さて、皆さん営業職についてどう思いますか。「キツそう」「詰められそう」「数字で評価されるのは大変そう」などのイメージだと思います。僕も新卒時は全く同じイメージを持っていました。ゆえに、営業職の内定を持っていながら、それら全てを蹴飛ばして金融バックオフィスの、いわば「事務職オブ事務職」みたいなところに入ったわけです。
で、現実はというと僕は「全く事務職に向いていない」ということが明らかになり、2年ももたずに新卒で入ったところから逃げ出しました。先に気づけよって話です。でも、ほらやっぱさ、なんていうか楽そうな感じしたんですよ事務職……。スーツも汚れないし、靴底すり減らして歩かなくていいわけですし。皆さんもそうは思いませんか? 思うよね? 大体みんなそんなもんだと思うんですよ。
そんな今の僕は、パリッパリの営業職です。営業成果で歩合を貰うタイプのお仕事をしていて、「この仕事は向いている」と心から感じています。確かに営業職ならではのキツさは当然あるのですが、同じように事務職には事務職ならではのキツさがあるのです。今日はそんなわけで、営業職と事務職の実情について話します。
「事務職=誰でもできるホワイト業務」という誤解
「俺は新卒で営業がやりたいんだ」という学生さんはおそらく少数派でしょう。なんとなくデスクワークの仕事に就きたいな、と考えている方が多いと思います。
しかし、あなたは本当に事務職に向いているでしょうか?
事務職に求められる能力は、ひとことで言うと「常に一定の出力を保ち続けること」です。「昨日は100%の成果を出したが、今日は15%しか成果が出なかった」というのはアウトです。完全にだめです。というのも、事務職は部署間をつなぐ「組織の血流」にも等しい役割ですから、事務が滞るとその先の仕事が全部ストップしうるからです。
そして、部署や人の間に入る以上、与えられた仕事をこなす間にも邪魔が入ります。電話応対、会議、差し込まれる仕事、色々あります。まるでジャグリングのように、自分の仕事をくるくる回しながら他の仕事にも対応しなければなりません。いつも安定して同じ出力で、煩雑な事務をこなし続ける適性が必要です。
これは「誰でもできること」ではありません。組織の歯車になるには才能が要ります。
営業は、成果さえ出ればわりと自由
営業は逆に、「昨日は100%の成果が出たが今日はゼロだった」ということがよくあります。商談の成果は相手次第の面があり、成果のブレは当たり前に発生します。ですから、毎月の〆日までにノルマを達成すればいいのです。
更に言うと、営業職はエモノが獲られていれば多少の粗相が許されるカルチャーの場合が多いです。例えば事務処理が雑でも、日報をシカトしても、営業中に優雅なコーヒーブレイクをキメていても、わりと許されたりします。(流石にアポをすっぽかすのはまずいですし、成果さえ出ていればですが)
営業はその点、ある程度の自由がききやすいわけです。成果が出そうな営業先に絞ってアポを取ったり、セールストークを自分なりに工夫してみたりと自分でコントロール出来る裁量の幅がある程度大きいですし、営業は大抵一人なので「常に誰かに監視されている」という圧力もありません。例外はあるかもしれませんが、いまどき常に二人一組で営業させる会社はそんなにないでしょう。
文系の皆さんは「この会社では事務職、こっちの会社は営業職」というふうに企業を受けると思います。ですが、事務職と営業職では、このように求められる適性がまったく違うのです。
「数字が出なくて詰められる」「協調性の無さで怒られる」フェアな評価はどっち?
営業ならではの恐怖に「数字が上がらなければ詰められる」というのがあります。これ、そんなに怖いでしょうか。ある意味でいえば、叱責と称賛のどちらかが発生する基準が明確化されているとも言えます。客先に出向き商品を売るという業務は、「エモノを追う」高揚感を与えてくれますし、成果に歩合給は分かりやすく応えてくれます。「やりがい」が分かりやすいのです。
逆に、事務職の場合はこの辺が曖昧です。なにせ、「事務ができる」という基準は、営業ほどに数値化できないからです。営業なら数字さえ上げていれば評価されますが、事務職は事務が出来ても「協調性がない」などの理由で責められる人が多々います。もちろん、本業の事務作業が出来なければ吊(つ)るし上げられるのも当然です。けれど、問題はそこまで単純ではありません。人間が狭いスペースに押し込められて共同作業をしているわけですから、そこには社内政治や人間関係の軋轢も発生しやすくなります。というか発生します。絶対に発生します。あとは分かりますよね? この記事で書いている通りです。
さて、ここまで考えて、あなたは営業と事務のどちらに向くと思いますか?
自分は何に「向かない」かで選ぶキャリアもある
僕は今思えば、証券でも保険でも不動産でもいいから、新卒で内定を持っていた会社に営業職で入っていれば「違う未来があったかもしれない」と本当に後悔しています。もちろん、「営業には全く向かない」という人もいるでしょう。しかし、「事務に全く向かない」「デスクワークがほとんど出来ない」という人も結構な比率で存在するのです。
あなたがどういうタイプの人間なのか、どうか見誤らないでください。「勉強はできたから事務も向いているはず……」という判断は甘い。僕だって勉強が苦手な方ではありませんでした。
考えてみてください。
・あなたは期限までに計画的にタスクを進めますか、それともギリギリになってから一気に追い込みますか。
・あなたは大量のタスクを同時並行で処理できますか、それとも一つのタスクに集中したいですか。
後者を選んだ人は、事務職には向いていないかもしれません。
営業職の適性があるかはっきりと知りたいのであれば、営業や物販系のアルバイトはいくらでもあります。謎の商材を売る飛び込み営業なんかも悪くないです。
適性にハマれば、営業は「つぶしのきく、やりがいある仕事」
最後になりますが、現役営業マンとして営業の魅力を語らせていただきます。皆さんにはあまり関係ないお話ですが、僕はADHD(注意欠陥多動性障害)という発達障害を抱えています。まぁ平たく言うと「ポカをやりまくる」「注意力がない」「集中力が持続しない」などの問題を抱えています。ですから新卒で金融バックオフィスの事務をしていた頃は、「どれだけ必死になっても仕事に集中できず、ミスを乱発する」症状に苦しめられていました。
しかし、営業職についてからこの問題はほとんど気にかからなくなりました。何せ「利益を上げる人間が偉い」という文化が根付いているので、多少のポカや粗相をしても、成果が全てを免罪してくれるからです。自分の適性に、営業職はこの上なくハマったわけです。
それに、営業職というのは普遍的に必要とされるスキルなので(営業なしで売れる商品を持っている会社がどれだけあるだろう?)、一社がダメでも次の会社に移りやすいというメリットがあります。僕も、もし今の会社をクビになったらすぐ次に行きます。「とりあえず、身体が動くうちは営業で食えるだろう」という安心感が、31歳にして出てきました。
一つの会社に勤めるにしても、営業職は今なお出世の王道です。営業という選択肢、無いわけではないです。是非検討してみてください。
「社会のためになる」とか「人を喜ばせる」とか色んな仕事のやりがいがありますが、「エモノを仕留めてその分カネを貰う」という根源的なやりがいは非常に分かりやすく楽しいですよ。皆さんの営業アレルギーは、非常に根強いものだと思いますが(当時の僕がそうであったように)、イメージに惑わされず自分の適性をじっくり検討してみてください。
僕は「最も劣悪な就労環境の一つ」といわれる分野の一つで営業をやっていますが、人生で一番今の仕事が楽しいです。
営業は楽しいぞ!
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※こちらは2017年1月に公開された記事の再掲です。