ワンキャリアが総力をかけて行う「WORLD5特集」。
世界経済フォーラムに認定されたYGLの5名と、コーディネーター1名が登場します。
昨日に続いて、ライフネット生命保険代表取締役社長の岩瀬大輔氏へのインタビューをお届けします。「コンサルと経営の違い」「内閣総理大臣だったら何をするか」「就職活動の軸」について話を伺った。
ーー前編「99%の人は天職に出会えていない。でも、それでもいいと思う」はこちら
経営は4人麻雀と一緒。基本勝率2割5分から始まる
岩瀬大輔:
1976年、埼玉県生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験に合格。卒業後、1998年にボストン・コンサルティング・グループ、リップルウッド・ジャパン(現RHJインターナショナル)を経て、アメリカへ留学し、2006年にハーバード大学経営大学院を日本人4人目のベイカー・スカラー(成績上位5%)として修了。帰国後の2006年、副社長としてライフネット生命保険を立ち上げる。2013年に代表取締役社長に就任。2010年には、世界経済フォーラムの「Young Global Leaders」の1人に選出
KEN:岩瀬さんは上場企業の経営者として働かれているわけですが、いわゆる社長業は「面白そう」と思う一方で、僕らのような常人には「大変そう」とも感じます。
特に岩瀬さんは、生命保険というルールが厳しい世界の中でマーケットチェンジを起こそうとしているわけですよね。岩瀬さん、「ライフネット辞めたい」と思ったことってないんですか?
岩瀬:ないですね。麻雀がお好きなサイバーエージェントの藤田さんがおっしゃっていたのですが、麻雀は4人でやるスポーツだから、基本は勝率2割5分、よくて3割5分だと。つまり6割・7割の時間は負けていると。我慢だと。経営もそういうものですよと。「みんないいところばかりしか見ないから楽しそうに見えるかもしれないけれど、経営者は6割・7割はひたすら我慢で辛いことばかりなんですよ」とおっしゃっていて、本当に共感しますよね。
僕なんかは打率2割くらいでしょう。だから8割くらいは負けている。なかなか思うように成果が出せなくて歯がゆいこととか、自分が情けないと感じることも多いですが、自分が選んだいい仲間と、本当に難しい挑戦、誰もやったことない難しい挑戦をしてるんだなと考えると、やっぱり楽しいですよね。
何でも役に立つ。でも、コンサルやってても分からないこともたくさんあった
KEN:経営は辛いことの方が多いということですね。岩瀬さんはコンサル出身の経歴をお持ちですが、ベンチャーを経営する上でコンサルの経験って役に立ったと思いますか? よく聞かれる質問だと思いますが、改めて聞かせてください。
岩瀬:それに対していつも答えるのは、「ファーストリテイリングの柳井さんも、ソフトバンクの孫さんも別にコンサル出身ではありません」ということです。
それから、DeNAの南場さんはベンチャーをされていて「コンサルの経験なんて一個も役に立たなかった」「全部一回忘れなきゃいけなかった」とおっしゃっています。だからそういう意見もたくさんある。
一方、僕は何でも役に立つと考える性格で、それはそれで役に立ったと思っています。物事の意思決定をする際に徹底してファクトとロジックで一旦組み立てていく癖、自分できちんと一次情報に当たって考える癖、コミュニケーションの仕方も大いに役立ちました。会社を作る時にお金を集めるときのプレゼンにも、コンサル時代の経験は使えました。つまり、何でも役に立つと思うけど、コンサルやってても分からないこともたくさんあったなと。
KEN(聞き手):
新卒で博報堂経営企画局・グループ経理財務局にて中期経営計画推進・M&A・組織改変業務を経験。米国・台湾への留学を経て、ボストン コンサルティング グループで勤務。その後、ONE CAREERにジョインし、執行役員CMOに就任。一方で、23歳の頃から日本シナリオ作家協会にて「ストロベリーナイト」「トリック」「恋空」等を手掛けたプロの脚本家に従事。『ゴールドマンサックスを選ぶ理由が僕には見当たらなかった』『早期内定のトリセツ(日本経済新聞社/寄稿)』など。
パワポで世界は変わらない。コンサルをやめた理由
KEN:「何にでも役に立つ」という意味で、コンサル経験は生きたということですね。とすると……厭らしい質問なのですが、僕が学生なら、どうして2年でコンサルを辞められたのかも気になります。
『1年目の教科書』の中でも「楽しい仕事があるんじゃなくて、仕事の中に楽しさを見出せ」というようなことを書かれていますよね。これには凄く同意するのですが、だったらなぜ辞められたのかなと感じます。転職の理由も伺っていいでしょうか?
岩瀬:2つの側面があり、まずグローバルで見ると、2年は全く短いわけではないのかなと考えています。
もう一つが実際コンサルで働いていて感じたことですが、当時は今のコンサルと違って、インプリ*っぽい仕事が少なかったのです。そのため、「社長プレゼンして終わったー」と案件が終わると打ち上げに行くのですが、これにすごく違和感がありました。世界はまだ何も変わっていない。パワポではまだ世界は変わっていないと。僕はそこに違和感を感じました。
*インプリ:インプリメンテーション。コンサル案件の中で戦略の実行まで行うものを指す
「初めて自分で作ったらすごい楽しかった」コンサルで感じた、仕事の面白さ
KEN:当時は今と違って、インプリケースも少なかったのでしょうね。今ではハンズオンケースや常駐ケースが増えてきたので「パワポ作って終わり」だけだと成長しないでしょうが。
岩瀬:はい。当時はインプリケースが本当に少なかった。
インターネットが今ほど一般的ではなかった頃、とあるレコード会社の仕事で、ネットでサンプルを聞かせて買うかどうかアンケートをとり、売上予測して、広告宣伝費の投下を予想するという提案をしたことがありました。今では当たり前のようにやっていると思いますが、当時は「いやいや、音楽というのは生ものだから出してみないと分からないんですよ、コンサルさん」みたいなことを言われました。
なので、音源のデータをもらって自分でサンプルのWEBページを作り、その上で、皆に聞かせて投票させる仕組みを作ったら、それがとても楽しかったのです。こうやりましょう! と言うだけではなく、実際にやってみた。それがとても楽しいなと。僕は作る方が好きなんですよ。
新卒選びは、大差はない。だが、「人格形成」に影響を与える
KEN:今でいう「インプリケース」を通じて作る楽しさに気づいたと。コンサルに限らず、大企業化しすぎると「自分が何作っているのか、分からない時」ってありますもんね。岩瀬さんはこれまで「事業を作る側」と「アドバイザーの立場」を両方見てきたわけですが、今もし、21歳の子どもがいたとして、就活をしていたとしたら、どんなアドバイスをされると思いますか?
岩瀬:正直、新卒では、どこに入社してもあまり変わらないと思います。
とは言いつつそれでは答えになりませんので、矛盾することになりますが「どこに入るかで自分の人格形成が決まる」ということはあると思います。僕もBCGにいたので、エスタブリッシュメントのしきたりを肌に感じ、大企業の方々と向き合えるようになったと思います。
一方で、先ほど「恋愛と一緒」だと言いましたが、新卒にこっちの方がいい、悪いはないと思います。こっちの人と付き合った方が、あっちの人よりいいとか、そのような優劣はないと思うのです。いろいろな企業を見て、自分がビビッとくる、こういう人たちと働きたい、こういう先輩みたいになりたいと思えるところに入ればいいと思いますよ。
「岩瀬さん、保険いつまでやるの?」と聞かれ、「では、何ならいいの?」と返すと誰も答えられない
KEN:いわゆる「青い鳥を追うな」ということですね。私も日系・外資・ベンチャー全部経験しましたが、それぞれにリスクがあって優劣なんてないですもんね。どこに行ってもデメリットもメリットもあると。
岩瀬:はい。そしてこれは新卒に限らず、社会人すべてにいえることではないでしょうか。
僕は今でも「岩瀬さん、保険いつまでやるの?」と言われるのですが、「そもそもなぜ辞める前提なの? 保険は面白いのになぜ分からないの?」と感じています。
その人は無意識のうちに、この仕事はよくてこの仕事はつまらないと序列を持っているということです。僕はいろいろな仕事を経験してきましたが、序列などないと思っていますので、「では、何をやったらいいですかね?」と聞くけど、誰も答えられない。
答えはないんですよ。もっといい仕事があるわけではないから。
海外で働くといっても「オフィスの中に入ったら同じ」
KEN:面白いですね。外資・日経・ベンチャー、こういう大枠の切り口でいうと「グローバルと日本の働き方の違い」という切り口もあります。こちらについてもお聞きしたいです。
具体的には「日本人が世界と比べて、違うと思っているけど、意外と違わないこと」も多いんでしょうか。
岩瀬:そうですね。「海外で働くといっても、オフィスに入ったら一緒」だと思います。例えば「いつか海外で働いてみたいです」と思う人がいる。それだけ言うとかっこいいのですが、オフィスの中に入ったら一緒です。冷房がちょっと寒かったりして(笑)、パソコンの前で電話して、エクセル・パワポ使って。多くのことが標準化されているので、言葉がちょっと違うだけでどこへ行っても一緒ですよ。あえて言えば、アメリカなら昼食で外には行かず、ランチオーダーしてテーブルに来たとか、そんな違いしかないですね(笑)。
有楽町のガード下で言われた、「あの人たち、なぜ家帰ってご飯食べないの?」
KEN:言われてみるとそうですね。東京の六本木で働くか、大阪の梅田で働くか、福岡で働くか、ぶっちゃけオフィスの中にいる限り、大して変わらないと。反対に、「日本人が気付いていないけど、世界と違うこと」はありますか?
岩瀬:特にヨーロッパは、バカンスの取り方や、仕事の会食の考え方は違いますね。例えば、仕事の会食では会社の人とはあまり飲みに行きませんし、ご飯は家で家族と食べます。会社の仲間とは、ブレイクファストミーティング(朝食しながらの会議)やランチが主ですね。
ある時、有楽町のガード下を歩いてたら、一緒にいたイギリス人の友達がサラリーマンを指差して「あの人たちは、なぜ家帰ってご飯食べないの?」と言ったのです。その質問がとても新鮮で。日本では、なんとなく飲んで帰るという慣習がありますよね。そこが違うなと思いました。
日本は伝統的に職場が一つのコミュニティだったりします。会社の人と一緒に居る、同じ社宅に住んで、運動会やって、奥さん同士が仲良くて、といったことが以前よりは減りましたがまだある。海外の方が、仕事と家庭はハッキリ分かれていますかね。
就職試験は優越ではない。それを前提に楽しむことが重要
KEN:ありがとうございます。最後に、ワンキャリアのサイトには、月間数万人の学生が訪れます。彼ら、彼女らへ向けたメッセージをお願いします。
岩瀬:僕は転職活動の経験が数回ありますが、実は面接で何度も不合格をもらいました。
冒頭でも話しましたが、就職試験は優越ではなく、そのタイミングに企業がどのような人材を求めているかが、ほぼ全てです。不合格でも落ち込む必要は全くありません。恋愛と同じで、「あの会社は見る目がない」ぐらいに思っておけばいいと思います。
ただし、与えられた時間内できちんと自分の良さを伝える事は重要です。力を出し切ったならあとは好みの問題です。その事を前提に就職活動を目一杯楽しんでください。
KEN:貴重な時間をいただき、ありがとうございました。
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・99%の人は天職に出会えていない。でも、それでもいいと思う
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