こんにちは、ワンキャリ編集部です。
日本を代表する総合商社7社が一堂に会する特別企画「総合商社の採用戦略」。
今回は住友商事で採用チーム長を務める岩本さんにお話を伺いました。
住友商事の採用戦略 押さえるポイントはここ!
・入社半年で出向、2年目で海外へ。若手にチャンスを与える文化
・住友商事の強みは「現場主義」「公利を徹底追求する姿勢」
・「チーム選考」の名物インターン。求められるのは商社パーソンとしての適性
若手だらけのチームで、予算は1億円超! 期待通りの「若手にチャンス」を与える文化。
——岩本さん、本日はよろしくお願いいたします。住友商事といえば「堅実で穏やか」というイメージを持つ就活生が多いようです。ともすれば、これは年功序列や、若手が挑戦する機会が少ない環境のようにも聞こえます。新卒入社から21年目を迎えた岩本さんから見て、その実態はいかがでしょうか?
岩本:実は、私が住友商事を志望したのは「住商は若いうちからチャンスが回ってくる会社だ」と聞いていたからです。結論から言えば、期待通り、若手の活躍が求められる環境でした。はっきり言って、新入社員がいきなり大活躍できる場なんて普通はありません。それでも新入社員にも意見を聞き、行動を求めるのが住友商事のカルチャーです。
岩本 健一(いわもと けんいち):住友商事株式会社 人事部 採用チーム長。1997年入社、人事部で採用業務等を担当後、営業部へ異動。テレビ通販事業、サミット(株)への出向を経て2005年に人事部へ。シンガポールへのトレイニー派遣、関西での勤務を経て2017年より現職。
——何か具体的なエピソードはありますか?
岩本: 入社1年目で参加した大きな社内会議で、部長に「おーい、そこの新人くんはどう思う?」と指名されたことは今でも覚えています。何より印象的だったのは、先輩の異動に伴って、入社2年目で採用チームを主導した時のことです。採用チーム長の下は、私を含め入社1〜2年目の社員がわずか4人。1億円を超す採用予算の采配まで、「全部使っていい」と任されたのです。
5千人規模の大企業で、新卒採用という一大ミッションを若手社員にここまで任せてくれることに驚きました。最近でも新卒社員が入社半年で子会社へ出向していますし、海外派遣は早くて2年目から可能性があります。
偶然さえも事業に繋げる。「電動スクーター界のテスラ」との一大プロジェクト
——それは興味深いですね。では、事業面で住友商事ならではのアグレッシブさや挑戦の姿勢を感じる取り組みはありますか?
岩本:住友グループは400年を超える歴史を有する企業グループですが、当社は総合商社のなかでは実は最後発です。他社の真似をするだけでは勝てませんので、新たな領域に挑戦し、粘り強く育てることでここまで実績を積み上げてきた会社です。ショップチャンネルやJ:COMなど、いわゆるメディアビジネスに強みを持つのも、その一つの結果です。
最近では2017年9月に発表したGogoro社(※台湾で電動スクーターのシェアリングサービスを手がける会社)との連携が良い例で、エコアイランド化構想の一環として、石垣島で電動スクーターのシェアリングサービス実施を進めています。この事業は、弊社社員が台湾のGogoro社を訪問した際に、同じ日にたまたま台湾を訪れていた石垣島の職員の方と出会ったのが発端でした。偶然の出会いまでも事業に繋げたのは現場に強い住商らしい話だと思います。
——Gogoroは「電動スクーター界のテスラ」とも称される企業です。モビリティの進化を担う企業との連携を、偶然の出会いから掴んだのですね。
岩本:はい。現場で粘り強く実業を追いかける姿勢は、住友商事ならではだと思います。単に投資リターンを狙うのではなく「自分たちが会社を創り、経営するんだ」というこだわりは非常に強いですね。総合商社がコンサルティングファームや投資銀行と圧倒的に異なるのは、「0から自分たちで何かをつくり、実行まで手掛ける」ことです。これは総合商社ならではの魅力であり、使命だと感じています。
社内公募で営業部に異動。肌で感じた「住商の現場主義」
——過去のインタビューでも語られていますが、住友商事の「現場主義」の姿勢は印象的ですね。食品スーパーのサミットやドラッグストアのトモズは、総合商社が自ら手掛ける小売事業として珍しい存在です。
岩本:実は私も、営業部時代にサミットに出向していたことがあります。住友商事には社内公募制度があり、それを利用して入社6年目の時に営業部に異動しました。3年間過ごした営業部でしたが、テレビ通販の担当をした後にサミットの事業部へ移りました。サミットでは、店舗でのレジ打ちや商品陳列など、アルバイト・パートのみなさんと同じ仕事をしました。住商に戻る頃には、カツオを一本おろせるようにまでなりましたよ(笑)。
「営業の現場で仕事がしたい」という入社時からの念願が叶い、「川下」どころか「海」へ出てしまうほど現場に密着した、貴重な経験ができました。このような仕事の積み重ねが、住友商事全体の何千億円という利益になっていくのだということを痛感しましたね。やはり現場でお客様に近いところで仕事をするという経験は、頭でっかちな商社パーソンにならないためにとても大切だと思います。
浮利を追わず:自分たちだけが儲けるのではない。それは世間にとっても利益がある仕事か?
——この10年間で、社会は目まぐるしく変化しています。商社の仕事も幅広くなってきていますが、今の住友商事は「何をしている会社」と表現できると思いますか。
岩本:時代を経ても、本質は変わらないと思います。住友商事は「世の中を豊かにする会社」です。逆に言えば、この使命に反することはしてはならない会社です。例えば、ある国の資源を搾取してまで儲けてはいけないし、「弊社だけが儲かればいい」という仕事は価値がないとみなされます。
——なるほど。「信用・確実」をはじめとした住友の事業精神(※)が感じられますね。
(※)住友の事業精神……「信用・確実」「浮利を追わず」「自利利他公私一如」「進取の精神」等
岩本:これは住友商事の社員全員が知っているだけではなく、意味もよく理解していて、日常業務でも当たり前に出てくるワードです。自分たちが儲かるだけの仕事に意味はなく、お客様を利する、世の中を利する仕事をするべきと。
——実際に、「浮利を追わず」の精神を感じた出来事はありますか?
岩本:はい。私が営業部に異動した時の最初の仕事は、テレビ通販事業でした。そこで、海外製のフィットネス器具の販売権を交渉していた時のことです。アメリカの通販会社から、ある人気商品の最新モデルを発売するにあたって、「日本での独占販売権を住友商事に与えたい」という話が来ました。独占販売は、通販事業で一番の好条件です。しかも商品自体も売れる見込みがあり、儲けるには願ってもないチャンスでした。
でも、ここからが住商の真面目なところです。人体に影響を与える器具なので「本当に効果があるのか」「皮膚を痛めないか」などの臨床試験データを集め、安全性を徹底的に立証するまで売れないと判断したのです。結局欲しいデータが揃わず、住友商事はこの商品の販売から全て手を引くことに決めました。
——企業として確実に儲かる機会であっても、道義を優先したのですね。
岩本:後日談として、他社がその商品の販売権を獲得し、かなり儲かったようです。しかし社内では、「それでも、住商として売ってはいけない商品だったよね」と納得しました。事業精神が浸透していることもあってか、住友商事には根が真面目な人が多いと感じますね。お客様に誠実に向き合う姿勢を徹底的に教育されるので、なおさらだと思います。
冒頭の「堅実で穏やか」という学生さんからの印象も、私たちの普段の態度やコミュニケーションスタイルを評価いただけているのかもしれません。
「チームエントリー」で試されるのは、商社パーソンの資質
——続いて、多くの就活生が気になる「採用」のトピックに移ります。住友商事のインターンシップは、チームエントリー制が独特だと学生の間でも話題です。そもそも、なぜこうした形式にしているのでしょうか。
岩本:住友商事のインターンシップは、4人1組でないとエントリーできないというチームエントリー制です。そこには「商社を目指すのであれば、自分の一声でパッとメンバーを集められるような人脈と人望のある人になってほしい」というメッセージを込めています。商社では、チームワークも人脈も、人をまとめる力も問われます。
——まさに「商社パーソン」の資質をインターンシップでも問うているのですね。
岩本:そのとおりで、商社の実務で求めることをインターンにも求めています。インターンシップの内容も、リアルな商社の現場を見せることにこだわっています。過去の参加者からは「商社の泥臭さが分かった」とよく言われます。今年もその方針はぶらさず、現場の地道な仕事まで包み隠さず体感していただきたいと思っています。
——それは楽しみですね。最後に、本選考を含めた就活全般についてアドバイスを頂けますか。住友商事の内定に必要なポイントや資質はあるのでしょうか?
岩本:「内定を取りたいからこのインターンに行っておかなきゃ」とか、「OB訪問は何回しなきゃ」というのは本質的ではないと思います。内定を取ることを就活のゴールにすると、そこで自分の成長を止めることになります。目先のことばかり考えて就活をしないように、というのが一つのアドバイスです。
——まさに「浮利を追わず」ですね。では、人事のプロフェッショナルとして、岩本さんのお考えをお聞かせください。
岩本:私がいつも言うのは、学生のみなさんは「学生らしい成長をしてください」という一言です。学生らしい成長とは何かということは、ぜひ自分で考えてほしいです。人の意見を100%鵜呑みにするのではなく、自分で考えて、自分で判断できる人間になってほしいですね。
——学生へのメッセージにも、住友商事らしさが表れているように感じます。岩本さん、本日はありがとうございました。
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