皆さん、面接って好きですか? 僕はわりと好きです。
というのも「人間に何らかの言葉を入力したら結果がアウトプットされる」というのはかなり面白いものです。
特に「面接」というのは「内定」という結果に向かって、真っ直ぐ進むコミュニケーションです。これは話がわかりやすくてとても良い。
通常、人間のコミュニケーションというのはもっと複雑です。そもそも目的など存在しないが、なんか失敗すると怒られたりします。
それ故に、「内定」かどうかを判断するために、面接ではその決定打となる「キラー質問」というのがあるのです。
これは「こういう考え方のヤツはダメ」という経験に則って、「ここをこう答えたらアウト」という回答が定型化されている質問で、大体どこの会社にも存在します。
この質問の回答だけで、内定か否かを左右するといっても過言ではないのです。
そもそも面接のキラー質問とは?
僕が社長をやっていた会社を例に挙げます。社員数名の小さな組織で、結構大きい額の取引をやっている典型的な綱渡り企業でした。
そんな弊社のキラー質問は、
Q:「他社のトップとの、とても大事な交渉に、社長の僕と随伴することになったとして、当日僕が来なかったらどうする?」
でした。
みなさんなら、どう答えますか? せっかくなので、少し考えてみてください。
その間、「面接」と「恋愛」を比較した話をします。
あれは本当に理不尽ゲーだと思います。先程、「日常のコミュニケーションはもっと複雑」といったように、なんかよくわかんないうちに嫌われますよね、そうでもないですか?
こういう時は「そうですね」って言うのが大事です。おじさんのような大人はナイーブだから気を遣う必要があります。わかりますね? こういうことは社会に出るととても大事です、そう面接においても。
はい、そろそろ話を戻しましょうか。ズルして、下にスクロールしてませんね?
では、発表します。
正解は
A:「社長を待たずに一人で交渉先に出向く」
です。
みなさん、正解しましたか?
僕が「かなり優秀」と判断していた人は、このように「自分でやれそうなら自分で交渉」し、さらに「自分でできそうもないなら、適当に社長が来られない理由をデッチ上げて、先方の怒りを最小限に抑える」と答えられる人たちでした。
ちなみに、僕の中では最高評価は「自分でやれそうならやりますし、ダメそうなら社長は突発ギックリ腰で動けないとでも言っときますよ」と答えた人です。
特に、「とでも」の軽さが良いし、ギックリ腰という具体性も良い。「階段から転げ落ちた」と違って、外見的に怪我の有無が判断できませんから。
これは、僕の会社がとても小さく、部下には社長の代行を行うことがしばしばあり得るという前提を踏まえた質問です。ここでフリーズしちゃう人は、小さなベンチャー企業ではちょっと厳しいと思います。
なにせ、修羅場が日常的に発生しその場その場の臨機応変な判断「だけ」で回っているような若い会社でしたから、アドリブ力こそが重要でした。
そういうわけで、こういう「ここだけは落とす」と決めているおっかないやつが面接の「キラー質問」はロックマンで言うと地面のトゲみたいなもので、一発でティウンティウンになります。
あ、ちょっと若い世代にはわかんないですか? わかったふりしておいてください。おじさん傷ついちゃうんで。
キラー質問は「コンプラ」と「逆コンプラ」に分類できる
「キラー質問」が存在することはわかりましたが、「でも、それって会社によるよね?」と感じた皆さんもいると思います。その通りです。
前段のお話は、若い少人数のアグレッシブな零細企業におけるキラー質問ですね。こういうのは会社の性質を見て判断するしかないと思います。
でも、「典型的」なものは存在します。それは、大別すると「コンプラ系」と「逆コンプラ系」に分けられます。
なので、志望する会社が「コンプラ企業」なのか「逆コンプラ企業」なのかを把握しておくと、キラー質問というのは結構上手に回避できます。
大丈夫、インターネットを調べると書いてあるから。調べ方は各自研鑽(けんさん)してください。
では、それぞれの概要を説明をしていきます。
「コンプラ系」キラー質問とは「コンプライアンスを守れない奴は入社させない」と考えている会社に多い質問です。重厚長大系大企業に多いですね。こういう会社は不祥事を何より恐れます。
一方で「逆コンプラ系」キラー質問とは何か。「コンプラにうるさい奴はいらない」と強く強く考えている会社によくあるやつです。
全体的に順法意識が「アレ」で会社のあっちこっちにバレたら怒られるヤツが存在しています。コンプラにカタい融通が利かない奴は絶対に入れたくないと思っている会社というのは、わりとたくさん存在します。
ちなみに冒頭の「社長を待たずに先に行く」も、すごく広義で言えば「逆コンプラ」質問です。僕の会社では「大合格」ですが、ルールを重んじる会社では逆に「アウト」の可能性があります。上司を待たず暴走する部下だけは絶対に欲しくないという会社もありますよね。
尚、「逆コンプラ系」質問は大企業でも無いとは限りません。ほら、あそことかあそことか、「あの社風って法的に怒られないんだろうか?」って感じるとこ多いじゃないですか。まぁ、この話は訴状が届く可能性があるのでここまで。
「コンプラ系」キラー質問の具体例
面接での模擬質問とその回答を挙げていきます。それぞれの回答にコツやミソ、シオ、コショウが隠されていますので、要チェックです。あっ、シオ、コショウは嘘です、すみません。
まずは「コンプラ質問」からです。これはわかりやすいです。
抽象的に言うと、「あなたは誰も見ていないなら赤信号を渡りますか?」みたいなやつです。
「これからの正義の話をしよう」みたいな世界観になってきましたが、これは倫理学ではないので、皆さんは自分の得になる方を選ぶ必要があります。
資本主義社会は二択を間違えると巨大なトロッコが突っ込んでくることがよくありますので……。
僕が実際に経験した面接の質問を例に挙げます。
Q:「尊敬している仕事のできる上司が不正をしているのを見つけたらどうする?」
そこは大変お堅い企業でしたので、僕はノータイムでこう答えました。
A:「然るべき場所に報告します、御社に属する以上そこで躊躇(ためら)いは持ちません」
この返答に「コンプラ質問におけるアンサーのコツ」が隠されてあったのですが、お気づきになりましたか?
そう、「然るべき」という部分です。
なにせ、入社前に「誰に」「どのように」報告すればいいのかなんてわからないですから。そこには触れず「俺はちゃんとやるぜ?」とだけ言っておけばいいのです。余計なことを言うとコケます。
ここで最悪の答えは「不正を行っている上司に直接進言する」です。というのも、新入社員がいきなり「おまえは不正をしているな、やめろ」と言ってくるのは「とっとと不正を隠せ」とアドバイスするのと同義です。
あとは「不正ダメ絶対」という気持ちをアピールすれば大体問題ないでしょう。
「逆コンプラ系」キラー質問の具体例
次に、「逆コンプラ」質問とはどういうものか。これは抽象化しにくいです。
しかし、「おまえはいざという時会社と自分の大事なもののどちらを選ぶんだアアン?」のようなニュアンスが出ていれば、それは大体逆コンプラ質問です
例えば、こういうのですね。
Q:「実家の家族が急病で倒れた日、絶対に休めない仕事があったらどうする?」
ここで「会社を選ぶ」という人は、例えば残業代の不正などをさほど問題視しないことが多いでしょう。そういう会社は自我が弱めで会社との同化性の高い人材を求めています。
また、「家族を取ります」と答えても「家族思いですね」とニッコリしてくれるでしょう。大人とはそういうものです。つまり、その質問そのものの「正しい答え」は絶対明示されません。
では、逆コンプラ質問と出会った時にどうすればいいか?
これは意外と簡単で、相手が望んでいることを答えてやればいいでしょう。「多少会社のコンプラ意識は低そうだが、俺はこの会社に入りたい」と思うなら、とりあえず
A:「御社に所属する以上は責任を果たすことを第一にしたいと考えています」
とでも答えておけばOKです。
この回答のミソとなるという言い換え部分に気づきましたか? そう、「責任を果たす」ですね。実際を言えば、労働者である以上、正当な理由があればいつでも休めますから、いざという時はそうすればいいだけです。
この逆コンプラ質問は「おまえあの時ああ言ったよな? おまえウソつきか?」という圧力を人間にかけることで、会社と自我を同化させる作用を狙っています。人間はしばしば会社と自我の区別がつかなくなるので大変有効な質問と言えるでしょう。
でも、対応策は完全にわかりますよね。「え? 俺労働者だし、労働法規には詳しいよ?」という気持ちを持っているだけで、逆コンプラ質問は一方的に利用できるのです。
これに罪悪感を持つ必要は一切ありません。大人とはそういうものです。労働者の責任については会社に入る前に良く学んでおき、適切に責任を果たしましょう。
まとめ:キラー質問をチャンス問題に変えよう
「キラー質問」は一つ回答を間違えるとそれだけでアウトになってしまうリスクのあるものです。しかし、場数を踏んで慣れてくると「あ、これキラーだ」という判断がつき、余裕が出てくるようになります。
なので、逆に言えば、キラー質問さえうまく答えれば内定をぐっと近づけることができる大幅な加点のチャンスとも言えます。うまいことのりこなして、欲しいものを手に入れましょう。おじさんたちには色々あるので、就職活動をする上ではこの「大人の色々」を把握し、上手いことやってやる必要があります。
面接に限らず、新卒で社会に出ると、しばしばおっかないトロッコが突っ込んでくることがあります。そんな時は「さて、どうやったら得かな?」という判断を大事に、この厳しい世界を乗り切っていきましょう。これからの正義はよくわかりませんが、資本主義は大体そういう感じです。皆さんが「まぁ、所詮、俺の会社じゃないしな」という強い気持ちを胸に社会に出ていくのを僕は心から応援しています。
前回の「オトナ文法」(祈られたなら「祈り返す」。オトナ文法を駆使した「必殺:逆お祈りメール」を伝授しよう)の続きみたいな話に、期せずなってしまいましたので、そちらもあわせてご覧ください。
やっていきましょう。
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