就職活動においてどの企業に就職したいか考えるときに、「とにかく安定したい!」という人もいるかと思います。
今日は、「では、あなたが思う安定って何?」、そして「安定して働くためには、何に注意したらいいの?」について考えていきましょう。
あなたが思う「安定」って、どんな状態?
まず、あなたが思う「安定」とは、どんな状態のことなのかを、自分で整理しておく必要があります。
「安定して働きたい」と思ったとき、パッと頭に浮かぶ観点としては次のようなものがあります。
A)企業の安定性
・倒産しないか
・給与(昇給・賞与・福利厚生など)が安定しているか
・経営者や企業方針が大きく変わらないか
B)働き方についての安定性
・定年まで働けるか(リストラされないか)
・転勤を命じられないか
・過度な残業をせずに、一定のペースで働き続けられるか
・出産しても働き続けられるか
・希望する職種は、将来も存在するか
ざっくりまとめると、
企業の安定性=「企業がなくならないか」
働き方についての安定性=「ずっと働き続けられるか」「企業の影響で、自分の環境が大きく変わることはないか」
ということができます。
それをさらにまとめると、「安定」=「大きな変化がなく、ずっと働き続けられること」ではないかと思います。
一人勝ちの分野を持っている企業は強い
まず、「企業がなくならないか」という観点について見ていきましょう。この観点で、就職先を探すときに意識してほしいのは、競合が少ない「一人勝ちの分野」を持っている企業は強いということです。
日経産業新聞「世界一の秘密 ニッポンの知られざるオンリーワン企業」によると、ある分野で世界シェア80%以上を誇る「世界ナンバーワン」企業は、2011年時点で日本に26社あります。
他にも、世界シェアの割合はそこまで高くなくとも、ある分野で世界上位の日本企業は探せばかなりあります。
その中でも、
・大企業
・自己資本比率が高い
・将来性が見込める産業
・単価が高い製品
・BtoB
という条件が揃った企業を選べば、将来も企業が存続する可能性はかなり高いでしょう。
「企業の成長」の名のもとに、社員を大量募集・大量消費する企業に注意
ただし、「企業の成長」と「個人が安定して働けること」は、両立しない場合がありますので注意が必要です。
特に注意すべきは、会社説明会などで「これから一緒にグローバルなオンリーワン企業を目指そう」などと熱く語る会社です。
たとえば、今野晴貴『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』の中で、ブラック企業の一例として挙げられている、超大手のグローバル企業であるX社。
X社は、就活での学生人気は高い反面、有名大学出身の新卒社員が1年目でうつ病になり続々と辞めているそうです。
新人研修一つとっても、X社の異様さを感じ取ることができます。
・まだ春休みの3月1日から研修が始まる
・内容は「休憩室に入るときもノックをして『失礼します』と言う。ダメだとやり直し」といった、細かな礼儀正しさを叩き込むもの
・企業理念や社の基本方針を暗記させられ、グループごとにテストを受けさせられる。全員合格するまで延々と続く
X社ではさらに、「自己学習」と「入社半年以内に店長になること」が求められます。
自己学習とは、X社のマニュアルを社内で書き写して、平日の仕事後や休日に、家で暗記することを指しています。
また、入社後は「店長候補」と呼ばれますが、半年以内に店長になれないと「店長候補」とは呼ばれなくなり(事実上の降格)、その後は徐々に会社にいられなくなります。
長時間労働+自己学習への疲弊と、社内選抜のプレッシャーで、新卒社員は精神疾患になり、短期間で辞めてしまいます。
企業の成長のために人材を大量募集・大量消費する企業には注意をしてください。
こういったいわゆるブラック企業と呼ばれる会社には、下記の特徴があると思います。
・大量募集
・入社後も社内選抜が続く
・洗脳に近いような、精神論の刷り込みを行うことで、従順さをテストしている(従順でない社員はいらない)
・選抜から脱落した者は切り捨てる(大量消費)
入社後に選抜を行って、本当に使える人材(=能力はあまり関係なく、とにかく忠実な人材)以外は切り捨てるために、大量募集を行っているともいえます。
先ほど、「安定性」を「企業の安定性」と「働き方の安定性」の2つに分類しました。
X社のような企業に入社すると、企業はなくなりませんが、自分がなくなってしまう可能性があります。
そうした企業を選ばないためには以下の観点が有効です。
・大量募集を行っていないか
・3年以内の離職率が低くないか(平均値3割・ただし業種間で異なる)
・過労死や過労自殺がないか
・マスコミやネットでブラック企業として取り上げられていないか
・残業代が固定されていないか
これからの時代は、終身雇用は難しい
しかし、「企業がなくならないか」「企業の影響で、自分の環境が大きく変わることはないか」という観点で安定企業を選んだとしても、これからの時代、定年までその企業で働けるかどうかは正直分かりません。
なぜなら、高齢化による人口減少や過疎化、AI(人工知能)などが、今後の労働市場にどんな影響を与えていくかが全く予想できないからです。
その中でも、安定したい皆さんが今できることは、「現時点でできるだけ存続しそうな企業を選ぶこと」「成長のために個人を使い捨てにする企業を選ばないこと」です。
その上で「何が何でもこの企業で定年まで働き続ける」という考えのまま思考停止するのではなく、「何かあっても、どんな形でも、ずっと働き続けることができるよう、自分の市場価値を常に意識しておく」必要があると思います。
それこそが、「働き方についての安定性」=「ずっと働き続けられる」ために必要な観点です。