──コネ採用
この言葉にどんな印象を受けますか?
「コネ」はネガティブな文脈で使われることが多いですが、採用につながるコネクションを作ることもひとつのスキル。通常選考では測られない能力が測られるというだけで、卑怯な手ではありません。むしろ、ビジネスの世界ではこれこそ正攻法。
就活をはじめる前にこれだけは知っておいていただきたい! ということで、今日はコネ就活の実態を描いた、大熊将八氏の記事をお届けします。
突然ですが、「コネ採用」を知っていますか? 意思決定権を持っている人と懇意になって、ひいきしてもらって内定を得ることを指します。
僕の身の回りだけでも、こういう事例がありました。
・当時地方の大学に通っていたけれど、どうしても某金融系の企業に入りたかったため、選考も始まっていないのにアポなしで上京して人事部長の下に押し掛け、その会社に入りトップ営業マンになった人
・とあるマスコミの社員と知り合いになり、インターンとも通常選考とも違う選考ルートを紹介され、早期に内定をもらった人
・メーカーの幹部と、研究室の活動を通じて知り合い、懇意にしてもらって、ほかは全社落ちたけどその会社にだけは内定した人
2018年卒の就活も本格化し始め、インターンシップやOB/OG訪問に奔走している人、じっくり落ち着いて企業分析を進めている人、十人十色だと思いますが、僕が就活生の皆さんに一番オススメするのは「今のうちにコネをつくること」です。
申し遅れました。僕は東京大学経済学部の学生で、「進め!! 東大ブラック企業探偵団」という企業分析小説の著者の大熊将八と申します。普段は、東大前近くのオフィスで就活生のキャリア相談に乗っていて、相談に来てくれた人には財務諸表の読み方をはじめとする、企業分析のスキルも教えていますが、それ以上に「コネづくりが重要」だと伝えています。
コネと聞くと、なんとなく汚いイメージを抱くかもしれません。また、「大手企業の役員の子息である」といったように生得的に決まっているものをイメージして、「どうせ自分には縁がない」と思うかもしれません。
しかし、その認識は間違っています。上に挙げた事例を思い出していただいても、もともとコネがあったわけではなく、全部努力によって獲得されたものです。
そう、コネは、正しいやり方でつくれるものなのです。
よっぽど自分に自信がある人以外はコネづくりすべき
そもそもコネがないことはリスクです。
「ES→筆記→面接→(インターン)→内定」という万人向けのフローを企業も用意してくれますが、エントリーシート(ES)や面接で必ず聞かれ、選考通過/落選の分け目となる「大学時代に頑張ってきたこと」で他者と明確に差別化するのは極めて困難です。
途上国にボランティア行ったとか、世界一周したとか、体育会で全国大会出たとか、サークルの代表だったとか。よくよく考えると本当にやってのけたならどれもすごいんですが、似たようなことをしている学生は大量におり、何もやってこなかった学生も真似たり誇張したりするので、差別化は困難です。
そのため、企業側は無理やり差をつけようと、「あなたをモノに例えると何ですか?」とか、脈絡のない質問も飛ばしてきます。しかも、最初の段階では人事でもなんでもない面接初心者が担当していることも。
このような流れに素直に乗っかるのは、バカバカしいだけではなく、怖くないですか?
だから、正々堂々とレッドオーシャン(※1)に飛び込んでも勝てる自信がある人以外には、エラい人と仲良くなって取り立ててもらうのを目指す、という「ゲリラ戦」を戦うことをオススメします。
ドワンゴの川上会長の息子についてもこう語っています。
大量にエントリーして1つも受からなかったら、説教をしますね。「なぜ早く俺に相談しないのか」と。入りたい会社があるなら、父親である自分にそこにツテがないかを確認するのが頭のいいやり方だと思います。大量にエントリーするなんて、何を勘違いしているのか……。自分の力を過信してますよね(苦笑)。
正々堂々と闘い、玉砕する弱肉強食の社会が「美しい」とは、僕は思いません。
※引用:WEDGE Infinity「「受験料徴収」の真意 大量の廃人を生み出す「就活」」
(※1)レッドオーシャン……競争の激しい既存市場のこと
コネをつくる簡単な方法
では、どうやってコネをつくるのか? それは一にも二も、「会いに行くこと」です。
自分の興味がある会社の人事トップもしくは経営層の行動パターンを予想し、その人がいそうなバー・講演会・旅行先・ジム・ゴルフ場などに行ってみるといいでしょう。実は、「エラい人」の多くは固まって仲間内でつるんでいるので、1人の行動パターンが読めたら芋づる式にそれと同列の人々と知り合えるかもしれません。
「学生である」ということはある種の特権で、そうやって会いに行けばエラい人でもほぼ確実にしゃべってくれますし、「行動力・気概があるなあ」と見込んでもらえます。特に日系企業で高い地位を占めているのは主に50代以降のおじさん。ご子息・ご息女以外に普段20代の若者と接する機会はそうそうないでしょう。若くて元気なやつがわざわざ工夫して自分に会いに来た、というだけで気に入ってもらえる可能性が高いです。
大事なのは、そのエラいおじさんにとってあなたの比較対象となる人物が極めて少ないであろうことです。人間誰しも、比べようがないものは過大評価します。これは、大量の就活生グループとなんどもなんども比較されて消耗する就活の正規ルートとは真逆です。
最近ブームの田中角栄もかつてこういう名言を残しています
どえらい大仕事を果たすには、大将の懐に飛び込んで、そのキンタマを握ることだ。そうすれば取り巻きどもが一目も二目も置く。足軽ばかりで相手にしていれば、それで一生が終わる。
ちなみに、自分に特別な血縁・能力的な強みがなかったとしても心配する必要はありません。その代わりに、壮大かつ具体的な夢をきちんと持って、簡潔に語れるようにしましょう。
例えば「東京オリンピックの開会式に関わりたい」とか。
そうすると、エラいおじさんは「どうやってその夢を叶えるの?」と聞いてくると思います。そこで「思いはあるけど、まだ実力がない。情報も不足しててどうやっていいかわからない。だから、助けてください!」と素直に言いましょう。野心を持っている見上げた若者が自分に頭を下げてくる。エラい人の心を打たないわけがありません。
ただし、生き馬の目を抜くような厳しい人間関係を乗り越えてきたエラいおじさんたちは、適当に繕った夢はあっさりと見破ってくるので、注意しましょう。ここが最大の難関といえます。自分にまだそこまでの行動力がなければ、周りに頼りましょう。自分の知り合いのなかで最もコネのありそうな人に相談し、その人に紹介してもらった人からまた別の人を紹介してもらい……と、どんどん辿っていくといいでしょう。
そう、コネづくりをする過程で、あなたはきっと他人に真摯をお願いすることの大切さを身をもって知ることになるでしょう。
コネづくりは汚いことではない。むしろ、最高のトレーニング
このように、「コネづくり」は汚いことではなく、その過程で、行動力が身につき・真摯に他人にお願いすることを学び・他人と差別化する方法を身をもって知ることができる、最高のトレーニングなのです。ぜひこれを読んだみなさんは、今日からコネづくりに勤しみ、自分を磨いて、目当ての企業から内定を勝ち取りましょう。
コネは正攻法。そして、最高のトレーニング方法。そのことがお分かりになったでしょうか。
ぜひ、コネも手段の一つと考えて就活に励んでください!
▼大熊氏のこちらの記事もオススメです
・「大学時代に頑張れたことはない」でもいいー自己分析とは自己肯定
▼大熊将八氏の著書はこちら
▼ブラック企業探偵の就活塾:記事一覧▼
【第1回:コネ作り】就活はコネがすべて!?ーコネ就活の実態編ー
【第2回:自己分析】「大学時代に頑張れたことはない」でもいいー自己分析とは自己肯定であるー
【第3回:企業分析】「3年先を読む企業分析」ができる、簡単な方法
※こちらは2016年6月に初掲載された記事の再掲です