あらゆる企業が関わりを持ち、私たちの生活に不可欠な物流業は、約24兆円と電力業界やコンビニエンスストア業界よりも巨大な市場となっています。宅配大手の佐川急便を擁するSGホールディングスグループは、ロジスティックスや管理システムといった、物流の各分野に特化したさまざまなグループ企業を抱え、クライアントに一貫した総合物流ソリューションを提供しています。
佐川急便は、輸配送インフラとグループとしての総合力、さらにはクライアントのニーズに合わせた物流提案といった強みと特徴を持ち、物流業界での確固たる地位を築いています。今回は同社の人事部で採用担当を務めている島本忠拡さんに、佐川急便の歴史や強み、働き方などを聞きました。
顧客の要望に応える源は創業の精神
──初めに佐川急便が大事にしている考えや強みについて聞かせてください。
島本:お客さまに誠心誠意尽くすという、顧客第一主義ですね。それを象徴する言葉として、「飛脚の精神(こころ)」を創業から重視してきました。
島本 忠拡(しまもと ただひろ):人事部人材開発課 主任
入社14年目、営業職として入社し、その後佐川急便本社営業部や親会社であるSGホールディングス人事部、省庁出向を経験したのち現職。
そもそも佐川急便は、江戸時代に手紙や荷物を運ぶことを任務とした飛脚にルーツがあります。江戸時代は盗賊などによる悪事が横行し、荷物を運ぶのも命がけという時代。飛脚はそんな危険な時代において、お客さまからお預かりした大切な荷物を必ず届けるという強い信念のもとで活躍していました。
そんな飛脚に感銘を受けた佐川清によって1957年に創業したのが、佐川急便の始まりです。とはいえ、創業当時は誰にも知られていない佐川急便に荷物を預けてくれるお客さまもいません。そこで佐川清はお客さまのもとに日参することで、まず自分のことを知ってもらおうと考えました。
時には軽くあしらわれる経験もありながら、佐川清は諦めることなく、日々お客さまのもとに足を運び、軒先の掃除をしたこともあったといいます。そうした小さなことを積み重ね、徐々に信頼・信用を得ていき、「一度荷物を預けてみよう」と思い立ったカメラ屋の店主から、当時高級品だったカメラ10台の輸送を頼まれたのが、佐川急便の最初の荷物といわれています。
佐川清はそのカメラを泣きながら運んだという逸話が残っているほどで、「飛脚の精神」という言葉には、信頼を得るためには自分からお客さまのために誠心誠意尽くすという意味が込められています。
「飛脚の精神」は佐川急便の原点として、今も私たち従業員一人一人が胸に抱きながら事業活動にあたっています。実際、輸配送の現場における営業職がお客さまのニーズを直接引き出し、最適なサービスを展開できているのも、「飛脚の精神」があるからこそといえます。
また、同業他社との比較においても、私たちの輸配送インフラはもちろん、どのような領域においてもSGホールディングスグループでお客さまのご要望に応えていく力は業界随一だと自負しています。グループ全体で協力することで、業界や業態を選ばずに対応できるという強みを持てているといえます。
日常から見つけたアイデアで大企業の課題を解決
──営業職という職種について、具体的な業務を教えてください。
島本:街中で見かける佐川急便の青と白の制服を着て荷物を届けている社員を思い描いてもらえれば、イメージしやすいと思います。ただ、営業職は荷物を届けているだけではなく、届け先の企業のお客さまなどとのコミュニケーションを通じて、物流のプロの目から課題や困りごとを引き出し、お客さま一人一人に寄り添った最適なサービスを提供していく業務まで行っています。
具体例として、私自身が営業職時代に経験したエピソードがあります。
今でこそ人事部に所属していますが、私も営業職として新卒入社し、合計7年ほど営業を経験してきました。当時は東京配属で、私の担当エリアは丸の内や霞が関、永田町といった都心部。大企業や官公庁が多く、お客さまにどのように価値提供をできるかと情報収集をする毎日でした。
そんな日々を送る中、テレビを見ていると電子たばこが品薄状態だということが分かりました。そのとき、「求めているお客さんに商品を届けられていないなら、私たちに提案できることがあるはず」と思いつき、たばこ会社の本社が私の担当エリアにあったこともあり、「まずはお客さまからお話を聞いてみよう」と考え、お伺いすることにしました。
とはいえ、相手は大企業で取引もない状態。当然ながら物流のキーパーソンにたどり着くまでは大変で、受付の方とコミュニケーションを取るところからのスタートでした。
荷物のお届けやあいさつなどを繰り返す日々が続きましたが、小さなやり取りを積み重ねていくことで、やがてキーパーソンを紹介してもらえる機会を得られました。その後、私だけではなく、上司や本社の物流担当を交えながらヒアリングを重ね、最終的に日本全国における輸配送を強みにした提案をした結果、受諾いただけたこともあります。
まさに自分の提案が世の中の役に立ったという得難い経験であり、お客さまとのコミュニケーションを通してだけでなく、日常の中での発見から価値提供ができるという意味でも、自社の可能性ややりがいを実感できた出来事といえます。
日常からアンテナを張ることを意識すると、ヒントはいたるところに転がっていると分かります。もちろん入社直後からできることではないかもしれませんが、研修や先輩からの学びなど、多くの経験を通して身に付いていくはずです。
──お客さまに荷物を届けるだけでなく、アンテナを張って相手の課題を見つけて解決するという両輪の業務だと。一方、時間管理の難しさはあるのでしょうか。
島本:会社としても時間管理は意識し、より働きやすい環境を目指しているところです。
どうしても残業は発生してしまう業界ではあるものの、現在は最適な配送ルートを導くAI(人工知能)などを導入し、誰もが効率よく働けるように注力しています。
また、配達は一人で行うイメージが強いかと思いますが、実はチーム単位での業務です。配達量は日々変動しますが、チーム内で役割分担や協力することで、残業を極力抑えて早上がりや時差出勤も可能な体制を整えています。
ITの導入やチームでの協力体制によって、より働きやすい環境になってきていると個人的にも実感しています。
充実した研修に、やりたいことを形にする多様なキャリアパス
──島本さんは営業職を経験された後に佐川急便本社の営業部に異動しています。営業職と営業部で業務内容は変わるのでしょうか。
島本:営業職は現場を支える社員で、本社の営業部は基本的にオフィス勤務で管理や調整を担います。また、実は宅配便にはさまざまなサービスがあり、クール便や航空便、耳なじみのないところであればセキュリティ便や精密機器輸送サービスのパソコン便など多くの便種があります。営業部では、それらのサービスの改良・改善や新規事業の提案なども行っていきます。
異動についても、佐川急便は5万3,000人ほどの社員が在籍していますが、会社主導で異動が決まるわけではなく、社員本人の希望もくみ上げながら適材適所で行われるため、異動先もタイミングも千差万別です。
私は新卒で約2年間現場の営業職を経験してから営業部に異動しています。ただ、私はより現場経験を積みたいと希望したことで再度営業職に戻ったことや、親会社のSGホールディングスの人事部で1年間、外部の省庁に2年間出向したこともありました。
振り返ればさまざまな経験を重ねられ、入社当時に思い描いていた、いろんな仕事をやりたいという希望はかなえられたといえそうです。
──多忙なイメージもありますが、働き方や休日の過ごし方についても聞かせてください。
島本:佐川急便は365日稼働している企業ということもあり、原則としてシフト制で月9日間の休日を組んでいきます。
土日稼働を含めたシフトを毎月決める形ですが、土日は配達量も少ない傾向にあるため出勤する社員も少なくできることから、土日休みの社員は多いですね。また、土日は出勤する社員が少ない代わり、担当エリアが広がることから、入社直後に担当することは少ないといえます。
もちろん、平日休みも可能で、自身のライフステージに合わせて休日を取る社員もいるように、できる限り柔軟に社員の希望に沿って決めていきます。
──入社時に不安を感じることはありましたか。
島本:私個人としては、運転に関する不安と体育会系への不安という2つがありました。ただ、結論からいえば、どちらも杞憂(きゆう)に終わりましたね。
まず運転に関しては、実は佐川急便の運転研修は他社に外部販売するほど質が高く、社内の有資格者からマンツーマンで指導を受けられます。自社で運転教習所のような施設も保有しているほどで、自信を持ってハンドルを握れるようになるまで徹底した研修が受けられるため、入社時の不安は一気に解消されました。今では自家用車よりも業務用トラックの方が運転しやすいと感じるほどです。
次に体育会系への不安ですが、佐川急便は活気のある職場に間違いありませんが、約5万3,000人もの社員の中には、学生時代に運動部だった社員もいれば、運動経験は一切ない社員も当然在籍しています。前職が美容師や料理人だったという経歴を持つ社員もいて、体育会系という雰囲気もありませんでした。
社員それぞれのバックグラウンドや経験をしっかり尊重しつつ、活気にあふれている職場だったので、いい意味でイメージとのギャップを感じたほどです。
──ちなみに、初期配属の勤務地はどのように決まるのでしょうか。
島本:勤務地への不安もあるかと思いますが、私たちは日本全国に営業所を構えていることで、社員のニーズに合わせた配属が可能となっています。安心して働ける環境を整えるためにも、面接などを通して希望をくみ取って勤務先も決定しているため、現在の居住地とかけ離れた勤務先にいきなり配属されることはまずないといえます。
慣れ親しんだ土地で働くこともできますし、都会で働きたいという希望を出すこともできます。初期配属でいえば、希望に沿った勤務地で働けている社員が多いですね。
──最後に入社してからのキャリアについて聞かせてください。
島本:グループ企業も多く、本当に多様なキャリアが待っているといえます。
例えばデリバリー事業に興味を持って入社したものの、数年後に倉庫管理に興味が出てきた場合や、デジタル化が進む現代においてデジタル技術に関わりたいという思いが生まれたとき、佐川グローバルロジスティクスやSGシステムといった、それぞれの関連グループ企業に出向希望を出すこともできます。
さらに、年一度の自己申告制度として、全社員が自身の強みや資格、自身のキャリア設計を届け出ることができ、申告を参考にした他部署や親会社、他のグループ企業から異動のオファーを受ける場合もあります。
キャリアを積む方法は多岐にわたっていることで、自身の思い描くキャリアパスを実現できる環境にあるはずです。物流の重要度が増している現代において、現場と管理部門の両方の経験を持つ人材は引く手あまたで、市場価値は当然ながら高まります。さまざまな経験を積むことは一見遠回りに見えるかもしれませんが、先のキャリアを考えたときに実は最短距離で進めているといえます。これは社会人として最も実感したことだともいえますね。
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【ライター:小谷紘友/編集:吉川翔大】