今、この記事と皆さんをつなぐ「インターネット」。さまざまな仕事、あるいは皆さんが取り組む就職活動も、インターネットの存在がなければ成立しないと言っても過言ではないでしょう。すでにその存在が意識されることがないほど、インターネットは私たちの生活に根付いています。
日本におけるインターネットの歴史は、約30年ほど前に始まりました。そして、時を同じくして日本でのビジネスを開始したグローバルカンパニーがあります。それが、ネットワーク機器やシステムの開発、販売を手がけるシスコシステムズ(以下、シスコ)です。
私たちの生活になくてはならないインターネット。そのインターネットにとってなくてはならないものが「ネットワークインフラ」です。同社は、インターネット黎明(れいめい)期からインフラ構築という役割を担うことで、日本のインターネットを支え続けてきました。
今回お話を伺った、シスコの業務執行役員を務める金美延さんは、そのことを「私たちの誇り」と表現します。「日本のITビジネスは、いま大きな転換点にある」と語る金さんに、同社の歩みとこれからの展望、そして、同社が注力している「働きがいのある環境づくり」について詳しくお聞きしました。
金美延:業務執行役員・カスタマーエクスペリエンスセンター テクニカルアシスタンスセンター
Win-Winのビジネスパートナーシップを重視し、業務管理、人材育成、従業員満足度の向上を推進するリーダーとして活躍。現在はシスコシステムズ合同会社にてテクニカルサポート本部のディレクターを務める。
<目次>
●情報伝達のための「線路」を築く仕事
●主体的に組織されたコミュニティが、会社の環境を変える
●「社員が社員を育て、助け合う文化」を醸成する
●「やわらかいインフラ」を実現し、日本を基盤から変えていく
情報伝達のための「線路」を築く仕事
──まずは、御社の事業内容からお聞かせください。
金:当社はネットワーク機器の開発・販売を手がけるハードウェアメーカーであり、ソフトウェアベンダーでもあります。一般的には、ハードウェアメーカーだというイメージが強いと思いますが、会社全体の売上比率の約6割はソフトウェアサービスが占めており、ハードとソフトをバランスよく開発・販売している会社です。
具体的には、サービスプロバイダーやデータセンターで使用されるルータースイッチ、ファイアウォール、無線装置などのネットワークデバイスに加えて、セキュリティやクラウド、コラボレーションなどに関するソフトウェアサービスなど、非常に幅広い範囲をカバーしています。
コロナ禍をきっかけに一気に普及した在宅勤務やリモート授業、オンライン会議なども、高速データ通信網を支えるハードウェアやソフトウェアがあるからこそ成し得るものです。
──シスコが日本法人を設立したのは1992年ですよね。この年、日本における商用インターネットプロバイダーサービスを提供する会社が設立され、翌年サービスを開始。日本における貴社の歴史とインターネットの歴史の始まりは、ぴったり重なっていると言ってもいいと思います。インターネット黎明期から現在に至るまで、貴社はどのような役割を果たしてきたのでしょうか?
金:インターネットのインフラ構築、整備において大きな役割を担ってきましたし、それが私たちにとっての誇りになっています。もちろん、日本の情報インフラ構築に貢献したのは私たちだけではありません。行政、あるいはさまざまな企業の尽力があったからこそ、今日のインフラがある。しかし、こと情報通信を可能にするためのハードウェアの提供という意味において、私たちが果たしてきた役割は決して小さくないと自負しています。
──日本にインターネットの基盤をつくった、ということでしょうか?
金:分かりやすく言えば、「線路」を提供したということですね。例えば、紙に書かれた情報をデジタル化したとしましょう。そのデータを「電車」に見立てると、それがある地点から別の地点に走っていくためには「線路」が必要になります。
どれだけ高性能な「電車」をつくったとしても、「線路」がなければそれは移動できませんよね。私たちは、情報という「電車」がスムーズに走るための「線路」をつくり、それを整え続けてきたんです。
主体的に組織されたコミュニティが、会社の環境を変える
──とても重要な役割を担ってきたのですね。また、貴社は「働きがい」のある会社としても認知されています。Great Place To Work® Institute Japanが毎年発表している「日本における『働きがいのある会社』ランキング ベスト100」の常連であり、2021年度版では大規模部門1位、2022年度版では2位、そして2023年度版では1位を奪還しました。社員の皆さんに大きな働きがいを感じてもらうために、特に力を入れているのはどのような点なのでしょうか?
金:私たちが最も重視しているのは、一人一人の社員が価値を生み出している実感を持ってもらうことです。具体的に言えば、会社としてステークホルダーの皆さんに価値を提供するために、「自分は欠かせない存在である」と感じてもらいたいと思っています。
シスコは、インクルーシブなつながりや多様性を非常に大切にする会社です。ポジションや担当業務が異なっていたとしても、全てのメンバーがそれぞれの存在価値と意見を大切にし、自社が提供する付加価値にそれらが反映されていることを実感できる環境を整えています。そういった環境があるからこそ、大きな働きがいを感じてもらえているのです。
──社員一人一人の意見が、事業運営や労働環境にしっかりと反映されているということでしょうか?
金:そうですね。もちろん、トップダウンで「こうしていこう」と、事業の方針や働き方が決まることもあります。ただし、そういった意思決定ばかりが積み重なると、社員一人一人が自らの存在価値を感じられなくなってしまいますよね。
シスコでは社員が自発的にディスカッションをし、その内容が会社運営に反映されることがよくあるんです。社内にはさまざまなテーマに関するコミュニティが存在し、そのコミュニティから社内の労働環境や就業規則などに対する提言がなされます。
例えば、「I&C(インクルージョン&コラボレーション)」に関するコミュニティ。「多様な人材がより活躍できる環境を整えるために、どんな施策を実施すべきか」などについてディスカッションし、その内容が実際の人事施策などに反映されるんです。実際、コミュニティからの意見を参考にして「彼/彼女(he/she)」といった人称代名詞を廃止しました。
──そのコミュニティには、どのようなメンバーが所属しているのですか?
金:部署を問わず、有志のメンバーが所属しています。このコミュニティは、会社として組織しているわけではなく、あくまでもメンバーが自発的につくっているものなんです。
──メンバーの皆さんが、主体的により環境を良くするためのコミュニティをつくり、運営している?
金:トップダウンで「こういうコミュニティをつくって、会社に提言してくれ」と要望することはありません。他にも、メンタルヘルスに関するコミュニティも存在し、「メンタルヘルスに悪影響を及ぼしうる長時間労働を是正するために、どんな施策を打つべきか」などについて活発にディスカッションされています。
男女間賃金の格差の問題、育休制度、産休明けのサポート体制など、全てのメンバーにとって働きやすい環境を整えるための提言や改善案が、さまざまなコミュニティから生まれているんです。
「社員が社員を育て、助け合う文化」を醸成する
──まさに「自分の意見を会社運営に反映する場」になっているのですね。
金:そうですね。また、人材育成に関するコミュニティがあることも、シスコの大きな特徴の一つだと思います。会社としては「新入社員に対して、必ずメンターを付けよう」といった規則を設けているわけではないのですが、多くの社員が社内にメンターを持っています。なぜかというと、メンティーとメンターのマッチングを担うコミュニティが存在しているからです。
というのも、以前から「さまざまな部署の人と交流することによって、自らのキャリア形成やスキルアップにつなげたい」という声がありました。会社が動くよりも前に、そういった声を聞いたメンバーがコミュニティを立ち上げ、メンティーとメンターをつなぐ仕組みをつくったんですよね。
金:最初は、コミュニティのメンバーがメンターを求める社員に、どんな人とつながりたいかをヒアリングし、社内から候補者を選びマッチングしていました。もちろん、メンターとなる側にも通常業務があります。負担をかけすぎないように、厳しいレギュレーションは設けず、それぞれがそれぞれのできる範囲で助け合おうと。
そういったことを繰り返すうちに、メンターのプールができたんです。それに、メンティーとしてサポートを受けた人が、今度はメンターとして新入社員をサポートすることが文化として定着しつつあります。
──社員が起点となり、社員が社員をサポートする文化が生まれたわけですね。
金:はい。ただし、会社として方針を示すことはとても重要なことです。2021年8月には、2024年度までの3か年の成長戦略として「Cisco Japan Project Moonshot」を打ち出しました。事業上の重点戦略などとともに、組織開発などに関する方針を示しており、その中には「社員が社員を育て、助け合う」文化を醸成することも含まれています。メンティーとメンターをマッチングするコミュニティの存在は、まさにその文化を体現しているんです。
ちなみに、これまでは人の手によってマッチングしていたのですが、最近では技術力を生かしてマッチングのためのソフトウェアを開発しています。このソフトウェアが完成すれば、より効率よくマッチングができるようになるでしょうし、ゆくゆくは一つのサービスとしてリリースできるかもしれませんね。
「やわらかいインフラ」を実現し、日本を基盤から変えていく
──よりよい社内環境をつくるために生み出されたものが、事業化されることもあるのですね。今後の事業方針についてもお聞かせいただけますでしょうか。
金:シスコは今まさに大きな転換点を迎えています。先ほども言及したように、私たちは、日本のインターネットとともに成長してきました。創業からこれまでの間、IT業界ではメインフレームからオープンシステムへの移行、クラウド環境の普及、IoTの発展など、さまざま環境変化が生じましたが、インターネットの普及が社会にもたらしたインパクトを凌駕するものはなかったと思います。
しかし、ここ数年の間に生じた「DXの波」と「生成AI(人工知能)の進化」は、インターネットの普及と同等のインパクトを社会にもたらしうると感じているんです。今後はこれらをうまく取り入れた企業がそれぞれの業界でイニシアティブを握るのは間違いないでしょうし、そういった意味において、私たちもまた大きな岐路に立っていると認識しています。
──これまでの「当たり前」が大きく変化しようとしている中で、「どのような価値を提供するか」あるいは「その価値をどう創出するか」が問われている?
金:そうですね。例えば、少し前まで働く場所はオフィスに限定され、使用するデバイスは会社支給のパソコン、環境はオンプレミスであることが当たり前でした。アプリケーションのライフサイクルは比較的長く、セキュリティに関してはファイアウォールで保護している、といった会社がほとんどだったと思います。
しかし、これらの前提は全て崩れました。働く場所、使用するデバイス、サーバーの管理体制、セキュリティに対する考え方……、何もかもが変化しています。このような状況において、これまで通りのソリューションを提供しているだけでは、社会に対して価値を発揮し続けられないと考えているんです。
──今後、シスコとしてはどのようなことに注力するのでしょうか?
金:「やわらかいインフラ」の実現です。従来のような業務要件やデータ要件が確定した後に設計・構築された「かたいインフラ」環境では、ビジネスニーズや環境変化に柔軟かつ迅速に対応できません。急速に外部環境が変わり続けるマーケットの中で、これは企業にとって致命的な問題になります。
この問題の解決策が、「やわらかいインフラ」の実現です。「インフラファースト」の考え方を元に、将来的な変化や拡張に対応できる「やわらかいインフラ」を構築する。そうすることによって、従来の「かたいインフラ」が苦手としていた「多様性」「順応性」「拡張性」「セキュリティ」「迅速性」の実現が可能となり、日本のITビジネスは大きく変わることになると考えています。
──日本のITビジネス全体が大きな転換点にあるからこそ、それを基盤から支えてきたシスコにも変化が求められているわけですね。
金:日本のインターネット産業が、あるいは社会全体が変化するためには、まずその基盤となるインフラから変えていかなければなりません。私たちは、基盤を担っていることに誇りを持っています。根底から社会を支えたい、変えたいと思っている方にとってはこれ以上ない環境だと思っていますし、ぜひ仲間になってもらいたいです。
金:それに、シスコには多様なプロダクトがあるので、例えばルータスイッチに飽きたとしたら、セキュリティにチャレンジすることもできるし、ソフトウェア開発に転じることもできる。まさにITビジネスを「基盤」から学べる環境があるので、IT領域で長く活躍したいという方のファーストステップとして最適なのではないかと思っています。
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【取材・執筆:鷲尾諒太郎/撮影:是枝右恭/編集:萩原遥】