こんにちは、ワンキャリ編集部です。「総合商社特集 〜2016冬〜」の特別企画として、「総合商社 人事インタビュー」を連続掲載します。記念すべき第1社目は、純利益No.1を見通しに入れた伊藤忠商事 人事採用責任者の甲斐さんと、2年目として活躍される若手社員の大津さんへインタビューしてまいりました。
お客様から厚い信頼を得る、これこそが僕らが目指す「商人」の姿
──総合商社に興味をもつ学生からよく伺うのは「5大商社の違いが把握しづらい」という声です。伊藤忠商事は、現在業界内でも最も勢いがありますが、総合商社で重要な資産である“人”の採用において、特徴はございますか?
甲斐さん:私たちは「商人」を採用のキーワードとして考えています。商社パーソンと言っても、アタッシュケースを持って空港を颯爽と歩く・・・そんなステレオタイプなイメージの商社パーソンを僕らは目指しているわけではないんです。
もっと泥臭く、お客様のところに足繁く通い、お客様の悩みや困っていることを聞いて、お客様の真のニーズを(もしかしたらお客様本人も気付いていないかもしれないニーズを)きちんと整理して提示し、そこから考えて考えて考え抜いてソリューション(解決策)を提案する。そんな行動を繰り返すことで、お客様から厚い信頼を得る。これこそが僕らが目指す「商人」の姿です。
弊社が元々は近江商人であった原点(origin)に戻ろうと、2014年に「ひとりの商人、無数の使命」というコーポレートメッセージを制定しました。近江商人は「売り手よし、買い手よし、世間よし」という“三方よし”をモットーにしていたんです。ここへ戻る形ですね。
「商売をする商人」という形で豊かさを世界各国へ届けることが使命
甲斐さん:最近応募してくる学生さんには、「金稼ぎ」はしたくない、社会貢献をしたいという方がいらっしゃいます。「お金を稼ぐこと=後ろめたいこと」という数式がガッチリ頭の中に組み込まれている。本当にそうでしょうか。
先ほどの“三方よし”ではありませんが、商売を通して皆がお金を稼げる仕組みを作ることをしないと、どこかで無理が生じてしまうので、その事業は早晩続けることが出来なくなってしまいます。これでは残念ながら社会へ貢献することは出来ません。
まずは「商売をする商人」という形で豊かさを世界各国へ届ける。これこそが我々の存在意義です。そこにこだわりを持っている学生さんにぜひ受けていただきたいなと思います。
1.2兆円の投資も、現場社員からの提案がきっかけ
──「商売をする商人」は、他にどのような考え、価値観を大切にして仕事に取り組んでいらっしゃいますか?
甲斐さん:「答えは現場にこそある」と考えます。例えば、弊社がCPグループ(※1)と共同で1.2兆円の巨額投資をすると決めたCITIC(※2)については、海外現地のネットワークを通じてつかんだ情報から話がはじまりました。また事業の一部を買収したDole社(※3)の案件も、同社と弊社のそれぞれの現場の人間が50年にわたり築き上げてきた信頼関係をベースにはじまりました。もちろん最後はトップが決断するのですが、いかに大きな投資であっても現場社員の日々の地道な取組みや努力から全てははじまっているのです。
(※1)……Charoen Pokphand Group Company Limitedを中心とした、世界最大級の飼料事業をはじめ畜産等の実業を中核事業として成長を遂げてきたタイ最大級、アジア有数のコングロマリット。
(※2)……中国最大の政府系コングロマリットであり、銀行と証券会社を筆頭に、極めて幅広い産業で市場を牽引する位置にある企業集団。2015年1月20日付で、伊藤忠商事、CPグループと3社での戦略的業務・資本提携を発表。計1兆2040億円の投資を決めている。詳細はこちらの説明資料をご覧ください。
(※3)……伊藤忠商事は、2012年12月に、バナナやパイナップルで有名な米国Dole社のアジア青果物事業及びグローバル加工食品事業を約1,350億円で買収。詳細はこちらの説明資料をご覧ください。
商人に必要な「他者との信頼構築スキル」
──商人として「現場力」を活かしたビジネスを進めるには、どういった人材が求められていますか?
甲斐さん:あきらめずに最後までものごとをやり抜く強い意志や熱意。あるいは「好奇心の強さ」や「人間が好き」という姿勢。様々なキーワードがあるとは思いますが、我々に求められる1番大切なことは「人と信頼関係を構築できる力・人から信頼を得る力」に集約されると思います。
社内外のビジネスパートナーとチームを組み、業務を進めていくことが多い総合商社の仕事。チームで仕事をするには、多様なチームメンバー同士で目標を共有し、互いに信頼・尊重することがカギになります。
またビジネスに携わっていると必ず最後には1対1の局面となり、そこでものをいうのはその人自身の信頼性です。
「あなたからモノを買いたい」「あなたと一緒にビジネスをしたい」
最後は人間力の勝負となります。
大津さん:商社を受ける学生さんは、英語力や留学経験、体育会出身のようなスペックを過度に意識してしまう学生が多いですが、人物本位のところが大前提。自分が今までやってきたことに自信を持ってほしいです。経験自体に優劣はありません。その経験をどう捉え、何を学び取ったかを大事にしてください。
伊藤忠なら「配属先決め採用」で、配属リスク回避も可能
──その他、新卒採用において5大商社の他社と違った特徴はございますか?
甲斐さん:弊社では「配属先決め採用」の枠も設けています。これも他の商社さんとは違った特徴です。
商社業界を志望される学生さんが一番気にされるのは「配属リスク(=自分の希望する部署に配属されないリスク)」ですが、弊社では学生がエントリーの段階から配属先のカンパニーを決めて応募することも可能です。学部専攻は問いません。服が好き、食べ物が好きという拘りや、アルバイトなどの学業以外の経験から希望することも全く問題ございません。
採用結果として、現状は先決め採用ではない「一般採用」の方が人数は多いですが、配属先決め採用の枠が少ない訳ではありません。有利、不利はないので、ぜひご検討いただきたいですね。
総合商社5社中、社員数は最小。それでもトップの業績に迫るのは「修羅場を通したOJT」による社員の生産性向上が鍵
──次は、入社後の「社員育成」に話題を移したいと思います。育成方針の中で、特徴的なものは何かございますか?
甲斐さん:育成のキーワードは、グローバル・マネジメント人材を作るための「連結」「海外」「現場力」です。「人は修羅場経験を通して育つ」と思っていますので、OJT(※4)に注力しています。
(※4) On the Job Training=現場で業務を遂行しながら業務知識をつけること
例えば以下のようなキャリアパスがあります。
1. 1~2年目:入社時
予算・決算業務、貿易実務を担当:「商人」の基礎となるお金とモノの流れを学ぶ
2. 3年目:取引先業務
決算業務で知った知識を活かした営業経験
3. 4年目:海外研修
非英語語学研修:主に中国で3~6ヶ月集中的に勉強
4. 5年目:本社業務
海外研修を活かしグローバルマーケットを相手にする営業やプロジェクトを担当
5. 10年目:海外プロジェクト
実際に海外へ赴任して、現地でプロジェクトや経営を推進
6. 15年目:マネジメント
今までの経験を基に、組織の長としてビジネスを推進し、部下を育てる
──「経験の習得」と「知識の習得」が交互に設計されていて、前の経験を活かしながら成長できるキャリアパスになっていますね!
甲斐さん:ええ、ちょっと背伸びしないといけないような業務を任せて育てる「修羅場を通したOJT」が成長の真髄かなと思っています。
うちは単体の人員数でいくと、総合商社で最小の4,200人くらいで、三井物産・三菱商事さんの70%弱くらいですが、業績としてはトップを窺う立場にいます。1人頭の生産性を追求するためには「修羅場を通したOJT」が効きます。
英語ひとつとっても、自分の言葉が通じない、自分の考えをうまく口に出せない、でも目の前の外人さんを英語で説得しなければいけない!というような冷や汗びっしょりの経験をして初めて学ぼうとしますよね。
OB・OG訪問で感じた「若手から修羅場をくぐって仕事を任されていく環境」
──ここからは、話をガラッと変えて、若手の採用担当として活躍され、学生と身近な立場にいらっしゃる大津さんから、就活生に向けたお話をいただきたいです。そもそも伊藤忠を志望された経緯も含め、御社の魅力をお教えいただけますか。
甲斐さん:上司の僕は耳をふさいでいようかな(一同、笑い)。
大津さん:学生時代からたどると、私はいわゆる就活劣等生でした。大学はアメリカンフットボール部だったのですが、1回留年していまして。就活が解禁しても、みんなはスーツ、そんな“常識”も知らず、僕は真っ赤なパーカーで(笑)。
しかも「体育会 = 商社」というイメージに反発してあえて商社は見ていなかったんです。伊藤忠もちょっと華やか過ぎるイメージでした。
しかし、伊藤忠商事のOB・OG訪問を通じて「仕事を早いうちから任せられている、若いうちから主体的に、中心となって仕事を回している」という全く違う印象を抱きました。2年目の人が修羅場をくぐって、海外のお客さんと仕事している。すごいな、と。それで伊藤忠が第一志望になりました。
──外資系企業も裁量権の大きさは学生へアピールしていますが、それはいかがでしたか?
大津さん:外資系も成長という観点では、素晴らしい環境があると思います。ただ、私は留年していたので、先に外資系の投資銀行やコンサルティングファームに入った同級生から、資料作成くらいしか成長できてないという話や、上司は転職組が多いという話を聞きました。
もちろん、成長はその人次第というのは間違いないですが、少し違和感を抱いてしまいました。
業界を問わずいろいろな人に会ってほしい
──ありがとうございます。最後に、これから御社を受ける学生へのメッセージをお願いします。
大津さん:今年は就職活動期間が短縮して不安になったところもあると思いますが、どんどん社員に会ってほしいと思います。積極的に、たくさんの会社の、色んなイベントに参加してみてください。そこで社員の生の声を聞いて、自分の価値観と照らし合わせ、最後には後悔のない選択をしてほしいですね。ぜひ頑張ってください!
甲斐さん:大津の言うとおり、人生で社員さんが電話1本で会ってくれて、働きがいや人生観まで語ってくれる期間は今しかありません。運が良ければおいしいコーヒーをご馳走になりながら(笑)。業界を問わずいろいろな人に会ってほしい。そしていろんな価値観や考え方に触れて、思いっきりブレまくって悩みまくって影響を受けまくってほしい。
いいんですよ、どんどん変わっていっても。そうした経験自体が皆さんの人生をより豊かで深いものに変えてくれるはずです。そしてもし、伊藤忠に興味をもっていただけたら、ぜひ門戸をたたいてほしいと思います。
──ありがとうございました!
ときにユーモアたっぷりに、そして決めるべきところは格好よく。まさに「商人としての商社パーソン」を魅せてくださった伊藤忠商事。この記事が、これから応募される皆さんの参考となれば幸いです。