※こちらは2017年11月に掲載された記事の再掲です。
豆腐メンタルが武井壮のフリをしてもムダ。面接官、なめんなよ
就活ってなんなの? と問われれば、大人の社会科見学のようなものだと答えることにしている。社会科見学をしながら、様々な職種の人たちから仕事の話を聞けるだなんて、一粒で二度おいしい。モラトリアムの終焉を飾るにふさわしい、人生の一大イベントではないか。そんなことを言ったら、就職氷河期に就活をした学生さんや企業の人事部から非難ごうごう、集中砲火を浴びて火だるまになりそうなので、自己防衛も兼ねて言っておく。社会科見学ぐらいの心持ちでいた方が、面接にも自然体で臨めるってものですと。
就活を頑張っている学生さんの中には、豆腐メンタルなのに完全武装しまくった結果、武井壮みたいなテンションになっている人がたくさんいる。その違和感たるや、何千人もの学生と話をしている面接官にも確実に伝わっていると思った方がいい。面接官、なめんなよ。
もっともっと気楽に挑めばいいのである。ニュートラルな心でいないと、見えてこないものがたくさんある。「いざ、心の甲冑をはがして、もっと軽やかに就活という大海に乗り出してほしい」。そんな願いも込めて、仕事に関する悲喜こもごもを酒の肴に盛り上がれる年頃となった私が、やや上から目線で仕事探しについて思うことを無責任に書き綴ってみようと思う。
ライター紹介:山守ぬえ
大学院で精神医学・心理学を学ぶ。新卒でリクルートに入社。出版社で企画・編集職を経て独立。取材や執筆の仕事をする傍ら、右脳開発で有名な教育事業の広報としても活動中。※Twitter/ブログはこちら
「何をやりたいのか分からない病」就活で自分探しはバカのすること
就活を始めて多くの学生が陥るのが、「将来、自分が何をやりたいのか分からない」という出口の見えない巨大迷宮から抜け出せなくなること。説明会に足を運べば運ぶほど、自己分析をすればするほど、カオスになる。そんな人たちに言いたい。たった半年の就活期間中に、自分のやりたいことに出会える確率なんて天文学的に低いから。
人生の早い段階でなりたい職業を決めて、専門学科のある大学に通っている医学生や薬学部生のような人たちだって、いざ学び、実地研修に出てみて、「あれ、思っていたのとなんか違うかも……」なんて悶々と悩むことだってある。それぐらいに天職に出会うのは難しいことなのだ。
はっきり言おう。就活で自分のやりたいこと探しなんてしない方がいい。仕事の面白さややりがいなんて、実際に現場で汗水垂らさないと分からない。
高学歴の学生であればあるほど、友人がどんどん大企業に内定を決めてくるので、焦るだろうし、落ち着かなくなると思う。他人と自分を比べては落ち込み、卑屈になってしまう人だっているはずだ。でも、冷静になって、よく考えてみてもらいたい。大企業や人気企業の内定をたくさん得ることがゴールではない。複数の内定をとろうが、一つだけであろうが、入社するのはたったの一社だけ。世間体なんか気にせずに、一番しっくりくる会社の門を叩いて、内定を勝ち取ってもらいたいのだ。
では、どうやって自分の就職先を決めればいいのか。一番手っ取り早い方法は、同じサークルや研究室、ゼミなどで「自分と価値観や考え方が近いな〜」と思う人や尊敬する社会人に頼んで、仕事の面白さややりがいを聞いてみることだ。そして、なかなか聞き出しにくいかもしれないが、同時に仕事の辛いところ、苦しいと思うことなんかも聞けるとベストである。
新卒でどこに入るかは大して重要ではない
ほのかに思いを寄せていた企業から「お祈りメール」が届いたら、誰でも激しく落ち込むはずだ。自分の人格が否定されたような気持ちになる人もいるだろう。ここで気をつけてもらいたいのが、「内定をもらえない自分、オワッタ!」と電車に飛び込んだりなんかしないことである。全部落ちたって、アルバイトで食いつないで、来年また就活すればいいってだけの話。
私の知り合いに、入社半年ぐらいで職を失った者がいる。成果主義すぎて上司や同僚との折り合いが悪く、現場の空気を乱すというのが解雇理由だった。「自分が尊敬できない人には迎合できない」と自分の気持ちに正直であるがゆえに、対人関係を築くのが難しい人なのだ。
彼は契約社員として様々な企業を渡り歩いた末に、日系企業の子会社の正社員として海外駐在を経験した。そして社会人10年目で、なんと大手総合商社の総合職としてヨーロッパのとある国の駐在員になったのだ。彼の社会人人生における職務内容のほとんどが、何もない所に道なき道を作るような泥臭いものばかりだった。困難を極める状況でも必ずやアイデアを打ち出して実行し、成功に導いてきた経験が商社に買われたのだ。組織として変革が求められるような状況のときには、彼のような人物が必ず必要とされる。まさに適材適所である。
つまり「新卒でどの会社に入るか」よりも、「自分の長所を生かして入った会社で何を成し遂げるか」の方がずっと重要だということだ。社会人生活は長い。自分の欠点に目を向けてそれをなんとか克服しようとする働き方は、辛く苦しいものになるが、自分の得意なことを見つけて伸ばしていくような働き方をすれば、それがどんな仕事であろうと楽しくなる。苦手なことを平均値にまで引き上げる労力を考えたら、得意なことを伸ばすのにエネルギーを注いだ方が、精神衛生上も良いし、会社にも多くの貢献ができる。
アスペルガーでも優秀なホテルマンに。人はデコボコでいい
人は凸凹でいいのだ。自分ができないことは、得意な人がやればいい。それがチームで働くことの良さだ。高学歴な人ほど、一人で全てを完璧にこなそうとする人が多いように思う。それだと、時間もかかって非効率だ。もっともっと他人に頼っていいし、身近な人を信頼してほしい。一人で100点を目指すのが受験勉強だとしたら、仕事とはチームの一人一人が得意なところで100点を目指して、トータルで500点のものを作り上げていく作業だ。
先日、アスペルガー症候群の子どもを育てた母親に話を聞く機会があった。その子は自分の好きなことだけを一方的に話してしまい、人とコミュニケーションをとるのが苦手なタイプで、多動性障害の特徴もあったという。当時は今より障害児への理解も薄く、子育てに大変苦労をされたそうだが、個性を伸ばしてあげようとする母親の理解もあり、現在はホテルマンとして都内の一流ホテルに勤務しているという。
そんな彼の場合、接客業で障壁となりそうなコミュニケーション能力に困ることは、ほとんどないという。ホテルマンはお客さんから尋ねられることもほとんど決まっていて、アスペルガーの人が苦手とする世間話をする必要がないからなのだそうだ。
しかも彼にとって、ホテルは特技を存分に生かせる職場だった。視覚記憶がいいので、一度目にしたお客さんのスーツケースの色や形などを忘れないし、多動はむしろ重宝される。彼は優秀なホテルマンとして会社では評価されているという。
隠れた才能をどう見つける? 処方箋はあの最強ツール
では、どうすれば自分の強みに気付けるのだろうか。得てして人は、自分の強みには気づきにくい。無意識にやっていることなので、それが当たり前すぎて特別なことだとは思っていないからだ。
私の場合、読書も書くのも得意という認識すらなかった。「日本語を話せる人だったら誰でもできる」と思っていたのだが、編集者になって初めて、どんなに輝かしい経歴の人でも正しくて美しい文章を書けるわけではない、という事実を知った。これは私にとって衝撃だった。
それぐらい、自分の強みには気付きにくいものなのだ。誰しも自分のできないことや欠点にばかり目を向けがちになるが、それでは就活そのものが辛くてつまらなくなる。それよりも、「自分が普段何気なくやっていること」「やっていてワクワクすること」に目を向けるようにすれば、途端に目の前が開けたような明るい気持ちになれるのだ。
今回は自分の強みを知ってもらうために、一冊の本を紹介しよう。『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』という本だ。本を購入すると、ストレングス・ファインダーという、自分の強みを発見するための分析ツールが利用できる。本に掲載されているIDでウェブサイトにアクセスして質問に答えると、その人が生まれながらに持っている自分の強みを5つ知ることができるのだ。
・さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0某大手人材系企業の人事部は全員、これを受講するのが通例となっている。自分自身や上司、一緒に働く同僚たちの強みや性格的・行動的特徴を理解することで、コミュニケーションの取り方や受け止め方の違いなどから生じる人間関係のトラブルを回避できるからだ。自分と違った素質を持つ人だとお互いに理解していれば、いちいち相手の一言に傷ついたりしなくなるし、コミュニケーションの質そのものが変わってくる。
ぜひ自分の強みを知り、就活にも役立ててもらいたい。
<本の処方箋>
『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0』(日本経済新聞出版社)
アメリカの世論調査と組織コンサルティングをしているギャラップ社が、「人は自分の弱みを改善するよりも、自分の強みに意識を向け、それを生かすことで最大の能力を発揮する」という考え方に基づき開発した資質分析ツール。
200万人へのインタビューをもとに開発し、世界で1,500万人以上が受検しており、定期的にアップデートしていることもあって、精度が極めてよい。
ぜひ、自分が持つ強みを知って、仕事探しに役立ててもらいたい。