三菱商事が「1Day Business Workshop」(※)を開催するにあたり、ワンキャリア執行役員の北野(KEN)が三菱商事 人事部 採用チームリーダーの中川氏へインタビューを行いました。
※ 最下部に三菱商事の「1Day Business Workshop」の内容を記載しています。
コンサルを経て三菱商事に入社した中川氏。クライアントの視点から見た三菱商事の魅力とその源泉を、実体験をもとに熱く語っていただきました。
コンサルからの転職。クライアントとしての「三菱商事」に心惹かれた
北野:本日はよろしくお願いします。早速ではありますが、中川さんの社会人になってからのキャリアを教えていただけますか。
中川:はい。私は1998年に社会人になり、コンサルティング業界を経て、三菱商事には2009年に入社しました。新卒からの10年間は、日系で7年、外資系で3年間、環境関係のコンサルを一貫してやってきました。
どんな仕事かピンとこないかもしれませんが、私が携わっていた業務は大きく2つです。一つはクライアント企業内部の環境リスクマネジメントに対するコンサルティング、もう一つはクライアントがM&Aを実行する際の買収候補先の環境デューデリジェンス(価値算定)です。三菱商事はクライアントの1社で、以前から付き合いのある会社でした。
中川 剛之氏(なかがわ たけゆき):
コンサルティング会社を経て、2009年三菱商事株式会社に入社。環境・CSRチームに配属された後、2011年の東日本大震災を受けて設立された復興支援チームのチームリーダーに。震災から6年間、東京と東北を往復しながら、産業復興を目的とした被災企業への投融資や、福島でのワイナリー事業立ち上げの陣頭指揮を執った。2017年4月より人事部 採用チームにて採用全般を担当。
※2018年3月現在:採用チームリーダー(2017年8月より)
北野 唯我(KEN):株式会社ワンキャリアの執行役員。主な記事に『ゴールドマンサックスを選ぶ理由が僕には見当たらなかった』『早期内定のトリセツ(日本経済新聞社/寄稿)』など。
北野:興味深いご経歴ですね。三菱商事は前職のクライアントとして接点を持っていたということですが、就活生当時は志望先として視野に入れていたのですか。
中川:いえ、新卒では総合商社は就職先の選択肢には入っておらず、むしろ就職後に興味がわきました。というのも、当時の私は専攻していた環境やバイオ分野での就職に絞っていて、商社は縁遠い業界だと勝手に感じていました。コンサルに就職し、金融や不動産、メーカーといった様々なクライアントと仕事をする中で、「三菱商事は魅力的な会社だな」と感じ、次第に転職先として視野に入れるようになりました。
北野:なるほど。クライアントから見た「総合商社」の姿は、新卒入社の社員が得がたい観点だと思いますが、コンサル時代の中川さんは、三菱商事にどのような魅力を感じたのですか。
中川:私が三菱商事に惹かれた理由は2つに集約されます。(1)事業バラエティがありつつ意思決定できる機会があること、(2)魅力的な人材プールです。
北野:事業と人材ですか、それぞれ具体的に教えてください。まず事業について伺いますが、商社の仕事の面白みとは具体的にはなんだと思われますか。
中川:商社の面白さは「事業のバラエティ」と「意思決定できること」を両立できる、数少ない業界の一つだということです。
コンサルはプロジェクトごとに様々な業界の方と協業し、幅広い分野の課題解決に携われます。私はそこに楽しさを感じる反面、単にソリューションを提示するだけではなく、事業の実行や意思決定を行う立場を担いたいと思うようになりました。
このように考えた時、多様な事業領域を有し、主体的な立場で意思決定に関与できる機会が多い商社に強い魅力を感じました。
北野:しかし、最近はコンサルティングファームも「事業を実行するフェーズまで携われること」を前面に押し出していますよね?
中川:そうですね、ただ、商社における「実行」と、コンサルティングファームの「実行」は別物だと思います。コンサルの実行は、「クライアント側に常駐して業務をすること」を指すのがほとんどですが、商社でいう実行とは、自らのリスクマネーや人材を投じて「事業会社を自ら経営したり、事業経営に深く関わること」を指します。同じ実行でも「常駐」とは大きな違いがあると感じます。
北野:つまり、「実行を担う=常駐」と「自ら実行する=経営」の違いだとおっしゃるわけですね。中川さんが転職した際にもう一つ大事にした要素が「業務領域の広さ」とのことですが、この点は、実際どうでしょう?
中川:予想通りでした。様々なクライアントと付き合い、多様な業種に関われることが、コンサルタントのやりがいの一つでしたが、総合商社には金融や不動産、エネルギー、資源、消費財など、一つの会社の中にバラエティに富んだ仕事があります。しかも、それぞれの事業に主体的に関われることは、商社ならではの良さだと思います。
「戦闘能力が高い」――商社人材の引き出しの多さ
北野:一方で、私が思う商社とコンサルの大きな違いは、いわゆる「配属リスク」だと感じます。すなわち、「部署間の異動ができないため、結局は1つの業務しか経験できないこと」です。こちらについてはどう思われますか?
中川:配属先によって業界が大きく異なることは事実ですが、私自身はそれを「リスク」とは捉えていません。配属先の事業分野だけに留まらず、広くアンテナを張れば、利用し切れないぐらいの情報やネットワークが社内に存在しています。自分の担当分野を深掘りすると同時に、それぞれの業界や産業を横断する有機的なビジネスの構想・実現に主体的に関われることは、三菱商事で働くことの最大の魅力だと思います。
私がコンサルとして様々な企業の方と接してきた中でも、総合商社は最も「優秀な手強い相手」でした。他の業界では、特定の分野にのみ精通するクライアントが多く、例えばメーカーなどでの環境安全について話す時は専門部署の方が出てきますし、不動産事業者の方と「この土地をどうしようか」と話す時は、非常に文系的な話が中心でした。
北野:つまり、裏を返せば、商社のビジネスパーソンは違うと?
中川:はい、商社の社員は、科学やデータにかかわる理系の話にも、法律などの文系の話にもついて来るんです。それは、彼らが先頭に立って事業を回していく上で、文理問わず広く深い知見を有し、また、幾多の意思決定の機会を経験しているからだと思います。これは、配属部署に関係なく、総合商社の社員に共通している強みだと思います。当時は、こうした「引き出しの多さ」を持つ社員が、商社の多様な事業を創り出しているのだろうと漠然と考えていました。
北野:事業を主体的に回すがゆえに、「様々な知識を持たざるをえない」と。そんな商社パーソンの魅力を一言で話すとどうなりますか?
中川:「戦闘能力が高い」でしょうか(笑)。
北野:なるほど、面白い表現ですね……(笑)。確かに、総合商社、中でも三菱商事の人は「総合的な戦闘能力」が高い人が多いイメージです。
魅力の源泉は圧倒的なネットワークにある
北野:ここまで、コンサルの目線から語る商社の魅力についてお聞きしてきました。その後、中川さんが実際に働く中で、三菱商事に対して入社前と入社後のギャップはなかったのでしょうか。先ほどお話しいただいた「人の魅力」については、いかがですか。
中川:はい、入社してみて、納得した点と驚いた点がありました。
まず前者としては、先ほど申し上げた「引き出しが多い」イメージの裏付けが取れたことです。総合商社の社員がもつ魅力のバックボーンは、結局のところ、全く違う業界・業種・地域にいる仲間たちとの繋がりにあるのだと感じました。例えば、同期入社の社員と一口にいっても、ファンド運営や資源開発を手掛ける人もいるし、水産領域でマグロを扱っている人もいます。つまり「いつでも社内に専門家がいる状態」なわけです。そうした専門性の高い知識・業務経験を持った社員たちのネットワークが、彼らの「引き出し」の源泉なのだと気づきました。
対して驚いたのは、仕事を離れても「熱い使命感のようなものを持っている人」が多いことです。具体的に言うと、平日は「仕事の鬼」みたいな人が、休日はチャリティー活動で車椅子を押したりしているんです。何事にも本気で取り組む姿をみて、「この人、最強だな」と思うわけですよ(笑)。
企業理念に立ち返った震災復興支援
北野:なるほど。休日もチャリティーに打ち込む姿は、私としては「トップである自覚と余裕」を感じさせます。事業面で、そういった三菱商事の風土や姿勢を感じたエピソードはありますか?
中川:私が携わった東日本大震災の復興支援もその一例です。三菱商事は、震災の僅か1ヶ月後に、4年間・100億円規模での復興支援を表明しました。私が自分の会社の決断に誇りを感じたのは、震災直後に「4年間」という複数年のコミットメントを明言したことです。これは「三菱商事の事業基盤であれば、長いスパンで支援を続けられる。続けなければいけない」という自信と覚悟があってこそだと思います。そのような三菱商事の使命感に支えられ、私自身も、三菱商事パーソンとしての誇りをもって、被災地の産業復興支援に全力で取り組みました。
北野:面白い。確かに、震災直後の混乱の中で100億円の拠出を決断することは、まさに日本のトップ企業が率先してやるべきことでしょう。これは私見ですが、トップの自覚を持っている会社は日本にほんの一握りしかないと感じていて、三菱商事はその一社だと考えています。私には「三菱商事は、トップだからこそすべき使命をもっと果たしてほしい」という勝手な気持ちがあります。
中川:ありがとうございます。確かに、先ほどの例でも、国難とも言える災害に対し、誰から頼まれたわけでもなく「当然、三菱商事として果たすべき役割がある」という共通認識が社員の中にあったことは大変印象的でした。我々は、三綱領*という企業理念を掲げていますが、あの時はまさに「三綱領とは、三菱商事の中に受け継がれているDNAなのだ」と痛感しました。
*三綱領:三菱商事の企業理念。「所期奉公(しょきほうこう)」は事業を通じ、物心共に豊かな社会の実現に努力すると同時に、かけがえのない地球環境の維持にも貢献する。「処事光明(しょじこうめい)」は公明正大で品格のある行動を旨とし、活動の公開性、透明性を堅持する。「立業貿易(りつぎょうぼうえき)」は全世界的、宇宙的視野に立脚した事業展開を図る。という意味
北野:まさに「ノブレス・オブリージュ*」に近い精神だと。ちなみに、先ほどの復興支援の業務では、具体的にはどんなことをされていたのですか?
*ノブレス・オブリージュ:「高貴さは(義務を)強制する」を意味し、一般的に財産、権力、社会的地位の保持には責任が伴うことを指す。
中川:印象的だった業務を1つだけ紹介すると、津波で全壊したホテルの再建を支援したことです。先程申し上げた100億円のファンドから資金提供を行ったわけですが、ここで感じた三菱商事の最大の価値は「人の知恵」でした。というのも、ホテルのオーナーたちは震災前、「ホテル運営のプロ」ではありましたが、「ホテル再建のプロ」ではありません。一方で、三菱商事の社員には建設事業や金融関係の知見を持つ「プロたち」が存在しています。社内に「復興についてサポートしたい、助けてあげたい」と声を上げたら力を貸してくれる人がいて、彼らの知恵こそが三菱商事の付加価値なのだと感じました。
北野:経営人材を輩出する三菱商事だからこそ、単に資金や計画を提供するだけでなく、社内の多彩な人材をアサインできる、と。去年のインタビューで「もし新大陸への航海を支援するとしたら、コンサルは海図や船の操縦マニュアルを売る一方で、商社は知人のベテラン船乗りを連れてともに船に乗る」と採用リーダーの下村さんが語っていたのを思い出します。
下積みでも試合には出る。商社は4番打者を代打から育てる
北野:続いては三菱商事の人材育成システムについて聞かせてください。これまでの話を踏まえて、商社は「コングロマリット」だからこそ、多くの専門人材プールができあがるのはわかりました。ただ問題は「時間軸」です。言い換えれば、商社は「育成スピードが遅い」という意見についてはどう思われますか?
中川:つまり、「下積み」の問題ですよね。確かに「若手は下積み期間で、スケールの大きい仕事ができない」とネガティブに受け取る学生もいるかもしれません。ですが、三菱商事の「下積み」は、一般にイメージされるものとは違うと私は思っています。
北野:商社といえば年功序列の印象があります。三菱商事ならではの「下積み」とは、どのようなものだと?
中川:野球に例えるなら、1年目でも本番の試合に出てもらいます。下積みという言葉から連想される、「新入りは試合に出ずに土手を走っていろ」というものではありません。最初は代打での出場かもしれませんが、場数を踏むことで中心プレイヤーに育てます。重要な局面でいきなり4番打者を任せるようなことはせず、実力に応じた役割と責任をもたせていくことが、三菱商事にとっての「下積み」です。
もちろん、試合に出るには競争がありますよ。若手でも中堅でも、誰だって自分がチームに選ばれたいと思っています。だから、2年目は1年目には負けたくないと思うし、5年目だって2年目には負けたくないと思っているし、そんなふうに競い合った結果として、成果が年の順になることもあります。それは決して年功序列ではありませんよね。
北野:ここでいう試合というのは、子会社の経営層として参画したり、プロジェクトマネジメントを行うことを指していますか?
中川:もちろん大きなプロジェクトを持つこともありますが、世間的に見たらニュースに出てこない小さな案件もゴロゴロ転がっています。案件規模に関わらず、目の前の仕事にフルコミットし続け、成功・失敗体験を繰り返すことでレギュラー選手、つまりどこでも通用する経営人材に成長していくのだと思います。
採用選考で見るのは「生き様」
北野:試合の例えは分かりやすいですが、正直「本当かな?」と疑っています(笑)。
これはぜひ、学生さんは鵜呑みにせずに、自分の目で確かめてほしいなと思います。
さて、社員の成長システムという面では、採用も大切なプロセスの一つです。入社後に成長する人材を採用するために、どのようなポイントで学生を見極めていますか。
中川:私たちが採用で重視していることに「事業実行力」「事業構想力」が挙げられます。ただし、学生時代に、実際に事業経験を積んでいる人は非常に限られていますので、その潜在能力は、今までの「生き様」からにじみ出てくるもので確認しています。また、入社後にその力を発揮するためには、「これから待ち受ける世界に好奇心を持ち、我が事として楽しみながら挑戦できる姿勢」が重要だと思います。私たちは採用のプロセスで、学生のそういった資質を見たいと思っています。
北野:つまり、好奇心や挑戦心を持つ学生を見出し、多種多様な「試合」の中で鍛え上げることで、三菱商事の人材は育っていくということだと。
三菱商事に変化を起こす女性にこそ門戸を叩いてほしい
北野:ここで、ある意味で総合商社の採用課題ともいえる、商社での女性のキャリアについてもお聞かせ下さい。
私達が年間数千人の学生と接する中で感じることとして、優秀な女子学生のうちいくらかは総合商社から内定を得ても、外資系の投資銀行やコンサルを選びます。そんな彼女らに話を聞くと、「確かに総合商社は男性にとってはいい会社だが、女性にとってはそうとは思えない」といいます。この問題について見解をお聞きしたいです。
中川:まずお伝えしたいこととして、世界を飛び回って活躍している女性社員は多くいます。少し前と比べると、社内で確実に変化が起きていますし、むしろ申し上げたいのは、自ら変化を起こしていけるような女性にこそ、弊社に来てほしいですね。
北野:ここは中川さんたちの手腕の見せ所ということでしょうか。ちなみに、今の三菱商事で活躍する女性は、具体的にどんな方が多いですか?
中川:「男だから、女だから」と肩肘を張らず、自然体の自分らしさを持つ方が多いです。しなやかに生きる強かさと人間的な魅力のある女性が会社を動かしていますね。
活躍しているのは難局も楽しみながら乗り越えられる人
北野:興味深いです。では、中川さんから見て、三菱商事で男女問わず活躍する社員の共通点は何だと思われますか?
中川: 当然ながら商社の仕事はすべてが楽しいわけではありませんが、壁にぶつかった時にも、その局面を仲間と楽しみながら乗り越えられる人が活躍している気がします。自らチャレンジングな状況に身を置き、そこで得られた経験を自分の肥やしにするような人達が、三菱商事の新しい道を切り拓いています。
北野:冒頭で人材の魅力について話がありましたが、仕事を楽しめる姿勢や人柄の明るさも、一つの「総合的な戦闘力」といえるかもしれませんね。
活躍できるフィールドは、今見えている場所だけではない
北野:では最後に、学生へのメッセージをいただけますか?
中川:お伝えしたいこととしては、「みなさんが活躍できるフィールドは今現在見えている場所だけではない」ということです。目の前の興味・関心だけで進路の選択肢を絞り込んでしまわずに、自分が3年後、5年後、10年後に取り組んでみたいことや、将来的な夢のような部分も含めてぶつかっていくのがいいと思います。
企業の現状だけではなく、その先の事業展開にも想像を膨らませること、あるいは自分がその展開を創り出すという気概を持ってほしいです。その中で、三菱商事にも興味を持っていただけたら、これ以上嬉しいことはありません。
北野:本日はありがとうございました。
※ 三菱商事 1Day Business Workshop~つぎを創る仕事~
詳細はこちらから → http://www.career-mc.com/career_edu/
これまでの 三菱商事 公式インタビューはこちら
・「三菱商事だからこそ、やるべきことがある」三菱商事の人事部採用チームリーダーが語る、“日本の若者へ果たすべき使命”と“経営人材を育てるキャリア論”
・三菱商事の「経営人材」育成システム:連結事業投資先1,200社の経営人材を、いかに育てるか
・良い意味で裏切られた「下積み」の本質:経営人材育成への挑戦
・三菱商事の魅力は「強い想いを持つ社員」と「目指すゴールへの無限の道筋」人事と1年目社員が語るキャリア論
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