こんにちは、清原です。
前回の記事「たかがバイト、されどバイト。長期インターンに負けないガクチカがそこにある」をお読みいただいた方、ありがとうございました。
現在私は、新入社員としてIT企業で働いていますが、大学時代にプログラミングを勉強したり、インターンで分析の仕事をしたりというような経験はありませんでした。
大学1年生の時には、お誘いいただいていた時給3000円の家庭教師を断り、渋谷のマクドナルドで働くことを選びました。
プログラミングを勉強するわけでもなく、また高時給のバイトを断ってまでマクドナルドでのアルバイトを選んだのかと思われる方がいらっしゃるかもしれません。
しかも、マクドナルドでのアルバイトは、機械的な作業の繰り返しにも見えるため、「マックジョブ」がそのような仕事の代名詞になっているほどです。
しかし、私はアルバイトの方が、得られる経験やスキルが多いと考え、マクドナルドでアルバイトすることを選んだのです。
実際にアルバイトを通じて、マーケット感覚を養うことや、現場でのシステムの使われ方を知れるなど、今の仕事に直接影響することをたくさん学べたので、全く後悔はしていません。
そこで今回は、いわゆる「マックジョブ」で何を得られたのかをお話ししたいと思います。
<目次>
●バイトとは「生のデータ」と触れ合い、データリテラシーを高められる場である
●数字を見ているだけでは「なぜビッグマックが売れたのか」は一生分からない
●マクドナルドでマーケティングスキルを鍛える極意は「キャンペーン」にあり
バイトとは「生のデータ」と触れ合い、データリテラシーを高められる場である
マクドナルドで働き始めた後、最初はキッチンの仕事をしていました。この仕事では、商品をいかに早く作れるかに専念し、マニュアルを素早く丁寧にこなすことを求められました。しばらくすると、レジ打ちを担当させてもらえるようになり、お客さんとじかに接するうちに、店舗にはたくさんの「データ」があふれていることに気付いたのです。ここでいうデータとは、大きく2種類に分けられます。
その2種類のデータとは、「生データ」と、「生のデータ」です。
表記は同じように見えますが、全くの別物。それぞれについて説明していきます。
まず、「生データ」について。具体的には、レジの機械で収集されるような、買上商品や買上点数、買上金額などを指します。英語では「Raw Data」と呼ばれ、収集・記録されたままで、分析などに使いやすいよう加工されていないデータを指します。
対して「生のデータ」は「Real Data」。例えば、接客中のお客さまの何気ない一言や不満そうな顔、店内での過ごしている様子といった
定量化されてレジなどの機械に収集された「生データ」になる手前の情報です。
会社の業務や、卒論を書くときなどに行うデータ分析で一般的に使用するのは、「生データ」か、誰かが「生データ」を加工した「加工データ」で、「生のデータ」が使用されることはありません。
一方で、レジ打ちのようなお客さんと接する仕事は、日々お客さんから無言のうちに発せられるさまざまな「データ」を受け取ります。このお客さんから発せられるデータこそが、「生のデータ」であり、これをどう扱うかが接客の醍醐味(だいごみ)でもあるのです。
数字を見ているだけでは「なぜビッグマックが売れたのか」は一生分からない
この「生のデータ」に触れる経験が、定量的なデータを扱うときに大きな力となるのです。
というのも、「生のデータ」に触れることで計測できるデータがすべてではないということを強く認識することができるからです。
ひとつ例を挙げましょう。私が、渋谷のマクドナルドで働いていたときに、「英語のメニューはないか?」と尋ねてきた外国人のお客さんがいました。
当時、渋谷のマクドナルドに英語のメニューはなく、私も上手く商品を説明できませんでした。そのお客さんは悩んだ揚げ句、結局世界共通のメニューであるビッグマックのセットを注文したのでした。
このとき、レジのPOSデータ(※)には、ビッグマックのセットが売れたという事実のみが記録されますが、そのビッグマックは、彼が自分が知っているメニューを「仕方なく」選んだという意味で「消極的ビッグマック」とも言えるでしょう。
しかし、POSデータ上には、売れたビッグマックが心からそれを食べたくて頼んだ「積極的ビッグマック」なのか、先の例のような「消極的ビッグマック」なのかは表現されません。POSデータを見ただけでは、いくら数字をいじって分析したところで、なぜビッグマックが売れたのかなど分かりません。
(※)……レジで商品が販売されたときに記録されるデータ
この例は極端かもしれませんが、自分が見ているデータよりも細かい項目があることを知らないと、ときに間違った分析結果をもたらしてしまうのです。
データは単なる数字ではありません。必ず「背景」が存在します。それを理解しない限り、データが持つ「本当の意味」は決して分からないのです
現場でたくさんの「生のデータ」に触れる経験があることによってで、目の前にあるデータの背景を想像するようになりますし、測りきれていない別の要素が存在するのではないかと意識するようにもなります。これが、結果的に正しいデータ分析へとつながっていくのです。
マクドナルドでマーケティングスキルを鍛える極意は「キャンペーン」にあり
マクドナルドで学んだのはデータリテラシーだけではありません。マーケティングについても、大きな学びを得ることができました。
マクドナルドに限らず、大きなチェーン店では、毎月のように新商品のキャンペーンが展開されます。
これらのキャンペーンを店員としてただ提供するのではなく、ちょっと立ち止まってその意図や効果を考える習慣をつけることで、飛躍的にマーケティングの経験値を増やすことができます。
新商品のキャンペーンが始まるたびに、「自分が消費者だったら買うか?」「これから始まるキャンペーンのターゲットは誰なのか?」「本当にそのターゲットは買ってくれるのか?」「この新商品はヒットするのか?」などを少し考えてます。
そうすると、予想と外れてしまうときや、全くヒットしないような新商品と遭遇する機会が生まれるでしょう。
このときこそ自分の経験値を上げるチャンスです。「なぜその商品はヒットしなかったのか」「どうすればヒットしたのか」などを、現場で自分が見てきた情報を基に考えてください。
この「生のデータ」を基に思考することこそが、アルバイトの醍醐味なのです。この思考を繰り返すことで、自分の消費者感覚と世間一般の消費者感覚をすり合わせていくことができます。
そうすることで、新しいキャンペーンがヒットするかしないのか、という予想の精度が上がっていき、マーケティングのセンスも高められるでしょう。
アルバイトを単純作業と捉えるか、創造的な仕事と捉えるか
このように考えると、アルバイトでの仕事は、実は単純作業ではなく、考え方次第でいくらでも創造的な仕事に変えることができるのです。それは、「マックジョブ」でもです。
レジ打ちの仕事を単に「レジで合計金額を出して、商品を包んでお客さまに渡す仕事」と定義してしまえば、それはただのつまらない単純作業になってしまいます。
しかし「どういう人がどんな商品を買っているのか?」「キャンペーン中の商品はどのぐらい売れているのか?」「どういう決済手段で支払っているのか?」「どうすればもっと売れるのか?」という視点を持ちながら働くなら、レジ打ちのバイトは単純作業ではなくクリエイティブな仕事へと変わります。
そのような思考の過程を経て生まれたものは、他人にはまねできないものであり、オリジナリティをもたらし、自分でなければいけない理由を生み出すでしょう。
その経験は、もちろんガクチカにも生かせるでしょうし、会社に入った後にも確実に生きてきます。
どんなタイプのビジネスでも現場は存在します。その現場での仕事を、ただのやらされ仕事と捉えるか、「生のデータ」の宝庫と捉え、創造的な仕事にするかは自分次第なのです。
次回は、私がマクドナルドの後に経験したGUでのアルバイトの奥深さをお話しできればと思います。お楽しみに!!
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(Photo:Drozhzhina Elena/Shutterstock.com)
※こちらは2020年4月に公開された記事の再掲です。