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新型コロナウイルスの感染拡大でさまざまな変化が起きている今年の就活。
2021年卒の学生は、採用スケジュールの変更、説明会・面接のオンライン化などが突然起き、不安を抱えながら就活を進めている。
一方で、2022年卒の学生の中でもサマーインターンに向けた動きが増え始めている。新型コロナウイルスの感染拡大は、22卒の就活にどんな変化をもたらす可能性があるのか。
ワンキャリアが毎年6月に発表している就活人気ランキングから考えてみたい。
今回は2020年5月24日時点で、東京大学・京都大学、または同大学院に所属する2022年度卒予定のONE CAREER会員3,045名(=同大学の就職者数約49%相当)を対象に調査。企業別のお気に入り登録数(複数選択可)を計測しており、早期就活生のトレンドを占っているといえるだろう。
今回のランキングのポイントは「コンサル人気は揺るがず、10位以下に異変あり」だ。
<目次>
●採用中断が21卒を直撃。それでもJAL、ANAはTOP50入り
●コンサルの人気独占は変わらず。さらなる早期化で「とりあえず」の志望層も増加? ●上昇目立つデベロッパー:コンサル群雄割拠のTOP10も射程圏、躍進する三井不動産 ●アフターコロナの先頭走るサイバーが電通に肉薄。IT企業ではエムスリーがGAFAMに食い込む
●東大京大のベンチャー人気ランキング:ランク急上昇はクチコミを採用戦略に組み込んだ「ユナイテッド」
●コロナで変わりつつある就活。ランキングだけでは見えない価値や情報を学生に
採用中断が21卒を直撃。それでもJAL、ANAはTOP50入り
新型コロナの影響を大きく受けたのが、航空業界だ。世界中での移動の自粛を受け、日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)は「今後の事業計画を策定することが困難な状況」として、21卒の採用活動中断を発表した。
・ANAグループ2021年度入社に向けた採用活動の一時中断について
こうした発表は22卒のランキングにどう影響してくるのか。やはり交通・インフラ企業は、それぞれランクが少し下がった傾向にある。一方で「本当に人気が落ちているのか?」という点については、この数字だけでは判断できない部分もある。
このランキングに対し、東大・京大生にヒアリングしたところ、次のようなコメントが寄せられた。
「コロナの影響が本格化する前から志望していた学生の中には、意向が下がった層も一定数いる気がするが、やはり『来年は採用があるだろう』『航空業界に行く一縷(いちる)の望みを残したい』と考えている人も多いのではないか」
コメントから考察すると、JAL、ANAに関してはTOP50に残ったことは「採用再開を待ち望む声の現れ」と考えることもできる。今回のランクダウンだけで「交通インフラ業界の人気が下がった」と判断するには時期尚早だろう。
コンサルの人気独占は変わらず。さらなる早期化で「とりあえず」の志望層も増加?
次にコンサル業界。ワンキャリアでは、これまでのランキング記事でもコンサル人気を伝えてきた。
今年もその傾向に変わりはない。戦略・総合は関係なく、コンサルは高い人気を誇っている。
実際、東大・京大生からは次のようなコメントが寄せられた。
「今年はオリンピックの影響で就活早期化が早くから叫ばれる中、コロナが起き、『暇』かつ『就活不安かも』と考える学生が増えたと思う。従来なら6月は『意欲ある学生』が就活をする時期なのだろうが、今年は『この会社インターン公開してるし、とりまエントリーするか』『戦略系は俺には無理だから総合にしよ』と考える学生が増えているのでは」
言い方を変えるなら、東京五輪、コロナのイレギュラーな要素が重なった22卒の就活は昨年以上に早期化が進み、「とりあえず」でコンサルを志望する傾向が強まったとも考えられる。
実際、ONE CAREERの22卒の東大京大会員による累積エントリー数(2020年5月末まで、ONE CAREER経由でのエントリー)を見ても、21卒の昨年同時期と比較して2.4倍と大幅に増加している。学生の声と数値の両面を掛け合わせると、「22卒トップ層は、早期化がさらに進んだ」という事実が浮かび上がってくる。
ワンキャリアでは6月22日から、「コンサル就活の特集企画」も公開する。ここ3年続くコンサルの人気独占の裏にある実態や「コンサルの真の魅力」についても検証していく予定だ。
・新卒でMBBは、まだ賢い選択か。コンサルTOP企業を退職した本当の理由
一方で、コンサル同様に学生人気の高い外資系金融は、やや順位を下げた。東大・京大生からは「大手外銀のサマーインターン募集の発表はコンサルと比べて大幅に遅かった」「コロナで景気が悪くなれば、外銀に行ってもクビになる確率が上がる。そもそも採用数も大幅に減るかもしれないので、対策に時間をかけにくい」との声もあった。
上昇目立つデベロッパー:コンサル群雄割拠のTOP10も射程圏、躍進する三井不動産
一方で、業界全体で順位を上げたのが、デベロッパーだ。
三井不動産は昨年同期から12ランク上げ、コンサル・商社に次ぐ12位にランクイン。TOP10入りも射程圏内だ。
その他の企業でも、三菱地所は昨年同期から8位順位を上げて20位に。昨年はTOP50圏外だった野村不動産、NTT都市開発も急上昇。TOP50にランクインしている。
デベロッパーはもともと学生に人気の業界であったが、近年は東京五輪・パラリンピックに向けた再開発もあり、業界全体が活気付いている。メディア含めて業界の活躍が取り上げられる機会も増え、追い風が吹いている状況だ。東大・京大の学生からは、次のようなコメントが寄せられた。
「私たちの世代は幼い頃に東京駅や名古屋駅、大阪駅などの大規模な再開発を見ている世代。さらに、近年では渋谷や虎ノ門を筆頭に再開発が進んでいることから、デベロッパーの仕事に憧れを抱きやすい環境が整っている」
アフターコロナの先頭走るサイバーが電通に肉薄。IT企業ではエムスリーがGAFAMに食い込む
昨年同期から17位上昇の29位と、TOP30入りを果たしたサイバーエージェント。
5月20日の東京株式市場では、終値ベースの時価総額で電通を抜くなど、広告業界で最も勢いのある会社といえる。
その勢いは採用市場にも表れている。3月のランキングで博報堂を抜いたことをお伝えしたが、今回は電通に肉薄した。
もはや大企業に匹敵する人気・企業規模だが、その採用手法はベンチャー・大手問わずに参考にしたい「アフターコロナの先頭を行く企業」ともいえるだろう。
サイバーは2017年に、リアルな会社説明会をやめることを発表し、コロナ前から会社説明の動画や自社制作の記事などのコンテンツを強化できていた。多くの企業がオンライン説明会への移行に追われる中、すでに就活生をアトラクトできる準備が整っていたことが、ランキングで頭一つ抜き出た背景にある。
また、IT業界ではGoogle(21位)が高い人気を誇るが、注目したいのがエムスリーだ。
ランキングでは、日本マイクロソフトやアマゾンジャパンなどのいわゆる「GAFAM」、楽天、LINEなどのIT大手を抑え、52位にランクインした。
エムスリーは5月15日に発表した2020年3月期決算で、19期連続最高益を記録し、コロナ禍でも力強い決算や経営方針を出した。エムスリーのような会社にも注目が集まっている点は、トップ層の目が年々肥えている表れかとさえ感じさせる内容だ。
一方、GAFAMのような外資系IT企業には、東大・京大生から次のようなコメントが寄せられている。
「必ずしもGAFAMをファーストキャリアで目指しているわけではない。どちらかと言うと、『就活中ならGAFAMの人とも話せる! 30で転職先にしたいから今のうちに何をすればいいか聞いてみよう!』みたいな人が多いと感じる」
GAFAMの企業としての強さは学生も認識しているだろう。ファーストキャリアの選択肢として認知されてくれば、来年以降のランキングでは急上昇もあり得そうだ。
東大京大のベンチャー人気ランキング:ランク急上昇はクチコミを採用戦略に組み込んだ「ユナイテッド」
次に見ていくのはベンチャー業界。
「コロナ不況で、ベンチャーはつぶれるリスクが高くなるのでは」と不安に思う学生もいるかもしれないが、ランキングでは着実に順位を上げた企業もいた。学生側も冷静に、一選択肢として見ている様子がうかがえる。
躍進が目立つのが、ユナイテッドだ。昨年から大きく順位を上げ、49位に食い込んだ。
アドテクやコンテンツ事業に取り組むこの会社のもう一つの柱がベンチャー投資。あのメルカリやdelyなどにも出資している。新卒採用では、役員直下での事業戦略・事業企画を初期配属に想定した「次世代幹部候補養成コース」があり、若手から大きな事業に携われる期待が持てるコースを設定していることからも、採用への意志が感じられる。
さらにユナイテッドは、昨年のインターンからクチコミの拡散を重視していたことも躍進を支えた。こちらの記事にあるように、「ユナイテッドの選考を受けた方がいい」という印象を優秀層の間に形成するには、参加者のクチコミが鍵を握っているといえる。
レバレジーズ(55位)も「若手からの成長」を前面に出している。新型コロナによる市況の悪化がニュースになっているだけに、「新卒で入るメリット」が明確な会社がまずは関心を持たれているようだ。
一方で、ここ数年はランキング上位にいたが、順位を下げたベンチャー企業もいた。企業によっては、市況を様子見している段階で、積極的な採用活動に動いていなかったり、あえてこのタイミングだからこそ新しいチャレンジに振り切っていたりする企業もある。
例えば、フリークアウト・ホールディングスは5月に市場最速のレベルでオンライン完結型の3daysインターンを行うなど、新たなチャレンジを始めている。こうした数値の揺れには見えない、新しいチャレンジに共感する学生も多く存在するのは事実だ。
「東大・京大生に支持されるベンチャーが、どう変わったのか?」は、もう少し見極めが必要だろう。
コロナで変わりつつある就活。ランキングだけでは見えない価値や情報を学生に
新型コロナを受け、企業側からは21卒の選考スケジュールを後ろ倒しにしたり、通年採用を検討したりする動きが出てきた。スケジュールが流動的になると、6月1日や3月1日など、これまで就活で節目とされてきた日も意味が薄まっていくだろう。
そして就活が一斉スタートでなくなれば、ランキングとは、その時点の「瞬間風速」を切り取ったものでしかなくなる。だからこそ、学生の皆さんに価値ある情報を届けるにはランキングだけでは不十分で、企業への理解が深まる機会や、キャリアについて本質的に考えられるコンテンツを提供しなければならない。
ワンキャリアでは6月からYouTubeを使った企業説明会「ONE CAREER LIVE」を開催している。
1時間の生放送ではリアルタイムで質問もできるので、企業への理解を深め、キャリアを有意義に考えるきっかけにしてもらいたい。
また、6月27(土)、28日(日)には「ONE CAREER インターン締切直前 LIVE」も開催予定だ。30社以上の企業が出演し、インターンに必要な情報や対策がひととおり学べる番組にする予定だ。
オンライン化が進む就活だからこそ、ワンキャリアはこれからも学年や住む場所、性別に関係なく本質的に大切な情報を、オンラインで学生の皆さんに届けていく。
(Photo:Petr Malyshev , skyNext/Shutterstock.com)