「長期インターンシップをしています」、そう話す学生に出会うことが多い。
『就職活動ガクチカランキング』が存在しているとすれば、ランキングTOP3のサークル、アルバイト、ゼミに次いで「長期インターンシップ」がランクインしたのではないかというくらいだ。
長期インターンでは、優秀なメンバーに囲まれて、お金をもらいながら社員に仕事を教えてもらえる。成長し放題だし、給料だってもらえる。
就活生にとっては楽園のような環境かもしれない。
いや、少し考えてみてほしい。本当にそうだろうか。
本当に、そんなにうまい話があるのか。
多分、答えは「ノー」だ。
長期インターンをステップアップにつなげられる学生と、そうでない学生との差は確実に存在する。
そして、後者の学生は「想像していたものと、なんとなく違う」というもやもやした気持ちを抱えながらも、解決法が分からないまま長期インターンを続けているように思う。
では、長期インターンを有意義な経験にするためには、何をすればいいのか。
私自身の体験から見えてきた「長期インターンを価値ある経験にするための方法」を、紹介したい。
上司を「使え」。質問するためにバカになれるか
社会人になると、自分が知らない情報を知っている人の話を聞くためにはお金が必要だ。
例えばセミナー。3,000円、5,000円、10,000円を払って参加するのが一般的だ。
しかし、インターンではそれが無料でできる。
さまざまな困難を乗り越え、経験を積んだ大人が目の前に大勢いる。
使わない手はないだろう。
ただ、「上司=全てを理解してくれる人」ではない。「こんなに悩んでいそうな顔をしているのに、どうして気付いてくれないんだろう」。そんなことを思っている時点で失格だ。
仮に上司が「悩んでいそうな顔」に気付いていても、声をかけてはくれないだろう。助けを求めているのか、そうではないのかを確認するほど、上司は暇ではない。
はっきり言えば、私はこれで長期インターンの最初の数カ月を無駄にした。
自分が誰よりも無知である前提で、質問をする
「ちょっとでも勉強している風の質問がしたい」「こんな基本的な質問をしてしまうのは、恥ずかしい」と思いながら、調べものをしていたらどんどん時間が過ぎてしまって、結局質問できたのは次の日。
今思えば、本当にもったいなかった。
何年も多く経験を重ねている上司からすれば、学生が調べてきたものなんて、たかがしれている。10分調べたものも、3時間調べたものも大して変わらないだろう。
自分は「ハイレベルな質問」と思っていた質問も、上司からすれば基本的な話なのだ。
極論、「これ、どうやってやるんですか?」「この言葉の意味はなんですか?」という内容でもいい。10分考えて分からないことは、思い切って聞いてみる。
「仕事が忙しそうなのに、時間を取ってしまって申し訳ない」と思うのも、心の底から理解できる。でも、大丈夫。
部下に質問に答えるのも、上司の仕事なのだから。それくらいの意識でいよう。
目的を持って、目標を進化させ続ける
「長期インターンには、目的意識を持って取り組め」
耳にタコができるくらい、長期インターンを勧める人たちから言われるこの言葉。しかし、ここには「目標」という観点が抜け落ちている。どういうことか。
見過ごされてしまうことも多いが、あえてここで目的と目標について考えたい。
・目的……最終的に成し遂げたいゴール
・目標……目的を達成するための、通過点
目標を設定せずに、目的への到達だけを目指した場合、業務の内容が中途半端になる可能性が高い。そういう学生は意外と多いのではないか。
例えば「世界一の海賊王になる」という目的を掲げた少年も、ただ海を旅しているだけでは、いつまでたっても海賊王にはなれない。「仲間を見つける」「船を作る」、目標があってこそ、目的に近付ける。
実際に、長期インターンで活躍している友人は、以下のような目的と目標を定めていた。
目的
未経験なことに挑戦し続け、絶対に乗り越えられないような壁を乗り越える
目標
1. 未経験業務である「採用」に携われる会社で長期インターンをする
2. 上司の面接に同席して、採用のノウハウを盗む
3. 会社で採用面接を行い、1カ月で1名自力で採用する
4.‥‥
そして、目的への到達のために、目標は常に進化し続けている。
いつまでも「船を作る」ことを目標にしていたら、これもまた、海賊王は程遠い。
本気でやればやるほど、就活には、不利かもしれない。
長期インターンを2社経験して分かったことだが、正直、就活目的での長期インターンは割に合わないと思う。
本気でやるほど、間違いなく、生活の中心は「インターン」になる。
就活を後回しにしなければいけないこともあるだろう。
これもやりたい、あれもやりたい。
毎日、業務のことが頭に浮かぶ。
下手をすれば、授業中に業務の対応をすることだってある。
大事な会議と、企業説明会の日程が被ることも少なくない。
しかも、他の学生がアピールする、「サークルで辞めたいと言ったメンバーを説得して、居心地の良い環境を提供した」エピソードや、「アルバイトでレジ業務を効率化させて、売り上げを向上させた」エピソードと比べると、長期インターンで残せる結果はインパクトが弱い。会社の中で、学生1人が成し遂げられることなんてちっぽけだ。
そして大体の場合、面接で会社の具体的な業務内容は話せないということも忘れてはならない。長期インターンの経験は、アピールする材料として弱すぎる。
就活へのメリットを意識しているならば、こういった現実に耐えられる人でないと、長期インターンを続けることは難しいだろう。
「なんとなく」を乗り越えてほしい。長期インターンでの挫折経験がある私が、この記事を書いた理由
かくいう私は、この夏からワンキャリアで長期インターンを始めた。業務内容に含まれていた「文章を書く仕事」を体験してみたかったというのもあるが、1社目で味わった悔しさを晴らしたかったという一面もある。
「プライドを壊すことになるよ」、最終面接で言われたその言葉がワンキャリアを選んだ決め手だった。
1社目のインターン先では、毎日同じような仕事をして、社員と楽しく話をして、日が暮れたら帰る日々だった。
「これでいいのか?」と思うことはあったが、その度に「まあ、インターン生だし」という感情で打ち消した。
ある日、営業に同行した時、「今日は、君が提案してみる?」というチャンスをもらった。でも、かたくなに断った。「失敗して怒られたらどうしよう」と思っていたのだ。怒られたことなんて一度もなかったのに。
そして、社員の期待に向き合わず、なんとなく「成長したい」という気持ちだけでインターンをしているまま、1年が過ぎてしまった。
「結局、君が何をやりたいのかが分からない」。それが、最後に言われた言葉だった。
今はやりたいことはやりたい、と言えているし、目標と目的もなんとか持てている。
経験していないことへの恐怖も少なくなった。インターンでの経験を通じて、自分が何を大切にしたいのか、少しずつではあるものの、言語化できるようになってきた。
笑ってしまうくらいつらいこともあるけど、今は、心から楽しいと言える。
中学になんとなく受かって、大学にもなんとなく受かった私が、「なんとなく」から脱却できたのは、長期インターンの経験があったからこそだと思っている。
もう一度、大学生活をやり直すとしても、私は長期インターンをやるだろう。
これから長期インターンを始める人や、今なんとなくインターンを続けている人には有意義な長期インターン経験をしてほしい、と思っている。これが、今回この記事を書いた理由だ。
一緒に、良いインターンをしましょう。
(Photo:Golubovy/Shutterstock.com)
※こちらは2019年11月に公開された記事の再掲です。