コロナ禍の影響で、就活はさらに「早期化」したといわれています。夏・秋インターンに数10社エントリーしたり、OB・OG訪問に精力的に取り組んだりする方も増えたと思いますが、一方で、あまり就活に取り組めていない方も少なくないはず。
就活のゴールは「納得感を持って、その企業に入るという意思決定をすること」なので、「いつ就活を始めたか」で成否が決まるものではありません。それでも、就活を始めるのが遅くなればなるほど、就活にかけられる時間が少なくなることは事実でしょう。
「内定図鑑」第6弾の今回は、大学3年の3月になってようやく就活に本気で向き合えるようになったと話すFさん。
最終的に生命保険の企業に内定した彼女は、就活に取り組める期間が短い中、どのように遅れを取り戻し、選考を突破していったのでしょうか?
<目次>
●安定性があるからこそ、企業の内外でチャレンジできる「生命保険業界」
●本気になったのは大学3年の3月。業界への思いが、自分の重い腰を上げた
●とりあえず、気になる企業を受けてみる──就活のスタートは「小さな一歩」でOK
●「自分ごと化した志望動機」「会話ベースの面接」が、私の選考突破の秘訣
●おわりに
安定性があるからこそ、企業の内外でチャレンジできる「生命保険業界」
──Fさんは生命保険と金融の2つの業界を中心に受けていたそうですね。
Fさん:はい。自己分析の結果、自分は「周りと競い合って成長したいタイプ」ではなく、「周りと協力してチームの目標を達成したいタイプ」だと分かりました。そのため、成果主義や個人主義のイメージがある「外資系コンサル」や「外資系金融」を最初に除きました。
生命保険や金融で働く知り合いの影響もあったのですが、日系企業を中心に業界を絞る中で、自身の「協調性」にマッチする業界がこの2つではないかと気付いたのです。
──最終的に、生命保険の企業に内定承諾をした理由は何でしたか?
Fさん:理由は2つあります。
まずは「企業の安定性」に惹(ひ)かれたためです。私は企業の規模が大きいこともそうですが、企業内に「新しいチャレンジをできる余裕」があるかを重視していました。
具体的には、新規事業に取り組んでいるとか、組織を常に変革しているとかですかね。時代の流れに対して、柔軟に対応できる企業は今後も残っていけるだろうなと思います。
2つ目は「企業の内外でチャレンジできそう」だと感じたためです。私が入社を予定している企業では、従来の生命保険の営業だけでなく「新規事業」や「機関投資家(※)」の業務にも携わるチャンスがあります。語学力を向上させたい方には、企業での活躍を期待して補助金を支援してくれるなど、社員のスキルアップにも肯定的です。
また、生命保険業界は「ワークライフバランス」が充実していることも特徴。プライベートで旅行に行ったり、新しい資格を取るために勉強してみたりと、さまざまなことに取り組める余裕がありそうだなと感じています。
(※)……個人投資家らの拠出した巨額の資金を、有価証券などで運用・管理する法人
本気になったのは大学3年の3月。業界への思いが、自分の重い腰を上げた
──Fさんは就活に本腰を入れたのが大学3年の3月だったそうですね。
Fさん:はい。当時力を入れていた長期インターンを中途半端にしたくなかったり、インターンに参加せずとも、OB・OG訪問をすれば社員の話を聞く機会がとれるだろうと思っていたりしたので、就活を始めたのが周りよりも遅くなりました。
ですが、11月から始まる本選考を通じて内定を獲得した友人がいたことから、自分も就活を始めておけば良かったと後悔しました。また、OB・OG訪問のアポ取りが想定以上に大変だったので、早いうちからインターンに参加して、社員や人事の方とお話しできていればと思うこともありましたね。
──後悔も多かったと思いますが、どのように就活へのモチベーションを高めていったのでしょうか?
Fさん:モチベーションが急に高まったというわけではありません。内々定を出す春の本選考が間近に迫っていたので、そこに照準を合わせて選考対策に取り組まねばと思ったのがきっかけです。就活をあまりできてはいなかったものの、幸い「生命保険業界に進みたい」という思いはハッキリとあったので、それが自分を突き動かしてくれました。
とりあえず、気になる企業を受けてみる──就活のスタートは「小さな一歩」でOK
──短い期間でどのように選考対策に取り組まれたのでしょうか?
Fさん:夏からじっくりと就活を行ってきた学生に比べて、自分は何が遅れているのかを分析しました。エントリーシート(ES)は対策しやすく、大きな差がつくとは思わなかった一方、面接などの経験は差が出るだろうと考えました。
その差を埋めるべく、サークルの先輩や志望企業のOB・OGを捕まえて「この志望動機はどうですか?」と聞いたり、生命保険の企業に勤めていた父親に「生命保険社員の目線で、この学生時代に頑張ったこと(ガクチカ)は響くのか?」などの質問をしたりして、面接力を磨いていきました。
──2023年卒の学生でも、就活にあまり取り組めていない方も少なくないはずです。そのような学生に対して、まず何から取り組むことをおすすめしますか?
Fさん:私自身「本当に自分の行きたい企業を受けなければ」と思っていた時期があり、それがプレッシャーとなって一歩を踏み出せなかったように思います。
最初から自分にぴったり合う企業を見つけるのは大変です。まずは「今気になっている企業」に1〜2社応募してみることをおすすめします。応募さえすれば、ESの提出や面接などを行う必要が出てくるわけで、それに合わせてガクチカを考えたり、面接の練習をしたりするなど、選考対策にも徐々に取り組んでいけるのではないでしょうか。
初めての選考では、うまくいかない点が必ず出てくるはず。その際に、反省点を振り返る・PDCAを回すように意識すると、「今回の修正を生かし、また別の選考に向けて頑張っていきたい」という気持ちになるはずです。
──自分が行きたいと思う企業を見つけるにはどうすべきでしょうか?
Fさん:とにかく「気になる企業に応募する・選考の準備をする・選考にチャレンジする・反省点を考える」というサイクルを続けてください。就活を前に進めることで、出会える企業も増えますし、「自分が行きたい企業ってどこだろう」と考えるきっかけにもなります。
あとは、サークルの先輩や自分の親など、身近な社会人に仕事の話を聞くのも良いですね。実際に働いている方の話を聞くことで、自分はその業界に興味を持つのか・持たないのかが分かるかなと思います。
例えば、サークルの先輩と話して「マスコミはめちゃくちゃ忙しい」という話を聞いたとしましょう。自分には合わないなという感覚があるならば、その理由を深掘ってみてください。
私自身は「忙しすぎるのは無理だな」という感覚がありました。その理由を深掘ると「人生は仕事だけじゃない」「仕事も健康もどっちも大事にしたい」という価値観があることが分かりました。
「自分ごと化した志望動機」「会話ベースの面接」が、私の選考突破の秘訣
──就活を振り返り、これをやって良かったと思うことはありますか?
Fさん:2つあります。
1つ目は「志望動機を表面的なものにせず、なるべく自分ごと化する」ように意識したことです。表面的な志望動機とは、生命保険でいえば「多くの人の役に立ちたい」というような、深掘りが浅く、自分の経験と結びつけられていないものだと考えます。
私の場合は、一度考えた志望動機に3回ほどWhy(なぜ)を繰り返して問い直していました。そうして、志望動機に「自分のどういう思いによるものなのか」「なぜその思いが生まれたのか」といったパーソナルな感情を含ませられると良いですね。
面接官は多くの就活生の志望動機を聞いています。志望動機はインパクトが全てだとはいいませんが、自分にしか話せないことを志望動機にできると「この人を採りたい!」と思ってもらえるのではないかと思います。
──ありがとうございます。もう1つは何でしょうか?
2つ目は「面接での受け答えを自然な会話にする」ように意識したことです。面接で聞かれたことに単純に答えるだけでなく、相手の表情を見て何か物足りなそうであれば、もう1つエピソードを増やしてみる。逆質問の時間でなくとも気になった点があれば、その場で質問をしてみるという感じでしょうか。
面接が会話ベースになると、暗記したガクチカを形式的に話すだけではやっていけません。ですが、柔軟に会話に対応することで、本質や本音が現れやすくなるので、自分らしさを理解してもらうチャンスも生まれると思います。
ただ、これを本番の面接でいきなりやろうとしても、緊張して会話を広げることは難しいでしょう。まずはOB・OG訪問などで、時間をしっかりと確保し、聞きたいことを聞くだけでなく、社会人の方と話す訓練をすると良さそうです。
おわりに
常にアクセル全開で就活に向き合えれば良いのですが、ゼミやサークルの活動が忙しく時間が割けなかったり、モチベーションがイマイチ上がらなかったりすることもあるでしょう。
就活を始めるきっかけを見いだせず、大学3年の3月まで重い腰を上げられなかったFさん。それでも「生命保険業界に進みたいという思い」を持てていたため、本選考の選考スケジュールに合わせて動き出すことができました。
「まずは『今気になっている企業』を1〜2社応募してみる」「身近な社会人に仕事の話を聞いてみる」。
「就活」に対して不安を抱き、尻込みしてしまう理由の1つに「何をすれば良いか分からない」というものがあります。しかし、その一つひとつの行動は小さな一歩でできるものも多いです。いつか大きな一歩を踏み出すためにも、小さな一歩を積み重ねることが大切なのかもしれません。
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