こんにちは、ワンキャリ編集部のトイアンナです。
就活で人気がある職業に「クリエイティブ職」と評される職業があります。
「クリエイティブ職」というと、美大生が活躍する「デザイナー」を思い浮かばれるかもしれません。しかし実際には、TV番組や広告、雑誌などの制作の過程に関わる業務、すべてを「クリエイティブ職」と呼びます。企画、営業、制作など多岐にわたります。今回は広告業界に絞って、それぞれの業務の違いや関わりを、広告の制作のはじまりから順を追ってみていきます。
持つべき視点は「上流か下流か」
始まりから完成までの全体的な業務フローは、しばしば「川の流れ」に例えられます。こうすることで、プロジェクト稼働時に「誰が誰へ依頼するか」「今は誰がどのような仕事をしているか」ということが可視化され、それぞれの職種がより効率的に動けるようになります。また、自分が「どこで」「誰のために」「どのように」貢献したいと考えているのかが見えやすくなります。
広告制作においては以下のようなフローで制作が進みます。ここからは上流である(1)広告主と、中流に位置する(2)広告代理店を中心に、それぞれの企業の中でどの職種がどのような仕事担って企画が進んでいくかを詳しくお伝えいたします。
(1)広告主(スポンサー):「この製品を宣伝したい」目的や条件など概観を決定する
広告を作りたいと最初に考えるのは、広告主である企業です。多くはメーカーですが、最近はアプリ制作会社や保険業界も増えてきました。テレビで「この番組はご覧のスポンサーの提供で、お送りしております」とアナウンスされる企業を想起してもらえればと思います。
広告主の社内には、消費者目線で考える「マーケティング部」と会社目線で考える「経営企画部」があります。彼らが広告制作の最も川上にあたります。彼らが社内のマネジメント層に、広告の提案を出して広告に使うための予算を勝ち取り、それを商品ごとに振り分けます。その予算獲得の手段として、「マーケティング部」は市場の調査を経て「もっと製品を売るには、どんな訴求をすればいいか」という消費者目線の手段を取り、「経営企画部」は社の方針を優先し「2020年までに売上を2倍にする」という企業目線の手段を取ります。
広告の目的や条件などの概観が決まったら、ひとつ川下の広告代理店の担当となります。
(2)広告代理店:「どうやって宣伝していこう」広告を企画し主導する
大手広告代理店の仕事は、広告主である企業から「この商品を売るための広告キャンペーンを提案してほしい」と相談されるところからはじまります。
広告代理店の「営業」は、広告主から、商品についてやキャンペーンの方針について説明を受けます。広告主によって「とにかく女子高生に売りたい」というようなザックリした相談で広告代理店に任せるところから、ブランドロゴの使用から芸能人まで細かく指定するところまでさまざまです。広告代理店の営業は、「どこまで広告代理店の裁量で動いていいか」を調整したうえで、案件を自社のマーケティング部門が扱いやすい形に固めて持ち帰ります。
このように、広告主と自社の間に橋をかけ、両者が最高のパフォーマンスを発揮できるよう常に調整し続けるのが広告代理店の「営業」の仕事です。
「営業」が持ち帰った案件は、「ストラテジープランナー(ストプラ)」に廻されます。ストプラは調査の裏付けのある戦略を打ち立てる部署です。そのストプラが営業とともに「クリエイティブ部門」のサポートを受けて戦略を練ります。「クリエイティブ」部門は、デザイナー、コピーライターなどが所属する「具体的なアイデアを出すアーティスト集団」です。常識にとらわれない発想で広告の形を考えます。
こうしたさまざまな職種が一丸になって、スポンサー企業の希望に沿う戦略を作ります。営業はそれを持って、広告主と数回やりとりをし、企画のGOサインを勝ち取ります。
華やかなイメージの広告代理店ですが、その裏側は泥臭い仕事が8割ともいわれます。
こうして広告のコンセプトやプランなど企画が決まったら、次は、広告制作会社やメディアの担当です。
(3)制作会社とメディア―頭と手と感性で「広告」を作り上げていく
3-1 制作会社:「文字からイメージを発想する」
広告代理店は広告主からお金を受け取り、映像やウェブサイトを作るデザイナーが揃う「制作会社」へ制作を依頼します。制作会社はスポンサー企業から直接話を聞く機会がないことも多いので、いかに広告主と代理店の正確な意図を伝えられるかも、営業の手腕です。
制作会社はとにかく、「限られた予算と納期の中でいかにクオリティの高い制作物を作るか」が勝負。スポンサー企業が最も伝えたいメッセージを写真や映像などの「言葉ではないモノ」で伝える必要があります。営業の説明と、文字だけの資料から、期限内にいかに消費者を惹きつける形を作り上げられるか、というシビアな世界です。
3-2 メディア:「幅広い媒体の力を持って消費者を動かす」
メディアは、広告代理店が提案した内容に適した媒体を売ります。CM枠や雑誌・新聞広告や甲子園球場の看板まで幅広い媒体がその候補となります。
メディアの仕事は視聴者を飽きさせないコンテンツを用意し、消費者を動かすことです。最近は特にインターネット広告やSNSを介して消費者が多くのメディアに接することから、広告主の企業が通年で抱えている「広告費」からいかに自社媒体を買わせるか、メディア・バイイング費(※1)の激しい奪い合いとなっています。
(※1)メディア・バイイング費:広告の掲載される枠に対して払われるお金のこと
それぞれに効果的な志望理由
広告主の「マーケティング」「経営企画部」
広告という企画を起こし外部を巻き込んで制作するため、抽象的な能力とまわりを巻き込みまとめる力が必要とされます。そのために、以下をアピールするとよいでしょう。
・顧客のニーズを調査し、製品やサービスのアイデアを生み出す分析能力
・プロジェクト発信の責任者としてチームをまとめていくリーダーシップ
・予算やスケジュールの調整など、他部門の力を借りてプロジェクトを進めていく調整能力
・どのように宣伝するかという広告全体の見通しを立て、予算獲得のためにも企画の必然性をマネジメント層にアピールする力
広告代理店
華やかなイメージの広告代理店ですが、その裏側は泥臭い仕事が8割ともいわれます。ここを志望する就活生は、それぞれ以下のポイントを意識するとよいでしょう。
営業
・難しい交渉を成功させた折衝能力
ストプラ
・新しい広告とスポンサーの希望をマッチさせる力
クリエイティブ
・スポンサーの意図に沿いつつ、革新的なアイデアを出して広告や製作物の中身を考える力
制作会社
クリエイティブという答えのない領域のなかで、期限・予算を守り成果物を作る力が必要です。そのために、これらを意識しましょう。
・厳しい期限内で成果物を作りあげる計画力
・限られた資源のなかで期待を超える制作物を作る力
メディア「バイイング部門」
メディア業界は広告業界と並んで華やかな業界であると称されますが、その裏側は広告業界と同じく、高いコミュニケーション能力と折衝能力、そして大きなキャパシティが求められます。この業界を志望する就活生は、以下のような能力がアピールポイントとなるでしょう。
・多数のステークホルダーの意見を調整する能力
・トラブルが起きたとき機転を利かせてカバーする能力
おわりに
ここまで、上流から下流まで広告制作の一連の流れをお伝えしてまいりました。登場した職種、すべてが「クリエイティブ職」と呼ばれます。この流れのさらに川下には、消費者調査を行うリサーチ会社や、メディアの下で制作を行う企業が控えています。
たったひとつの広告制作でこれだけ企業が絡むということは、あなたに向いている業界もきっとあるということ。志望動機を練る上で、自分はどこでどのような仕事をしたいのか、ということを踏まえてキャリアプランを描いてみてください。