こんにちは、ワンキャリ編集部です。「総合商社特集 〜2016冬〜」の特別企画として、「総合商社 人事インタビュー」を連続掲載します。今回は転職口コミサイト Vorkersでの「社員による会社評価ランキング」で総合商社中No.1のスコアを記録(※1)し「人間力」を強みとする住友商事の採用チーム長、藤さんへインタビューしてきました。
(※1)2016年2月1日時点
<目次>
●「人で選びました」が多い住友商事、3つの秘訣
●誠実さ、謙虚さから生まれる「個の発揮」
●半世紀以上続く「指導員制度」の魅力
●5大商社で最後発だからこそ、「熱心な素人は玄人に優る」を重んずる
●「10年間に3つの部署を経験、その内1つは海外」という計画的育成ローテーション
●ダイバーシティは「当たり前」
●謙虚さは、住友商事の“必要条件”
●就活対策で海外経験を積むくらいなら、学生のときにしかできない経験をしてほしい
「人で選びました」が多い住友商事、3つの秘訣
──「人で選びました」「商社の中で最も人柄が優れている」と学生が口々に伝えるほど、魅力的な社員さんが多い住友商事ですが、ずばりその秘訣をお教えいただけますでしょうか?
藤さん:「秘訣」というほどのものか分かりませんが、当社には主に次の3つのポイントが特徴としてあるかと思います。
- 誠実さ、謙虚さを大切にする社風があること
- 教え育てる文化があること
- 多様な経験を積ませる制度があること
誠実さ、謙虚さから生まれる「個の発揮」
──1つ目の「誠実さ、謙虚さを大切にする社風」について、詳しくお教えいただけますか?
藤さん:当社には事業を行ううえで、なによりもまず「信用を重んじる」という企業理念がありますが、相手の信頼を裏切らないこと、社会の信頼に応えることを社員1人1人が実践する中で、謙虚さや誠実さが身についているのだと思います。学生の皆さんと会うときにもその姿勢が自然と出ているのではないでしょうか。
──謙虚な気持ちこそが仕事の基本、ということでしょうか。
藤さん:仕事を進めるうえでは、自分の意見を主張すると同時に、相手を受け入れる気持ちがなくてはなりません。自分の意見を相手に認めさせることばかり考えるのではなく、目標に向かって意見をぶつけあい、そのなかから最適なものを生み出す。そういった相乗効果を発揮するためには信頼関係の構築が前提となるため、やはり謙虚さが必要です。相手を認めるからこそ、自分の主張も相手に受け入れられる。真の意味での「個の発揮」とはそういった信頼関係なくしてはありえません。このことを当社の社員は、先輩社員から指導を受け、成功も失敗も繰り返しながら学んでいきます。
私自身、営業に異動したときに「謙虚さだけはいつまでも忘れるな」と最初に言われたことは、今でも忘れません。
半世紀以上続く「指導員制度」の魅力
──2つ目の「教え育てる文化」についても、詳しくお教えいただけますでしょうか?
藤さん: 当社では半世紀以上続く「指導員制度」というものがあり、入社1年目の社員は先輩の隣の席で仕事をしていきます。先輩は毎日仕事の考え方、進め方をフィードバックし1人前の商社パーソンになれるよう、手取り足取り育てていきます。といっても甘やかして何でも教えるということではなく、1年目から意見を求め、考える力を鍛えていきます。商社のビジネスでは自分がこうしたい、ああしたいという思いや意志を実現していくことが大事なので、1年目から考える癖をつけることを徹底します。「脳に汗かくくらい考えたか」と私も言われていました。
そうやって鍛えられ、自分の意見を持ち、先輩の意見とすり合わせていくことで、多様な考え方が身についたと思います。
「制度は一年だが、その関係は一生」と言われるぐらい指導員制度は当社に根付いたものになっていて、「指導員には足を向けて眠れない」と多くの社員が言っています(笑)。
5大商社で最後発だからこそ、「熱心な素人は玄人に優る」を重んずる
──1年目から自分の考えを持つことが当たり前ということですね。
藤さん:初代社長の言葉に、「熱心な素人は玄人に優る」という当社を象徴する言葉があります。もともと、当社は総合商社のなかで最後発の企業であり、ノウハウがなくても、粘り強く、追いつけ追い越せと頑張ってきました。年次、立場関係なく、素人集団としてまさに一丸となり、必死に事業に取り組まなければならない環境でした。今でも1年目社員にも仕事を任せ、自分で考えさせ、成果を求めます。
裏を返せば、入社1年目であっても「熱心な素人」にはチャンスが与えられる会社だと思います。
「10年間に3つの部署を経験、その内1つは海外」という計画的育成ローテーション
──3つ目の「多様な経験を積ませる制度」についてお教えいただけますか?
藤さん:当社では、育成方針の1つのゴールとして「経営人材の育成」を目指しています。そのためには社員がさまざまな経験を積み、大局的なものの見方を得ることが必要となります。
人材育成のガイドラインでも、「入社後10年間で3つの部署を経験、その内1つは海外での駐在」というものを設けています。入社後3年~4年で同期の誰かが海外駐在をはじめ、10年目までに8割程度が海外経験を積みます。異なる言語、異なる商習慣のなかで多くの厳しい経験をし、自身の引き出しを増やしていきます。
多様な経験を積み、商社パーソンとしても、ひとりの人としても磨かれていくという側面があると思います。
ダイバーシティは「当たり前」
──商社でもダイバーシティに注力されている住友商事ですが、独自のお取り組みはございますか?
藤さん:いろんな考えや価値観を持つ人々がいることが真のダイバーシティだと考えています。先程の話のとおり、社員が多様な経験を積むことが大切だと思います。また、多様な人々が働ける環境づくりも大切だと考えています。
ダイバーシティという意味では、よく女性の活躍ということが挙げられますが、当社では、女性が男性と同じように働くのは「当たり前」という考えです。そのためには、制度を整備する必要がありますが、最近では子女帯同制度というものがあります。女性社員が海外駐在に子供を連れていきやすいように、駐在先でさまざまなサポートを受けられる制度です。実際に、その制度を利用して、旦那さんを日本において海外に駐在する女性社員もいます。
──住友商事では女性の海外駐在も珍しくないということでしょうか?
藤さん:基幹職(総合職)採用の約20%は女性の内定者ですが、海外へはトレーニー(研修員)や駐在員として派遣される女性も多くいます。タンザニアのダルエスサラームやボリビアのサンクリストバル鉱山などにも女性を複数派遣しています。
──そのほか、御社独自の具体的なお取り組みはございますか?
藤さん:ワークライフバランスの推進ですね。「メリハリのある働き方」を通じて、生産性を向上させることに取り組んでいます。1つの例として、今年から、「Yes, you休(イエス、ユーキュー)」というプログラムを始め、「年間12日以上有休を取得する」ことを推進しています。働く時は働き、休む時は休む。メリハリをつけて働くというものです。
謙虚さは、住友商事の“必要条件”
──住友商事の採用において、学生のどういったところを見ていらっしゃいますか?
藤さん:「信用を作る謙虚さ」が1つ大切かと思います。当社に入社すれば海外の人や文化の多様性を理解し、主体的に行動することが求められます。その際には、これまでにお話ししたとおり、相手の立場に立つことができるか、相手を受け入れることができるか、という点が非常に大切になります。優秀であっても、傲慢さが見て取れる人、上から目線でしかものごとを考えられない人は、当社には合わないのではないかと感じています。
一方で、謙虚さ、誠実さがあれば誰でもよいというわけではなく、例えば好奇心を持ってものごとに取り組めるか、主体性を発揮し自らの考えを周囲に働きかけることができるか、といったさまざまなポイントも見ていきます。そういう意味で謙虚さは、当社が求める“必要条件”といえるかもしれません。
就活対策で海外経験を積むくらいなら、学生のときにしかできない経験をしてほしい
──その他、海外経験についても採用要件として求める商社も多いと思いますが、住友商事ではいかがでしょうか?
藤さん:海外経験があるかないかは採用要件には全く関係ないですね。英語もできることに越したことはないですが、大事なことは、経験を通じて、何を得て、どういう成長を遂げたかという点です。就活対策で海外経験を積むくらいなら、学生のときにしかできない経験をしてほしい。そのなかで得たことが、会社に入ってから役に立つことの方が多いと思います。経験するといっても、ただ漫然と経験を積むということではなく、しっかり目標を立てて、目標を達成するために何をすべきかを考え、行動をしていくことが大事だと思います。そして、それを次に生かすことをしてほしいです。
自分の目標に向かってPDCA(※2)を回して、その経験を自分のものにしている人は「この学生は、会社に入ってから成長できそうだ」と期待ができます。
(※2)PDCA:事業を進める上で欠かせない Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のプロセス。計画を実行し、評価してから改善することで継続的に改善を図る。
──最後に、御社をこれから受ける学生へのメッセージをお願いしいたします。
藤さん:当社の面接では、人事から現場の面接官に「こういうところを見てください」と指示はせず、「住友商事で活躍できる人材を採ってください」と伝えています。それで最終的な内定者をみると、表面的な性格はさまざまですが、押し並べて本質的な部分がまじめな人が多いように感じます。
当社にとって大事なものを理解している社員だからこそ、その採用像にブレがないんだと思います。面接はお互いのマッチングの場です。是非、面接では素の自分を見せるようにしてもらいたいと思います。面接の場だけでなく、当社の多くの社員と会って話を聞いて、自分に合うか、共感できるところがあるか、自分が活躍・成長できる場があるか、確かめてほしいと思います。これから大事な時期を迎えますが、自分を信じて、地に足ついた就職活動をしてください。
藤さんは人材像のキーワードである「謙虚さ」を体現したかのように、インタビュー中も細やかな気遣いをしてくださりました。実践で理念を示す、その誠実さが「住友商事の今」を支えていることが学べました。