「第一志望の企業に落ちました。新卒では別会社に入り、その後、中途で入るためにはどうすればいいでしょうか」
東京大学 修士2年 ♂ 朝山さん
北野唯我(KEN)です。
この連載では、私のこれまでの経験を踏まえて、皆さんのキャリア相談にお答えしています。
「この人、すごいな」マッキンゼーに内定した彼の話
冬のある日。私のフェイスブックメッセンジャーに一通のメールが届きました。
差出人はとある社会人1年目、内容は「KENに会いたい」という旨でした。話を聞くと、学生時代にマッキンゼーに内定したものの、大手金融会社に入社し1年がたとうとしているところで、現在転職を考えているようでした。
面白い経歴に、私は「会いましょう」と即答。
われわれは渋谷の中華料理屋で落ち合うことになりました。
面談した彼は開口一番こう言いました。
「私は今、ボストン コンサルティング グループへの転職を考えています」
新卒でマッキンゼーに内定したものの、最終的に金融業界に入社した彼。
その後、わずか1年で、再度、外資コンサルへの転職を考えているとのこと。その理由を聞くと
「やっぱりもっとバリバリ仕事がしたいです。仕事自体は充実しているものの、10年年上の先輩を見ていると、今の自分がやっていることと大差を感じられない。成長が感じられる場所にいきたい」
そもそも、彼が新卒でマッキンゼーを断り、金融業界に入社した理由は「先輩とのつながり」が要因でした。体育会系出身の彼は、部活の先輩や周りのポリティクス(政治的)な力に押され、金融業界に入社せざるを得なかったようです。
もちろん、普通の部活動程度ではここまで強力な力は働きません。ですが、彼はとあるスポーツの領域で「学生No.1」の選手でした。プロ選手とのつながりもあった。強い力が働き、どうしようもない力によって金融業界への入社が決まったようでした。
しかし、彼は入社してすぐに思い直します。「やはりマッキンゼーに行っておけば良かった」と。
彼のすごさはその先にあります。気持ちを切り替え、「せっかく入社したなら、同期の中で必ずNo.1になる」と決意。そして、実際に、同期の中でぶっちぎりNo.1の成果を出すようになりました。仕事も楽しかった。しかし周りを見渡したとき、彼は「自分の10年先」を考えるようになったと言います。
その企業では10年年上の先輩も、新卒の自分とほぼ同じ業務をやっています。自分の将来を考え、彼は転職を決断します。さまざまな要素を考えてマッキンゼーに加え、ボストン コンサルティング グループを転職先の選択肢に入れたようでした。
私はこの話を聞いて、年下ながら素直に「この人、すごいな」と感じました。
「自分の行きたい企業に、自分の力以外の理由によって行けない」という環境。普通なら周りの環境や、他人を言い訳にして、ふてくされそうなところです。ですが、彼は折れずに「その場所で咲くこと」を考え、実際に成果を出した。
このマインドセットこそが、彼が新卒で難関企業の1つといわれるマッキンゼーに内定した理由だと感じました。
「証明できる優秀さ」をもつ人材を目指すこと
本題に戻ります。質問は、新卒で行きたかった企業に中途で行く方法でした。結論からいうと、中途の人事が欲しいと思う「証明できる優秀さ」を持つ人に成長することです。
どういうことでしょうか。
新卒の時点で特に求められる要素のいずれかが足りなかったと素直に自己認識しよう
まず、自らの現状を素直に認識しましょう。新卒の採用面接で受からなかったということは、シンプルにいえば「その企業が新卒に求める要素のいずれかが、その時点で足りていなかった」ということです。
その上で「中途で入るために必要なもの」を明確にし、それを埋めるための経験を積むことです。では中途で入るために必要なものとはどんなものでしょうか。
そのポイントは2つだと思います。
1. 専門性が明確or成果が明確にでる職種を選ぶこと2. 業界2位以上の企業に入社し、その会社の中でNo.1を取る
1. 新卒と中途で求められる要素は違う。中途は「実績」「専門性」が見られる
1つ目は、専門性が明確or成果が明確にでる職種を選ぶことです。
新卒で求められるものは、企業によって千差万別ですが、共通するのは「地頭」と「素直さ」です。これは新卒採用は「成長」を前提にして人を採るためです。一方で中途は、会社の成長のために足りない人材をピンポイントに採っていきます。
現に、新卒では「職種」が明確にされない日系企業でも、中途採用の募集はほとんどが「職種」規定されています。よって中途面接で「これができます」と言うために、新卒で行くのは専門性が明確な企業を選んだほうが無難です。
あるいは、中途面接では「個人の成果」を必ず聞かれます。よって新卒で専門色が低いと思われがちな営業職を選ぶ場合、個人の成果が明確にあらわれる企業を選んでおいたほうがいいでしょう。中途面接の際に「自分の成果」を客観的に証明できるためです。
2. どの業界でも、優秀な人材はNo.1とNo.2に集まりやすい
2つ目は「業界2位以上の企業に入社し、その会社の中でNo.1を取ることを目指すこと」です。No.1を取る理由は、上述の通り、面接の場で実績をアピールしやすいからです。
では、なぜ業界2位以上なのでしょうか。
それは、中途を担当する人事が「どんな業界でも、優秀な人材は業界2位までに集中しやすいこと」を人事は経験則で知っているからです。ここでいう業界1位と2位というのは、どんなニッチな領域でも構いません。例えば、広告代理店であれば、インターネット領域における一位か二位の会社でも問題ありません。(ちなみに反対に業界3番手に入り、同業界の2位〜1位を目指すのは私はあまりおすすめしません)
また、優秀な人たちと切磋琢磨(せっさたくま)できる環境は、あなたの実力にポジティブな影響を与えます。これらを踏まえると、優秀な人材が集まりやすい、業界1位・2位を私はオススメします。
有名企業に受かった人には、やはり受かった理由が存在するが、入社したら「20対80の法則」もやはり存在する
最後に、お伝えしたいのは有名企業に受かるには、やはりそれだけの理由が存在するということです。冒頭の彼の例であれば、素晴らしいマインドセットと、成果に対する執着心でしょう。一方で、入社後、全ての人が感じるであろうのは「いかに有名企業あろうとも、実力は千差万別であること」です。いわゆる20対80の法則(※1)です。特に「大企業に入ること自体がゴールである人」は入社したあとに伸び悩みを感じることでしょう。就職活動より、入社後のほうが人生は長いです。入ってみると意外に良い会社だった、というケースも多い。まず置かれた場所で咲くことを意識し、もしもそのときが訪れたら、チャンスを逃さないようにしましょう。
(※1)20対80の法則:全体の数値の大部分は、一部の要素が生み出しているということ。パレートの法則とも。この場合は、仕事全体の80%の価値は上位20%の業務を担当する人が生み出しているということ。
本回答が皆さんの疑問を少しでも解消できたとしたらこれ以上幸せなことはありません。では、また次の機会に。
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