スマートフォンの浸透により、テキストでのコミュニケーションが増えてきています。学生の中には、電話でのやりとりをする場面があまりないことから抵抗を感じている人もいるでしょう。しかし、就活やビジネスの場では、電話で連絡を取るケースも存在します。
本記事では、就活時の電話対応の重要性や準備事項、マナーとともに、話し方や電話に出られなかったときの対処法について解説します。
<目次>
●就活時における電話の役割
・電話での第一印象の大切さ
●電話対応前の準備
・丁寧なあいさつと自己紹介の仕方
・話す内容や質問のリストを作成する
●正しい電話のマナー
・丁寧なあいさつと自己紹介の仕方
・相手の話に耳を傾ける姿勢
●電話中のポイント
・言葉遣いと話し方の注意点
・速すぎず遅すぎない話し方のコツ
●円滑な電話終了の仕方
・感謝の気持ちを伝える
・今後の連絡先や流れを確認する
●電話に出られなかった時の対処法
・折り返しの電話をかける
・メールで連絡する
●この記事のまとめ
就活時における電話の役割
就活時において電話で連絡する代表的なケースとして、以下の2つが挙げられます。
・選考結果の通知 ・書類不備があった場合や緊急時の確認
最終選考後の内定連絡を電話で行う企業は少なくありません。電話で応募者本人に直接合格を伝え、後日メールや書類で正式に通知を送ります。ただし、不合格の応募者に電話連絡するケースは少なく、あくまでも合格者のみ電話連絡するケースが多いです。
また、書類に不備があり、テキストでのやりとりでは説明が難しい場合に電話でやりとりを行うこともあります。また、急きょ、試験会場や時間が変更になり、早急に応募者に伝える必要がある場合にも、電話が使用されます。
電話での第一印象の大切さ
就活での電話では、電話を受けたときの対応やマナーがその人の印象を大きく左右します。
担当者に配慮した受け答えができれば「マナーが身に付いている」「入社しても周りや顧客とコミュニケーションがとれそう」と、良い印象を持ってもらえて、信頼を得られる可能性があります。明るい声ではっきりと話すだけでも、良い印象を与えられるでしょう。
反対に、電話を受けたときに、ぶっきらぼうな態度やたどたどしい話し方をした場合、企業の担当者は「マナーが身に付いていないのか」「顧客とコミュニケーションが取れるのか」と不安に思ってしまう可能性があります。態度を不快に感じ、悪い印象を持たれてしまう恐れもあるため、注意が必要です。
電話対応前の準備
就活時には企業からの電話に出られないケースもあります。その場合、企業の担当者に折り返し電話をかけることが必要です。しかし、電話に抵抗がある人の場合、うまくやりとりができるか不安に思うかもしれません。応募者から企業に電話をするときは、事前準備をすることにより、スムーズにやりとりができます。
電話対応前の準備
電話対応前の準備では、電話する相手や電話の目的を確認します。担当者の名前はメールや採用サイトから確認できます。「何を聞きたいのか」を整理した上で電話をかけることも大切です。
担当者の名前が分からない場合は、電話の際に「◯◯の件で連絡しました。担当者にお取り次ぎいただけますでしょうか」と依頼しましょう。
話す内容や質問のリストを作成する
電話相手や電話の目的を確認したら、話す内容や質問を整理します。整理しておくことで、伝え忘れを防止できます。ただし、自分が確認したい内容を伝えただけでは、なぜその内容を確認したいのかが相手に伝わらず、混乱させてしまうかもしれません。
話す内容だけでなく、話す順番を整理しておけば、短い時間で分かりやすく伝えられます。電話する際の台本を作るつもりで整理しましょう。
また、電話では自分の用件以外の話をされる可能性もあります。話す内容や質問のリストとともに、手帳やノートを用意し、メモを取れるようにしておきましょう。
正しい電話のマナー
就活に限らず、ビジネスの場で電話をする際に押さえておきたいマナーがあります。焦りや知識不足により用件から話し始めた場合、相手が困惑したり失礼な相手と受け取られたりするかもしれません。
用件から話し始めるのではなく、丁寧なあいさつから話を始めることで、失礼のない電話になります。あいさつだけでなく、自己紹介や話の聞き方のマナーを頭に入れた上で電話をかけることが大切です。
ここでは、押さえておきたい電話のマナーについて解説します。
丁寧なあいさつと自己紹介の仕方
ビジネスの場で電話をする際は、第一声に「もしもし」は使いません。「お世話になっております」「お世話になります」「お忙しいところ失礼します」などの言葉であいさつします。
ただし「お世話になっております」は、一度接点を持った相手に使用するあいさつです。初めて連絡する場合は「お世話になります」「お忙しいところ失礼します」を使います。また、「◯◯と申します」と自分の名前だけ名乗っても、電話相手に「どこの◯◯」なのか伝わらない可能性があります。自分のことを名乗る際は「学校名」を先に伝えましょう。
ビジネスでの電話は、普段の電話では使わない話し方をするため、慣れていなければスラスラと言葉が出てきません。ビジネスでの電話に慣れていないのであれば、何度か練習した上で電話をかけましょう。
相手の話に耳を傾ける姿勢
電話で話す際は、相手の話に耳を傾ける姿勢を見せることも大切です。話を聞くだけでは、聞き間違いが生じる可能性があります。メモを取りながら話を聞き、そのメモをもとに復唱して内容を確認すれば、聞き間違いや確認漏れを防げます。
メモを取る際は「メモを取っても良いでしょうか」「メモを取るのでお待ちいただけますでしょうか」と確認しましょう。メモを取る旨を伝えた上で話を聞けば、「話を聞く姿勢がある人」「気遣いができる人」と評価してもらえることもあるでしょう。
電話中のポイント
電話で話をするときに押さえておきたいポイントも存在します。ビジネスでの電話をする際に、家族や友人と話すような話し方をすると、不快感を与えてしまう可能性があります。相手に失礼のない話し方を理解することが大切です。
ここでは、電話での話し方のポイントについて解説します。
言葉遣いと話し方の注意点
電話に限らず、ビジネスの場で話をする際は、敬語で話す必要があります。しかし、敬語を使い慣れていない場合、不自然に聞こえる可能性があります。間違った日本語を使ってしまうと、相手に不快感を与える可能性もあるでしょう。
正しい敬語や日本語の使い方を理解し、使い慣れておくことが大切です。
敬語一覧
敬語には種類があり、丁寧語・尊敬語・謙譲語に分けられます。それぞれの概要は以下のとおりです。
敬語の種類 | 概要 |
丁寧語 | 相手に敬意を示し、丁寧に話す際の敬語。 「ます」「です」「でございます」などの助動詞や「お電話」「お酒」のような、言い方に上品さを添える話し方を指す。 |
尊敬語 | 目上の人や相手を立てる気持ちを表す際の敬語。 「いらっしゃる」「おっしゃる」のような、相手の動作や状態を高める表現を指す。 |
謙譲語 | 自分や自分側のものを謙遜して話す敬語。 「わたくし」「うかがう」「いただく」のように、自分がへりくだることにより相手を立てる表現を指す。 |
同じ意味でも、敬語の種類によって言葉が異なります。日常でよく使用される言葉を敬語の種類別に表現すると、以下のようになります。
動詞 | 丁寧語 | 尊敬語 | 謙譲語 |
する | なさる | します | させていただく |
言う | 言います | おっしゃる | 申し上げる |
行く | 行きます | 行かれる | 伺う |
来る | 来ます | いらっしゃる | 参る |
見る | 見ます | ご覧になる | 拝見する |
聞く | 聞きます | お聞きになる | 拝聴する |
伝える | 伝えます | お伝えになる | 申し伝える |
分かる | 分かります | お分かりなる | 承知する |
待つ | 待ちます | お待ちになる | お待ちする |
間違いやすい日本語
敬語だと思っていても、間違って覚えていたり使用されていたりする言葉は少なくありません。間違いやすい日本語を知っておくだけでも、失礼のない話し方ができ、評価につながる可能性があります。
間違いやすい敬語や日本語は、以下のとおりです。
間違った敬語や日本語 | 正しい敬語や日本語 |
わたし(私)・俺・僕 | わたくし(私) |
そちらの会社 | 御社 |
きのう(昨日) | さくじつ(昨日)・先日 |
さっき | 先ほど |
後で・この後 | 後ほど |
見た | 拝見した |
聞いた | 伺った |
言った | 申し上げた・おっしゃった |
ちょっと | 少々 |
了解しました | 承知いたしました・かしこまりました |
すみません | 申し訳ございません |
よろしかったでしょうか | よろしいでしょうか |
してもらえますか | していただけますか |
確認してください | ご確認のほどお願いいたします |
~なんですが | ~ですが・~なのですが |
貴社(書き言葉) | 御社(話し言葉) |
お帰りになられますか?(二重敬語) | お帰りになりますか? |
連絡させていただきました(二重敬語) | 連絡いたしました |
参らせていただきます(謙譲語+謙譲語) | 参ります |
どの言葉にも「お」「ご」をつければ良いわけではありません。二重敬語や謙譲語+謙譲語は、間違って使用されているケースの代表例です。一度身に付いてしまった言葉はなかなか直りません。今のうちに、正しい敬語や日本語を身に付けておきましょう。
速すぎず遅すぎない話し方のコツ
電話での会話は、対面で話すよりも相手の声が聞き取りにくいものです。対面であれば表情やしぐさからも情報を伝えられますが、電話で伝えられる情報は声だけです。そのため、電話で話す際は、相手が聞き取りやすいように、速すぎず遅すぎない話し方をする必要があります。
背筋を伸ばし、大きく話すとともに高めの声を意識すると良いでしょう。表情が伝わらないとはいえ、口角を上げて笑顔で話せば明るい声になり、良い印象を与えられます。
緊張により早口になってしまう人もいるでしょう。緊張が原因の場合、意識しても、ゆっくり話すことは難しいかもしれません。素直に緊張している旨を伝えておけば、マイナスイメージを軽減できます。
円滑な電話終了の仕方
電話でのあいさつや用件の伝達はスムーズに行えても、電話を終わらせる際のマナーを知らなかったり、焦ってしまったりすることがあるかもしれません。電話を終わらせる際のマナーや確認事項を理解することにより、スムーズに電話を終わらせられます。
ここでは、円滑な電話終了の仕方について解説します。
感謝の気持ちを伝える
用件を伝え、電話を終了する際は、感謝の気持ちを伝えます。お礼の言葉があるだけで相手が受ける印象は変わります。「本日はお忙しい中ご対応いただきありがとうございました」と伝えるだけで「礼儀正しく気を遣える人」と思ってもらえるでしょう。
また、電話を切る際は「目上の人から先に切る」のがマナーです。あいさつをした後にすぐ電話を切るのではなく、相手が切るのを待ちましょう。
今後の連絡先や流れを確認する
電話では、聞き間違いが発生するケースがあります。面接日時や場所を聞いたのにもかかわらず聞き間違いをした場合、印象が悪くなるどころか面接を受けられない可能性もあります。
日時や場所などの間違えられない用件を聞いたときは、聞き取った内容に間違いがないか確認することが大切です。「◯月◯日ですね」と復唱しながら確認することにより、聞き間違いを防止できます。
相手の声が聞き取りにくい場合は「申し訳ございません、お電話が少々遠いようで。もう一度よろしいでしょうか」と、再度確認します。「分からないまま」「確認しないまま」にしておくことは避けましょう。
電話に出られなかったときの対処法
就活中であっても、アルバイト中や移動中など、電話に出られない状況があるでしょう。電話に出られないからといって企業からの評価が下がることはありません。しかし、出られなかったときの対処法を理解しておくことにより、スムーズに対処ができます。
電話に出られないことを想定し、留守番電話設定をしておけば、メッセージで用件を確認でき、用件に適した対処ができるでしょう。緊急の用件であれば、折り返しの電話をかける必要があります。緊急性がないとき、記録を残しておきたいときはメールで連絡しても構いません。
ここでは、折り返しの電話をかける場合とメールで連絡する場合の注意点について解説します。
折り返しの電話をかける
折り返しの電話は、遅くとも翌日までにかけることがマナーです。留守番電話にメッセージがあれば、用件を確認した上で内容を整理し、落ち着いて対応しましょう。電話をかける際は、電話をもらった時間とともに自己紹介をすることで、相手に用件が伝わりやすくなります。
しかし、折り返しの電話をしても、相手が不在の場合や電話に出られないケースがあります。留守番電話につながったのであればメッセージを残しましょう。電話をしたことを声で残すことにより、誠意が伝わります。メッセージには、電話をもらった時間と自己紹介とともに、こちらから再度連絡する旨を残しておくと良いでしょう。
折り返し電話の適切な時間
折り返しの電話をかける際は、担当者の状況に配慮する必要があります。多くの会社では9時〜18時までの間が勤務時間となっており、その時間内に電話をかければ問題ないように思うかもしれません。
しかし、勤務時間中でも、始業直後や昼休憩前後、定時前は業務の準備で忙しかったり外出で不在となっていたりする場合があります。そのため、折り返しの電話をかける際は、これらに該当しない時間にかければ、担当者の業務を妨げることなく連絡がとれます。
午前中であれば10時~11時半、午後であれば14時から16時半ごろが適切な時間です。事前に就業時間を確認しておけば、適切な時間が分かります。ただし、電話をかけた際は「お時間をいただいてもよろしいでしょうか」と一言入れ、相手の状況を確認した上で用件を話しましょう。
折り返し電話のNG対応
折り返しの電話をする際のNG対応があるためそれぞれ解説していきます。
1. 誰からの電話の折り返しかを伝えない
採用担当者の方の個人番号からの電話の場合は不要ですが、基本的には会社の番号から連絡があることが一般的です。 電話口の方が電話した本人とは限りませんので、折り返した際は、「◯◯大学◯◯学部の◯◯です。先程◯◯課の◯◯様からお電話をいただきまして、折り返しご連絡いたしました」などとお伝えするようにしましょう。 また、不在着信の日時や、留守番電話に用件が残っている場合は、併せてお伝えするとより丁寧です。
2. 不在だったことに対してお詫(わ)びをしない
折り返しで不在だったことをお詫びせずに話を進めてしまうと不在で電話に出られなかったことに対して「何も思っていない」と思われてしまう恐れがあります。 そのため、「◯◯時ごろにお電話いただいておりましたが、不在にしており(お電話に出られず)申し訳ございません」などとまずはお詫びをするようにしましょう。
3. 折り返しの必要性を確認しない
「そもそも電話をかける必要性があるのか」という場合もあります。電話の用件が、時間変更や場所変更といった一方的な連絡で済むような場合、留守番電話にメッセージが入っている可能性があります。 その確認を怠り折り返しの電話をかけた場合、担当者に「連絡事項を確認できない人」と思われてしまうかもしれません。留守番電話のメッセージも確認し、必要性があるのかを判断した上で電話をかけましょう。 また、電話をかける環境の配慮も怠ってはいけません。折り返しの電話は早くかけることがマナーです。しかし、駅や車通りが多い道路などの場所で電話をかけた場合、声が聞き取りづらく、不快感を与えてしまいます。折り返しの電話をかける際は、周囲の音にも配慮することが大切です。
メールで連絡する
急ぎの用件ではない場合、記録を残しておきたい場合は、電話ではなくメールで連絡しても構いません。早朝や夜といった、電話をかけるには適切ではない時間に電話がかかってきていたことを知った場合も、メールで連絡すれば早くやりとりができます。
メールでの連絡は記録が残るため、「言った言わない」のトラブルや聞き間違いの防止にもつながります。折り返しの電話をかける旨を先にメールで伝えたり、電話で話した内容の確認をメールで送ったりするといった使い方も有効です。
メールで連絡する際のポイント・例文
メールで連絡する際は、電話に出られなかったことの謝罪と自分の名前、用件を伝えましょう。以下のようなメール文を送れば、失礼になりません。
◯◯株式会社 ◯◯様
お世話になっております。 ◯◯大学◯◯学部の◯◯と申します。
本日はお電話に出られず申し訳ございません。 遅い時間での連絡となってしまったため、メールにて失礼いたします。 明日10時ごろに、こちらからお電話いたします。
よろしくお願いいたします。
◯◯大学◯◯学部 氏名
この記事のまとめ
企業の担当者からかかってきた電話に出られない場合、折り返し電話をかける必要があります。その際は、用件から話し始めるのではなく、丁寧なあいさつから話し始めることにより、失礼のない電話になります。家族や友人と会話をするときのような話し方をするのではなく、正しい敬語や話す速さにも注意することが大切です。
また、電話をかける際は、かける時間に配慮する必要があります。始業直後や昼休憩、定時前といった時間は避けましょう。急ぎの用件でなければ、電話ではなくメールで連絡することもひとつです。就活での電話対応に対するマナーやポイントを理解し、失礼のないようにしましょう。
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