフィスと同じ
リサーチ部門は「社外の取引先と直接やりとりをしない」という誤ったイメージからか「IBDやマーケット部門よりはワーク・ライフ・バランスがありそう」という理由で応募を決める学生もいるそうです。(実際は、先述の通り、やりとりする場合もあります。)
しかし、リサーチ部門は「頭脳労働を長時間続けられる知力と体力が求められる」という意味でフロントオフィスと同様に過酷な労働環境といえます。特にジュニアアナリストは急な仕事も多いため、ある元社員は「決算の時期は不夜城」と揶揄するほどです。
学者気質の人々が熱心に仕事のクオリティを高めていく環境
リサーチ部門が「一風変わった学者肌」とされることが多いのは、他部門と比較して多くのアナリストが出世や高給に対してそれほど貪欲ではなく、「自分やチームが満足のいくレポートを作り上げること」に重きを置いているからであると考えられます。
リサーチ部門で働く人々はコミュニケーション上手でありながら、根は学者肌。興味がある分野について熱心に研究し、仕事のクオリティを高めることを誇りに思っている方が多いです。
なお、気になる給与ですが、ある社員からは、「賞与を除いたベース給与は1年目で平均して700万円程度」とのこと。もちろん、各社や業績により、数百万にもなると言われる賞与を含めるとかなり幅はありますが、給与は時給換算すると他部門と比べ少し低い程度で高額であることは変わりありません。
外銀のリサーチ部門へ入社する新卒に求められる素養とは?
これまでの話をふまえつつ、リサーチ部門志望者が、選考で意識すべきポイントをまとめると、以下の3つ素養があることがポイントです。
1. シニアアナリストの要望に柔軟かつそつなく対応できること
2. 物事を独自の視点から分析できること
3. 最低限の金融の知識があること
1. シニアアナリストの要望に柔軟かつそつなく対応できること
先輩アナリストの助手として活躍することが求められるジュニアアナリストは、先輩であるシニアと息の合った仕事をすることが何よりも重要。業務の特性上、急に「明日の朝までにこの資料のサマリーをまとめておいて」といきなり100ページの英文資料を渡されるようなこともざらにあるため、シニアに合わせた柔軟な対応ができることが必須でしょう。
「上司の意向に合わせた柔軟な対応ができ、少し無理な期日でもそつなく仕事をこなせそうか」といった点はアピールポイントになりえます。リサーチ部門の面接では、「急に任せられた物事でも、そつなく地道にこなした経験」をアピールしていくと良いでしょう。
2. 物事を独自の視点から分析できること
日々の経済情勢や市場を観察した上で、独自の視点から分析してレポートを書くことは、知的体力を消耗する作業です。従って、「日々移り変わる事象について、どう独自の視点から考えるか」という部分が選考においても見られることが多いようです。
例えば、面接の質問で「今の自分と5年後の自分に値段をつけるとしたらいくらですか?5分で考えてください」といった突飛な質問が面接で飛んでくることも。こういった質問では論理的なことはもちろん、独自の視点から考えを述べられるかが測られます。
3. 最低限の金融の知識があること
上記の2つの素養以外にも、金融に関する知識(例えば、PER、ROEなどの用語の意味、考え方)を勉強しておくことも大切です。例えば、メリルリンチ日本証券の調査部の本選考では、「日本企業のROEを上げるにはどうしたら良いか?」といった質問を突然聞かれます。(※無料の新規会員登録/ログインが必要です)
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おわりに
ここまで、外銀のリサーチ部門の業務についてお伝えしてまいりました。
リサーチ部門は決して閉鎖的な空間で淡々とレポートを書くだけが仕事ではなく、関係者と柔軟なコミュニケーションがとれること、そしてシニアになると外へ積極的に出ていき個人として勝負することが求められる職種です。これまでの紹介で興味を持った方は、ぜひ外銀リサーチ部門の門を叩いてみてください。
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