世界に名を轟(とどろ)かせる経営コンサルティングファーム「ボストン コンサルティング グループ(BCG)」。多くの人がそこで働くことに憧れる一方で、実際に働く環境はどうなのでしょうか。
今回はBCGのキャリアプランを探るため五十嵐 星来(いからし せいら)氏にインタビューを実施。一度はBCGに就職するも、小学生からの夢だった「人道支援」の道に進むため会社を離れた同氏。海外大学院を経て、再びBCGへ戻るキャリアを選択しています。
「会社全体がメンバーの成長にサポーティブで、心地よく働けるため」BCGに戻ってきた理由について、そう語る五十嵐氏。一度は会社を離れても再び戻ってきた理由や、BCGで働く魅力について詳しく語ってもらいました。
<目次>
●人道支援の道に進む前にビジネスを学びたい。コンサルティング業界を選んだ理由
●キャリアに迷って会社を離れるも、再びBCGに戻った理由
●BCGは「間違っていても発言することが評価される」
●人として「魅力的な大人」になれる環境がある
人道支援の道に進む前にビジネスを学びたい。コンサルティング業界を選んだ理由
──新卒でBCGに入社した経緯を聞かせてください。
五十嵐:実は就職活動を始めた当初、コンサルティング業界は視野に入れていませんでした。どんな業界かも知らず、大学の先輩による紹介でBCGの座談会に参加して、初めて業界について知ったほどです。その時の話がとても面白くて、コンサルティング業界について調べるようになりました。
また小学生のときから人道支援に強い興味があり、将来はそのような仕事に就きたいとも考えていました。そこで大学院や国際機関に進むキャリアも検討したのですが、ビジネスに対する理解が浅いまま人道支援の道に進むことに疑問を持つようになりました。
いつかは人道支援の道に進むにしても、一度はビジネスを経験したい。そのような思いから、さまざまな業界の経営的な意思決定に関われるコンサルティングの世界に進もうと決めました。
五十嵐 星来(いからし せいら):東京大学 教養学部 教養学科卒業後、2020年4月に新卒でBCGに入社。
その後2022年に一度BCGを退社し、University of London SOAS校Development学部 Humanitarianism, Aid, and Conflictコースを修了。その後、再度BCGに入社し、現在に至る。
BCGではエネルギー業界のクライアントを中心に、新規事業立ち上げやアライアンス締結、業務プロセス改革などのプロジェクトに従事。その他保険業界、パブリックセクターをはじめさまざまなクライアントと中長期戦略、デジタルトランスフォーメーションなどのプロジェクトにも参画経験がある。
──さまざまなコンサルティングファームがあるなかで、BCGを選んだ理由も聞かせてください。
五十嵐:選考で会った人たち皆がとてもすてきで、社会人として尊敬できる人たちだったからです。
コンサルティング業界と聞くと「Up or Out」というシビアなイメージを持つ方も多いかもしれません。もちろん成長意欲は必要ですが、BCGではメンバーが成長できる環境づくりへの投資を惜しみません。一般企業でいう役員クラスの「パートナー」たちが、若手のメンバーの話に耳を傾けたり、個別にアドバイスをくれたりするのです。
入社前からそのような話は聞いており、実際に会った先輩社員も親身に耳を傾けてくれたのでBCGで働きたいと思うようになりました。実際に働き始めてからも、メンバーの成長をサポートする社風を肌で感じました。
キャリアに迷って会社を離れるも、再びBCGに戻った理由
──入社後のキャリアについても聞かせてください。
五十嵐:入社した直後は、さまざまな業界の中長期経営戦略の策定や構造改革のプロジェクトに携わらせてもらいました。その後は、エネルギー業界のプロジェクトに長く携わっており、新規事業の立ち上げやアライアンス戦略の策定、制度設計などを経験しました。
エネルギー業界は社会インフラに密接に関わっており、公共性も高い業界だったので自分から志望してプロジェクトに入れてもらいました。幸いにも事業計画の策定も細かいところまで携われ、資金調達の方法やバリューチェーンの構築など具体的な仕事まで経験できました。
──五十嵐さんは、一度退職してアカデミアの道に進んでいますよね。その決断の背景を教えてください。
五十嵐:いったん仕事から離れて、自分のキャリアを考える時間がほしかったからです。エネルギー業界のプロジェクトを経験しているなかで、ビジネスも社会インパクトをもたらすことができ、人道支援とは違う形で人の役に立てる取り組みなのだと思うようになりました。
しかし、そのように考えられるようになった一方で、これから自分がどんなキャリアを築いていきたいか、分からなくなってしまいました。
まとまった時間を取って自分と向き合う時間がほしい。そう思った時に、働き始めてから少し遠ざかっていた人道支援の分野にもう一度足を踏み入れてみて、それに対する自分の反応を見てみようと考えました。そしてその手段として、海外の大学院への進学を決めました。
──大学院卒業後は、国際機関への就職や大学に残る選択肢もあったと思いますが、再びビジネスの世界に戻ることを決めたのはなぜですか。
五十嵐:ビジネスの方がアウトプットの形が合っているように感じたからです。
考えたことを論文の形に落とし込んでいくというアカデミアのアウトプットも魅力的ですが、私にはそれよりも日々議論しながらプロジェクトを推進していく方が合っているように思いました。BCGで経験した、自分で考えたことを発信して議論を重ね、プロジェクトを推進していくプロセスの面白さが忘れられなかったのです。
──ビジネスの世界に戻ると決めた上で、なぜ再びBCGを選んだのでしょうか。
五十嵐:実はBCGを離れてからも、元上司やパートナーと話をする機会を定期的にもらっていました。会社を離れた後も、どんなキャリアパスがあるのかアドバイスしていただき、私の大学院での状況も共有させてもらいました。
そのようなやり取りのなかで、将来的に人道支援の道に進むとしても、自分をより成長させる必要があると考え、コンサルティング業界は成長するのに最も適した環境であると思いました。加えて、BCGの環境はとても心地よく、最も成長に適していると感じていたので、コンサルティング業界に戻るならBCG以外に選択肢はありませんでした。
BCGは「間違っていても発言することが評価される」
──BCGで働く魅力について聞かせてください。
五十嵐:まず、臆せず声を挙げられることですね。会社によっては、若手のうちは意見を聞き入れてもらえない職場もあると聞きます。しかし、BCGはたとえ間違った意見であっても、声をあげることに価値があると耳を傾けてくれるのです。
心理的安全性があるからこそ、自分の意見が言いやすいですし、その内容がよければ若手の意見であってもクライアントにまで話が通ります。「コンサルティング業界は間違ったことは言ってはいけない」と思っている方もいるかもしれませんが、BCGでは間違っていても自分で考えたことを評価してもらえるので、安心して働けます。
──なぜ間違っていることでも評価されるのでしょうか。
五十嵐:内容が正しいかどうかよりも、自分で考え発信することが成長につながるからです。研修のときから「会議で発言しなければ、参加していないのと同じ」と教わるため、自信がなくても自分の考えを言う習慣が身に付きます。
最初は自分の考えを上司やパートナーに言うのは勇気がいりますが、先輩たちも若手の声にしっかり耳を傾けてくれるので、臆することなく発言できるようになるのです。
──入社前後でギャップを感じたことがあれば教えてください。
五十嵐:ロジカルシンキングだけでは通用しないのは大きなギャップでしたね。新卒で入社する前は、コンサルティング業界といえばロジカルシンキングと思っていたのですが、実際にプロジェクトを進めていくと、きれいなロジックを組み立てても進まないことが多々あります。
机上の空論だけではプロジェクトが進まないので、それを裏打ちするために、実際に影響を受けるクライアントの現場担当者の声を拾い合意形成をするなど、泥臭い仕事をすることも珍しくありません。コンサルタントはただ戦略を提案するだけの仕事だと思っている方もいるかもしれませんが、BCGはもっと本質的な仕事をしていると思います。
──ロジックだけではプロジェクトが進まないとは、具体的にどんな状況なのでしょうか。
五十嵐:例えば会社の組織制度をクライアントに提案する際も、現場の声を聞かずに作った制度は現場に浸透しません。そうならないためにも、クライアントの経営陣に提案する前に社員の方々に「こんな制度を始めようと思っているのですが、どう思いますか」と聞いて回るプロセスが必要です。それも1人ではなく、何十人、何百人と話を聞いていくこともあります。使われない制度を提案しても意味がありません。しっかりと社内で浸透し、効果を発揮するような提案をするためにも、現場とも擦り合わせをしながら、合意形成をしていくことが欠かせないのです。
──五十嵐さんはエネルギー領域のプロジェクトに携わってきたとのことですが、担当する領域はご自身で選べるのでしょうか?
五十嵐:担当するプロジェクトは自分で選べます。私が長くエネルギー領域に携わっているのは私が希望したからですし、もしも他の領域で経験を積みたいと手を挙げれば、別のプロジェクトを経験することも可能です。
業界だけでなく、どのようなテーマのプロジェクトに参加をしたいかも自分で選べます。人事系がやりたいのか、中期経営計画に関わりたいのか。自分が興味のあるプロジェクトに手を上げることができるので、自分の望むキャリアを描けます。マネージャー以降になると、ある程度専門性を持ちながらクライアントに向き合っていくため、専門性を選択しながらプロジェクトに従事しますが、若手のうちは自分の興味のあるプロジェクトを幅広く選べますね。
だからこそ、自分がどんな業界に興味があるのか分からない、どんな仕事が得意か分からないと悩んでいる方も、いろいろな経験をしながら自分の特性を理解できると思います。
人として「魅力的な大人」になれる環境がある
──BCGで働いてよかったと思うことを聞かせてください。
五十嵐:人として尊敬できる先輩が多いことです。仕事ができるのはもちろんのこと、ビジネスを離れても人として尊敬できる人が多く、自分がどんな人間になりたいのか考える際のロールモデルになります。
BCGの社員は、話を聞いて受け止めてくれる魅力的な人が多いように思います。
それは、「Unlock the potential of those who advance the world」というBCGのパーパスを体現するような社会をリードできる人間になるためにとても大事なことです。どんなに仕事ができても、人がついてこなければ大きな仕事はできません。
BCGは仕事のやり方だけでなく、そのような人間力も学べる環境だと思います。尊敬できるロールモデルに出会え、豊かな思考を培えるBCGでファーストキャリアをスタートできたことは本当に大きな財産であると感じています。将来、社会にインパクトを出せるような大きな仕事に携わりたいと思っている学生さんにはぜひ勧めたいですね。
──最後に、学生たちにメッセージをお願いします。
五十嵐:何がしたいかを考えるのも大事ですが、自分がどういう人間でありたいのか、どういう価値観を持って生きていきたいのか考えてみるといいと思います。自分が好きな仕事であっても、自分の価値観と合わない職場であれば苦しむかもしれません。
本当にその会社で、自分がなりたい人間になれるのかを考えて選ぶと豊かな選択ができるのではないでしょうか。
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【制作:BRIGHTLOGG,INC./撮影:遠藤 素子/編集:山田 雄一朗】