こんにちは、ワンキャリ編集部です。
国内の労働市場が「人材難」「売り手市場」と叫ばれて久しい昨今、人材業界の与えるインパクトと社会的責任はより大きくなりつつあります。今回はそんな人材業界の中でも独自のビジネスモデルで成長を続け、日経新聞「伸びる会社 MIDDLE200」で1位に輝くUTグループを取材しました。コンサルティングファーム、ネット証券、メガベンチャーを経てUTグループに参画した異色の経歴をもつ上席執行役員の桑原さんに、人材業界の在り方から「伸びるビジネス」の展望までお話を伺いました。
2000万人のキャリアを変える。非正規雇用の社会的課題を解消するUTグループ
──桑原さん、今回はどうぞよろしくお願いします。UTグループはこのたび幹部候補生採用を行うとのことですが、まずは現在に至るまで、どのように飛躍を遂げてきたか? という論点から伺いたいと思います。成長の背景にあるビジネスモデルについて伺えますか。
桑原: UTグループによる「工程一括請負」は、企業から製造工程全体を受託し、そこに自社で育成した労働者を派遣するビジネスモデルです。
私たちの主力ビジネスは製造業における労働者派遣とエンジニア派遣事業ですが、これらの領域は、労働者にとっての課題が山積みです。従来の派遣ビジネスだと、特定の作業フローに部分最適で人材をあてがうため、現時点のスキルだけを評価した低い労働条件になってしまったり、いわゆる「派遣切り」と呼ばれる雇用不安が避けられませんでした。
──「人材派遣」と聞いて抵抗を感じる学生さんには、こうした課題点にマイナスイメージを持つ方が多いかもしれませんね。UTグループの「工程一括請負」は、どのようにその課題を解消しているのですか。
桑原:非正規雇用を余儀なくされていた方々をUTグループの正社員として雇用し、派遣前のキャリア開発から就業まで包括的にサポートしています。基本的なコミュニケーション教育にはじまり、就業に向けた技能のレクチャーや、キャリアコーチングを、各地方の方々に実施しています。また、手に職をつけることで安定して就業できるよう、エンジニアスキルを身につける支援もしています。未経験者からエンジニアになるための支援を「One UT」、そしてUTグループを卒業し、大手企業の正社員として転籍するまでの支援を「Next UT」と名付けて実施しています。
桑原 壽己(くわはら かずみ):UTグループ株式会社 上席執行役員
コンサルティングファーム、楽天証券、グリー(GREE)と異色の経歴を歩み、現在はUTグループ事業開発部門ヘッドを務める。
※このプロフィールは2018年10月時点のものです
──このようなビジネスモデルの背景には、どのような思いや考えがあったのでしょうか?
桑原: UTグループのミッションは、国内に2000万人ともいわれる非正規労働者を取り巻く社会的課題を解決することです。労働人口が減少し、人材の希少価値が高まっている現代において、ビジネスで中長期的に成功を収めるためには、人材活用の視点が不可欠です。求職者の幸福感を高め、彼らの潜在的なニーズを掘り起こしたり、作り出す必要があると考えています。
「アービトラージ系」のビジネスに未来はない。真っ当でいることが一番の勝ち筋
──社会的課題をミッションに掲げる組織は多々ありますが、そうした課題解決における事業のマネタイズは、往々にして成功していない印象を持つ学生もいるのではないでしょうか。その中でUTグループが日経新聞「伸びる会社 MIDDLE200」で1位に輝くなど、ビジネス面の成功を収めている理由を教えてください。
桑原:こうした質問が出てくるということは、一部の学生さんは「社会的課題を解決すること=単なるキレイごと」と感じているのかもしれません。これは社会の在り方において、無意識からくる誤認です。そもそも資本主義の本質は、付加価値のあるサービスにお金が支払われることです。経済活動は付加価値の流れによって生まれます。それによって現金は流れ、ビジネスが成立するのです。UTグループは、労働者が幸福に働くことに付加価値をつける仕事をしています。研究を重ね、サービス設計を仕組み化し、各企業に届けることで、着実にマネタイズをしているのです。
──その結果が、過去最高を更新した売上高というわけですね。とはいえ、一見すると、人材をストックではなくフローとして扱い、あっせんのマージンを得る従来の派遣ビジネスの方が事業効率は高いように感じますが……。
桑原:情報の格差やゆがみを利用してキャッシュをくすねる「アービトラージ系」のビジネスは、遅かれ早かれ立ち行かなくなる時代に突入しています。人々が求めている、真っ当な機能を提供することが勝ち筋になると思いますね。
これからの働き方は「キャリアパス」ではなく「キャリアジャーニー」
──大変興味深いお言葉です。もう一つ、少し意地悪な質問を。UTグループの売上のうち、74%を占めるのは製造業派遣です。会社全体が日本のものづくり産業の衰退とともに縮小していく懸念はありませんか?
桑原:前提として、あらゆる事業において、一つのサービスモデルが永遠に支持され続けることはありえません。もしUTグループの現行のビジネスが縮小するフェーズになった時には、必ず新しい課題が見えているはずです。その問題を解決するビジネスを自分たちで作り出すべきだと考えています。
──ありがとうございます。桑原さんは新規事業を担当なさっているとのこと。具体例の一つとして、現在の展望を教えていただけますか?
桑原:労働のインフラとなる、新しいプラットフォームを作ることです。求職者の幸せに重きを置くためにも、中長期な視点での行動が新規事業には求められます。人生設計までを包括的にカバーする規模感のサービスが必要だと考えます。
──プラットフォームの構想について、詳しく教えてください。
桑原:エンジニアのキャリアに、ロールモデルを提供したいと思っています。エンジニアのキャリアは、労働環境や必要なスキルセットが目まぐるしく移り変わるため、カオス化しているのが現状です。UTグループでは、「どういうキャリアを経て、業務経験を積んでいけば成長できるのか」の目指す姿を定義し、そこに至るための教育体制や業務体験をデザインしていこうと考えています。このモデル構築を、エンジニアに限らず、これからホットになっていく分野の職種に横展開していくことで、UTグループの事業は中長期的に更新されていきます。
──成長分野において、キャリアのロールモデルとその道筋を整えていくと。目標がはっきりすることで、現場で働く労働者自身のモチベーションアップにもつながりそうですね。
桑原:はい。多様化していく社会では、働くことは「ジャーニー(旅)」に例えられます。つまり、単純な線形である「キャリアパス」ではなく、「キャリアジャーニー」時代に突入しているのです。そんな時代に、求職者にワクワクしてもらえるようなサービスをUTグループは提供していく必要があります。
「コンサルからの転職じゃダメ?」学生の疑問を一刀両断
──コンサルや、IT業界での経営企画職など、就活生からするとまぶしい経歴を持つ桑原さん。なぜ40代からUTグループに参画しようと思ったのでしょうか?
桑原:3つの理由がありました。(1)これまで培ってきた自身の能力や成果を高く発揮できるという直感、(2)時代が人材業界へ追い風だったこと、そして(3)社会的意義・やりがいです。
──それぞれ詳しく教えてください。
桑原:まず1つ目について。自分が組織に加わることで、会社が成長するイメージがありました。参画した当時のUTグループは組織運営の本質となる考えや習慣がまだまだ身についていないフェーズでした。プレゼン一つとっても、僕が身をもって示していけば、顧客の問題解決に結びつくというビジョンが見えていたのです。
──キャリアを積んだからこその付加価値を発揮できると感じたわけですね。2つ目はいかがですか。
桑原:人口労働減少社会だと、おのずと人の希少価値は高まります。だから企業は、新卒も含め労働者集めに必死でした。こうした背景から、人材業界も、そこに集まるお金も、拡大の一途をたどることが読めました。つまり、業界の成長性ですね。そして3点目として、人材業界は働く意義も兼ね備えていました。
──3つ目は、それまでと打って変わってエモーショナルな側面を感じます。桑原さんの中に、何か原体験があったのでしょうか。
桑原:その通りです。僕は博士課程まで哲学を専攻していました。哲学は、「人はなぜ、今ここに存在しているのか、存在していなければならないのか?」という問いがスタートポイントです。UTグループでは、求職者が生きる姿をライフプランベースで見ていき、いかにその人を幸せにするかを一緒に考えていきます。これがUTグループが提供するサービス付加価値のキモになるのです。この意識が僕の社会的意義の在り方、哲学における関心にマッチしたのです。これまでの人材業界にはない、新しい価値設計に強い魅力を感じました。
──率直に、学生さんが感じるであろう疑問を伺います。桑原さんのように、コンサルや事業会社で経験を積んでからUTグループに参画するのではダメなのでしょうか?
桑原:鋭いですね(笑)。これは、先日お話した京大生からも問われました。こんなこと言うと人事に怒られるかもしれないけど、個人的にはそれはそれでいいと思います。就活も含め、自分がどうしたいかは、自分で考えるしかありません。尊敬する人が「そうしなさい」と言うからマネをしているうちは、自分の経験上も、本領は発揮できないと思いますね。
AIに奪われない仕事は「人が人をケアする世界」
──忌憚(きたん)なく、まさに「ド正論」でお答えいただきました。様々な経験をされてきた桑原さんに、もう少しキャリアについて伺います。多くの企業でビジョンやミッションを掲げていますが、学生の中には「自分にはやりたいことも、成し遂げたいことも分からない」と口にする方も少なくありません。桑原さんなら、こうした学生にどうアドバイスしますか?
桑原:最初から社会的意義なんて考えても仕方がありません。まずは、どんなに個人的なものや小さなものでもいいから、自分が持っている問題意識やトラウマを掘り起こし、それを中心に発想を膨らますことをおすすめします。小さな心の引っ掛かりを、日々の暮らしやイベント、シチュエーションに照らし合わせることで、真理に突き当たるはずです。だから焦らずに、膨らませていけばいいと思います。
──学生が幸福なキャリア選択をする上では、そうして培った問題意識を、成長するマーケットで発揮することも必要です。桑原さんは、伸びている業界をどのように見極めたらいいと思いますか。
桑原:一言で言うなら、問題意識を持ちながらトレンドを読むこと──人間の欲望の流れる方向を見ることです。また、AIが代替できない領域を選ぶこともポイントです。技術が発展し、AIが業務を最適化していくこれからの時代は、「人間が人間性を発揮できるビジネス」が発展するのではないでしょうか。具体的に言えば、人材業界のように、人が人をケアする世界はAIが取って代わることができません。
問題意識さえあれば「下積みのためのコンサル」はいらない
──最後のトピックとして、UTグループでのキャリアや、選考の魅力を伺います。桑原さんから見て、UTグループの強さはどこにありますか?
桑原:社長から新卒社員まで、みな志が高いことです。真剣に企業理念である「はたらく力で、イキイキをつくる。」を実現するために業務に取り組んでいます。
──ともに働くメンバーを見ていて、UTグループの中で活躍できる若手像を教えてください。
桑原:ずばり、先ほど述べてきたような「問題意識」を持つ人です。問題を見渡す次元と視点が高い人であれば、問題に要領よく取り組みますし、独力でできないことは、協力者を自ら得て課題を解決していきます。その一方、「何でも教えてほしい」というスタンスの人は、どんなに能力が高くても経験上うまくいきません。例えば、もしMBA的な知識を身につけたいなら、ウェブで手軽に学べる時代です。わざわざ「コンサルで下積み3年」と掲げるまでもないでしょう。自分の中に問題意識さえ持っていれば、どんな企業でも実務に知識を当てはめるようになるので、そう時間はかからず身につくはずです。問題意識を持つ人材には、強みにフィットした形で、UTのノウハウをどんどん学んで欲しいです。
人材業界の醍醐味を知る、濃厚インターン
──この冬、UTグループの強さや仕事を感じ取れるインターンが開催されるとお聞きしました。内容や狙いを詳しく伺えますか?
桑原:UTグループでは、今年3種類のインターンを実施します。ここでは直近に開催される2daysインターンと、1dayインターンを紹介します。
まず2daysインターンは「Rebirth(再生)」と名付けた、企業再生をテーマとしたインターンです。チームごとに経営者視点に立ってもらい、UTグループの子会社運営について考えてもらいます。事業再生のプラン作りだけではなく、部下や派遣社員に説明するための資料作成まで行うため、現場の社員たちのモチベートまで踏み込めるかどうかが重要です。人材の視点から、組織としての決断の難しさや面白さを感じてもらえればと思います。
──1dayインターンについても詳しく教えてください。
桑原:1dayインターンは、各地方の拠点で開催されるため、UTグループの地方ビジネスにおける意識を体感できます。UTグループの強みの一つは、地方での労働者を多数抱えているため、首都圏と地方、それぞれの実態に合った提案を愚直に実行できることです。首都圏の働き方だけを見ていると、ビジネスを合理化し生産性を上げることが最適解のように感じるかもしれません。しかし、地方ではそもそも「雇用を維持・拡大すること」も優先度の高いミッションです。たとえ首都圏に偏った目線で人材活用の提案をしても、地方の現場では受け入れられることはまれなのです。こうした地方での雇用のリアルと、地域ごとの異なる課題をミックスした問題に向き合える貴重な機会です。
──どちらも濃厚なプログラムですね。最後に、この記事を読んでいるワンキャリア読者にメッセージをお願いします。
桑原:僕たちは、志が高い若者と一緒に新しい人材世界とそのプラットフォームを作りたい。ぜひここまでに述べた僕の考えを、さらに更新するぐらいの意気込みと志を持ってほしいと思っています。幹部候補生採用を通して、社長室の人事企画で活躍している若者たちも出ていますから、チャンスはすぐにやってきます。UTグループは志を高く持つ人材をお待ちしていますし、ぜひそんな若者に門戸をたたいていただきたいと思っています。
──桑原さん、ありがとうございました。