「銀行に就職すれば一生安泰」
とご両親、先輩など、周りの大人から言われたことはありませんか?
しかし18卒・19卒のトップ学生の間では「メガバンク(以下、メガバン)は滑り止め」という認識が広まっています。今回はメガバンが就活生にとって、そして社会にとってどのような立ち位置にいるのか探っていきたいと思います。
就活生全体には人気のメガバンク。入行するメリットとは?
東洋経済オンラインの調査による2018年卒学生の就職人気ランキングでは、三菱東京UFJ銀行(以下UFJ)が2位、みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)が3位、三井住友銀行(以下、三井住友)が19位と、メガバン各社は就活市場で非常に人気のある企業といえます。
一般にメガバンクの就職人気が高い理由としては、「ブランドイメージ」と「給与・待遇の良さ」があると考えられます。
※三菱東京UFJ銀行(BTMU)は、平成30年4月1日より三菱UFJ銀行(MUFG)に変更となりました。本文中の名称は掲載時のものに準拠しております。
メガバンクは「子ども・孫に勤めてほしい企業」上位
前者のブランドイメージについて、親・祖父母世代からの高評価が根拠として挙げられます。リスクモンスターの調査によれば、子どもや孫に勤めてほしい企業として、UFJは11位、みずほと三井住友が32位(同率)と、軒並み上位にランクインしています。選んだ理由としては、「堅実そう」「知名度」「安定感」というコメントが寄せられています(11位UFJの選択理由として)。
誰でも年収1,000万円?! 給与水準の高さは随一
直接的な表現かもしれませんが、平均年収が1,000万円を超えるメガバンは、平均年収が450万円という金融業界の中で、給与水準が高いといえます。
また、あるメガバン社員は「優秀な社員が1,000万円もらえる会社は多いですけど、誰でもといえばメガバンクしかない」と話すようにメガバンは安定して高い給与を得られる点で、魅力的に映るのかもしれません。
メガバン=「超安定・超優良」は、もはや神話?
しかし、メガバンの就職人気には暗雲が立ち込めています。2017年の秋頃から「メガバンが人員計画の見直しを行う」というニュースが目立つようになりました(参考:日テレNEWS24「3大メガバンク 大規模な人員計画見直し」 )。各メガバンで人数規模の違いはありますが、店舗の統廃合やIT技術の活用により、新卒社員の採用数を抑えたり、配置換えを行うという方向性は一致しています。
この流れを、就活生はどう見ているのでしょうか。18卒のトップ企業内定者にヒアリングを行ったところ、
「メガバン? 一応受けていたけど、滑り止めでした。日系メーカーが第一志望です(早稲田大学4年/女)」
「転勤も多いし、仕事も厳しいみたいですね。安定を求めるにしてはもっと就職先の選択肢があるだろう、という感じです(慶應義塾大学4年/男)」
と、シビアな回答が返ってきました。19卒でも、5月時点の東大・京大就職人気ランキングで上位50位以内にランクインしたのは三菱東京UFJ銀行(39位)のみ。トップ校の学生にとって、メガバンの人気は低迷しつつあると考えられます。
「入社人数の多さ」は人気の表れではない
しかし、メガバンクの採用数は3行合わせて5,000人程度であり(東洋経済記事をもとに編集部計)、トップ校の学生も多くが就職先としてメガバンクに入行しています。以下の表をご覧ください(カッコ内は各大学の入社人数ランキングの順位です)。
UFJ | みずほFG | 三井住友 | |
東京大学 |
28人 (1位) |
24人 (2位) |
22人 (3位) |
早稲田大学 |
99人 (2位) |
106人 (1位) |
67人 (9位) |
慶應義塾大学 |
88人 (3位) |
148人 (1位) |
59人 (5位) |
※2016年度卒業生(学部生)の入社先を編集部で集計:東京大学/早稲田大学/慶應義塾大学
キングコング西野亮廣氏が「慶應生の人気就職先ランキング1位が『銀行』って正気?」というブログ記事を発表したのは記憶に新しいですが、事実として東大・早慶のトップ校において、メガバンに入行する学生は多いことがわかります。しかし、入社人数が志望度に比例するわけではありません。
冒頭の18卒のコメントにもある通り、メガバンは採用人数の多さから「滑り止め」として捉えられていることが多いようです。実際にBusiness Insider Japanが銀行に内定または就職した慶應大学出身者に調査をしたところ、11人中9人が「就職先は第一志望ではなかった」、7人は「他業界を志望していた」と答えています(Business Insider Japan「慶應生はなぜ銀行に就職するのか——内定者・新入社員に聞いた本当の理由」より)。
トップ就活生にとって「採用数の多さ」は必ずしも人気を表すわけではなく、むしろ「平均的」「受かりやすい」というイメージに繋がるのかもしれません。
トップ就活生のキャリア観は「終身雇用の安定」から「転職を見据えたスキル志向」へ
メガバンの就職人気が低迷するもう一つの理由として、「キャリア志向の変化」も挙げられます。
『半沢直樹』『花咲舞が黙ってない』など、銀行を舞台にした小説やドラマで描かれるメガバンは「お堅い」「年功序列」のイメージです。ワンキャリアがメガバンク社員に実施したインタビューでも、「行員は30歳まで下積み」「20年・30年働くキャリア」など終身雇用が前提となっている働き方であることが分かります。しかし、昨今の就活生にとっては「同じ企業でずっと働くこと」は必ずしも「安定」ではなくなっています。
ワンキャリアが18卒就活生に向けて実施したアンケートでは、「入社先を決定する際に重視した要素」として実に7割の学生が「得ることができるスキル・経験」と回答しています。
調査主体:株式会社ワンキャリア/調査対象:2018年度卒予定の学生139名/調査方法:Googleフォームによるアンケート調査/集計時期:2017年10月-11月
また、ファーストキャリアを選ぶ軸も転職が前提になりつつあります。「就職の際、転職やセカンドキャリアを視野に入れて就職活動を行っていましたか、または就職先を決めましたか?」という質問に対して、54.7%の学生が「はい」と回答しています。
調査主体:株式会社ワンキャリア/調査対象:2018年度卒予定の学生139名/調査方法:Googleフォームによるアンケート調査/集計時期:2017年10月-11月
18卒のトップ就活生が望むキャリアは、「長い下積みを経て、1社にずっと勤め続ける」ことではなく「社会の変化の中で生き残るスキルを得る」働き方であることが見て取れます。実際にトップ就活生の声を聞くと、
「『大手に行っておけば安心』と考える親と、『何かあった時に自分の力で乗り越えられる方が安心』と考える自分で、安心・安全の捉え方が根本的に違うと感じた(東京大学4年/男)」
「過去50年間の安定が、50年後の安定を保証する理由にはなり得ない。変化し続けることこそ、安定だ(早稲田大学4年/男)」と語っています。
メガバンに限らず、親世代が望むような終身雇用型のキャリアが魅力的に映る時代は終わりつつあるようです。
まとめ:その企業選択に物申す。本当の「安定」を考えたことはありますか?
いかがでしたか? メガバンをはじめ、いわゆる「超大手」企業を志望する学生の中には、安定性や知名度を魅力を感じる方もいるかもしれません。しかし、今までの安定性や企業ブランドがこの先も続くとは限りません。
過去のワンキャリアの記事では、「安定」を以下の2パターンに定義しました。
A)企業の安定性
倒産しないか、給与(昇給・賞与・福利厚生など)が安定しているか、経営者や企業方針が大きく変わらないか
B)働き方についての安定性
定年まで働けるか(リストラされないか)、転勤を命じられないか、過度な残業をせず働き続けられるか、出産しても働き続けられるか、希望する職種は将来も存在するか
※「「安定したい」学生必見!安定企業の見分け方」より
変化の多い今の時代に、これらの条件を満たし続ける企業がいかに少ないか、想像してみてください。また、ワンキャリア執行役員の北野(KEN)はこのように語っています。
学生の多くは「今」の有名企業に入り、安定的にキャリアを進めようとする傾向にあるが、大きなリターンを手にしたいのであれば、逆だ。誰も知らないが、ロジカルに考えて伸びる会社に「最初に飛び込む」という選択肢こそ、ベストだ。
※「ハッキリ言おう、君は、80歳まで働く気で就活した方がいい。」より
就活生の皆さんには、どうか他人からの評価に惑わされない選択をしていただくことを祈っています。