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3月1日。この日を「就活解禁」と本気で捉える人は何人いるだろうか。
2022年卒の就活生は、新型コロナウイルスの影響を不安視して早期から動き出していた。説明会にインターン、企業によっては本選考にも参加済み、という人も多い。就活は解禁前から本格化していた。
だからこそ、このタイミングで発表する東大・京大就活人気ランキングは「不安を抱えながら就活をしてきた学生たちの中間報告」と捉えるべきだろう。そうでなければ、この結果は説明がつかないのだから。
※<調査詳細>東京大学・京都大学、または同大学院に所属し、2022年度に卒業予定のONE CAREER会員6,744名による、企業別のお気に入り登録数(複数選択可)をもとに作成。調査主体:株式会社ワンキャリア/集計時期: 2021年2月19日
<目次>
●コロナで加速? 「前期・後期のW受験」による外資コンサルの順位変動
●ついにデベロッパーがTOP10入り。三井物産は2年連続の首位
●急上昇した資生堂、味の素、サントリー、ソニーの2つの共通点
●この1年で注目度が高まったベンチャー企業は?
●ランキングは、時代の「瞬間値」でしかない
コロナで加速? 「前期・後期のW受験」による外資コンサルの順位変動
ランクダウンが目立ったのが、外資系コンサルティングファームだ。中でも戦略系として人気の高いMBB(マッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストン コンサルティング グループ、ベイン・アンド・カンパニー)が軒並み順位を下げている。
※<調査詳細>東京大学・京都大学、または同大学院に所属し、2022年度に卒業予定のONE CAREER会員6,744名による、企業別のお気に入り登録数(複数選択可)をもとに作成。調査主体:株式会社ワンキャリア/集計時期: 2021年2月19日
だが、これはコンサルの人気が低下したことを示すわけではない。実際に昨年6月公開の人気ランキングでは、コンサルが上位を独占していた。そして、今回の下落の理由は、6月ランキングでも紹介した東大・京大生のコメントにヒントがある。
「2020年はオリンピックの影響で就活早期化が早くから叫ばれる中、コロナが起き、『暇』かつ『就活不安かも』と考える学生が増えたと思う。従来なら6月は『意欲ある学生』が就活をする時期なのだろうが、2020年は『この会社インターン公開しているし、エントリーするか』と考える学生が増えているのでは」
ここから9カ月がたち、もうコンサルはエントリーを終え、一度スコープから外して別の業界を見る段階に入った。それがランクダウンの要因だろう。大学受験に例えるなら「外資コンサル=前期日程」、「日系大手=後期日程」のようなものだ(就活を受験に例えることに異論はあるだろうが、ここはあくまでもスケジュール的な例えと思っていただければ幸いだ)。
また、就職活動中の学生からは次のような声も出た。
「コンサルで内定をもらった友人でも、就活を続けている人はいる。コンサルよりも行きたい会社があるというよりは『他の業界を見ないで就活を終えると後悔しそう』という理由が大きいと思う。コロナの影響で対面で社会人と会う機会も減ったので、『人柄や雰囲気に強く惹かれた』というような志望動機は持ちにくいことも影響していると思う」
もともと、多くのコンサルは早期に選考を終えるため、これまでも3月のランキングでは日系の人気企業がコンサルよりも上位に入りやすい傾向にあった。今年は、新型コロナウイルスの影響で将来に不安を抱えながら就活をする学生も多く、すでにコンサルからの内定を得ていたとしても「本当にこのまま将来を決めていいのだろうか」と保留にしながら他社の選考を受けるケースも目立っているようだ。早期化と同時に就活の「長期化」も起きたことで、時期による志望企業の入れ替わりがより激しくなった結果ともみることができるだろう。
ついにデベロッパーがTOP10入り。三井物産は2年連続の首位
では、順位が高かった業界はどこなのか。まずは総合商社。新型コロナウイルスの影響が業績に打撃を与えた面もあったが、堅調な人気ぶりを見せた。その下支えにつながったとみられるのがインターン。TOP10常連の三井物産、三菱商事をみると、コロナ禍での挑戦が目立つ。
三菱商事は最長3カ月のインターン『MC Academia』を、オンラインと対面の併用で実施する。社員と共に新規事業を策定できる経験を提供し、今の時代に合った魅力付けを行っている。
インターンなら、三井物産も負けていない。人工知能分野で最先端を走るAIベンチャー「Preferred Networks(プリファードネットワークス)」の協力で、DX(デジタルトランスフォーメーション)の新規事業を立案・推進するインターンを初めて実施する。他にも修士・博士課程の学生に向けたインターンも企画するなど、学生のニーズにきめ細かく対応したプログラムを用意した。
三井物産は2年連続の首位となった。昨年に首位になって以降も「オワハラ相談ホットライン」の設置など学生の不安に寄り添う取り組みも続けており、学生と向き合う企業イメージが定着した結果だろう。
新たにTOP10に入ったのが三井不動産、三菱地所。興味深いのが、他のデベロッパーも大きく順位をあげている点だ。
※<調査詳細>東京大学・京都大学、または同大学院に所属し、2022年度に卒業予定のONE CAREER会員6,744名による、企業別のお気に入り登録数(複数選択可)をもとに作成。調査主体:株式会社ワンキャリア/集計時期: 2021年2月19日デベロッパーについては昨年6月のランキングでも触れたが、さらに人気に火がついた格好だ。東大・京大生からも「幼い頃に東京駅などの大規模な再開発を見ていたし、近年は渋谷などの再開発も進んでいて、デベロッパーの仕事に憧れを抱きやすい」との声も挙がっているので、その理由も想像が付く。
コロナ禍でも学生からの支持を得続けている総合商社と、急上昇を見せたデベロッパー。日系大手の人気業界は、この2つが双璧をなす時代となった。
今回、注目したいのが「デベロッパーと商社、どちらも志望する学生はどれくらいいるのか」という点だ。単純に考えれば、デベロッパーの人気上昇に伴って、2つの人気業界を志望する学生の割合も増えそうなところだが、実際はどうなのか。それぞれの業界で人気トップだった三井物産と三井不動産を例に見てみよう。
三井物産と三井不動産の両方をお気に入りに登録している東大・京大生の割合
・2020年卒:25%
・2021年卒:22%
・2022年卒:27%(※2社のうちどちらかでもお気に入りに登録している東大・京大生を分母として計算。2022卒年度の数値を2021年2月23日時点で算出し、前年、前々年の同期と比較。調査主体:株式会社ワンキャリア)
結論から言うと「三井物産(もしくは三井不動産)をお気に入りにしたから、こっちもお気に入りにしておこう」という学生が極端に増えたわけではない。この数値を三井物産と他の総合商社とで算出すると、三井不動産の場合を大きく上回る。「商社との併願」ではなく「本命」としてデベロッパーを志望する学生も多いと推測できるだろう。
他社からの内定を保留にしながら就活を続ける学生なら「後悔せずに就活を終えるため、志望度が高い企業・業界に絞りたい」と考えるのも自然な発想だ。「3月以降は本命だけを受けたい」というのも、今年の就活の傾向かもしれない。
急上昇した資生堂、味の素、サントリー、ソニーの2つの共通点
今回、上昇が目立ったもう1つの業界がメーカーだ。中でも、大幅に順位を上げてTOP20入りした資生堂(8位)、味の素(15位)、サントリーグループ(16位、以下サントリー)、ソニー(18位)に注目したい。この企業には2つの共通点がある。
※<調査詳細>東京大学・京都大学、または同大学院に所属し、2022年度に卒業予定のONE CAREER会員6,744名による、2021年2月19日時点の企業別のお気に入り登録数(複数選択可)をもとに作成。前年、前々年の同期の順位からの推移を追った。調査主体:株式会社ワンキャリア
【企業研究】SONY(ソニー) ~驚異の決算 過去最高益!鬼滅の刃で見つけた勝算とは?~(動画に遷移します)
外出自粛の影響で化粧品市場は大きく冷え込んだが、資生堂はデジタル領域に投資し、自分たちの存在意義を問い直す姿勢を積極的に発信。コロナ禍を逆手に取り、さらなるランクアップに成功した。
もう1つの特徴が、4社とも募集時に職種やコースごとにエントリーを受け付けている点だ。コースをどこまで細かく分けているかは企業によって異なるが、「入社後のミスマッチが起きないようにしたい」という姿勢は学生にも伝わるだろう。職種別採用に取り組んでいるかは、「配属リスク」を気にする学生にとっては重要なポイントになっているようだ。
この1年で注目度が高まったベンチャー企業は?
最後にベンチャー企業も取り上げたい。外資系企業と同様に早期から選考を行っていることもあり、やや順位を下げた企業が目立ったが、その中でも注目度を高めた企業がある。新型コロナウイルスの影響で対面での活動が制限される中、積極的な情報発信やクチコミで学生からの認知度を高めた企業ともいえる。
※<調査詳細>東京大学・京都大学、または同大学院に所属し、2022年度に卒業予定のONE CAREER会員6,744名による、企業別のお気に入り登録数(複数選択可)をもとに作成。調査主体:株式会社ワンキャリア/集計時期: 2021年2月19日
中でも急浮上したのがグッドパッチ(Goodpatch)だ。デザインを通じて顧客の課題解決に取り組む同社は、昨年に東証マザーズに上場を果たしてメディアからの注目が集まった一方で、代表の土屋尚史氏はもちろん、各メンバーがSNSやnoteで自社のカルチャーや事業上の強みを発信し、認知度が向上した。
また、ワンキャリアのクチコミを見ると、デザインに関心のある学生以外からも支持を得たことが読み取れる。
「ベンチャー企業らしく新しいことを積極的に行っている印象を強く受けた。クライアントに大企業の経営層や事業責任者もいるので、そのような人たちと対等に意見をぶつけ合える点は、自らが成長するために魅力的な環境であると感じる」
経営者、チーム、メディアの三方向から積極的な情報発信を行い、「若手から成長できる企業」というイメージを学生が持てたことが、今回の躍進につながったといえそうだ。
ランキングは、時代の「瞬間値」でしかない
ここまでランキングの傾向をお伝えしてきたが、忘れてはならないのは「ランキングはあくまでもその時代の『瞬間値』を表したものでしかない」ということだ。毎年の変化を追い続けることで、学生に真摯(しんし)に向かい合い、順位を上げた企業に光を当てることはできるが、その会社に入社して幸せになれるかはその人次第でもある。「ランキングは万能ではない」ということを、発表する私たちが忘れてはいけない。
ワンキャリアでは3月に、さまざまな社会人に「就活生になったら入りたい企業」について聞く特集を公開する予定だ。ランキング以外の企業選びの視点を提供し、学生が中長期的にキャリアを築けるように、これからも記事を届けていく。
【特集:転生就活】ランキングでは分からない、社会人が選ぶ「新卒で入りたい企業」
(Photo:MIKHAIL GRACHIKOV , Lipik Stock Media/Shutterstock.com)