※こちらは2018年1月に公開された記事の再掲です。
こんにちは、ワンキャリ編集部です。
——学生の地頭は、高校名で決まる これは、新卒マーケットに存在する『定説』だ。
ワンキャリア執行役員の北野唯我(KEN)は、東大名誉教授との対談でこう語りました。
皆さんは、「就活は地頭で決まる」「高校名が学生の地頭を証明する『名刺』代わりになる」と思いますか?
開成高校、筑波大学附属駒場高校、桜蔭高校といった有名私立高校となると毎年100人単位で東大合格者を輩出し、入社先も有名企業になることが多いといわれています。今回はこの「定説」を証明すべく、有名高校出身のトップ内定者へインタビューを行い、実際に出身高校と内定先に相関はあるのか探っていきます。
高校名は隠れた学歴フィルター? 就活は有利になるのか、東大生に聞いてみた
「出身高校によって、就活は本当に有利になるのか」
この問いに迫るため、有名私立高校から東京大学に進学し、有名企業の内定をゲットした2018年卒の学生2名に話を聞いてみました。
麻布高校出身:心象は良くなるけれど内定には関係なし。結果的に同じ高校が集まることも?
——Aさんの出身校の麻布高校は、300人ほど同期がいるそうですね。「麻布高校で良かったな」と思うことってありますか?
Aさん:面接官の心象は良くなりますよね。例えば、面接官が麻布高校のOBで、高校時代の風習で盛り上がったことはあります。でも、高校名だけで内定に響くかと言われると……正直ほとんどないと思います。
——Aさんが内定したプロファームのように、学生を能力ベースで判断する会社だと、高校名だけで地頭を測る傾向はそこまで強くないのかもしれませんね。
Aさん:ただ、うわさによると、今年マッキンゼーに内定した女子学生はほとんど桜蔭高校出身だったらしいですね。
——能力ベースで選考をしたうえで、結果的に同じ高校出身者が多くなる一例かもしれませんね。
一般的に投資銀行やコンサルティングファームでは、選考の山場はインターン(ジョブ)です。そこでは高校名・大学名でなく能力ベースで合否が決まるといえます。
とはいえAさんの言うように、ジョブで選抜された結果、内定者の出身校が偏る場合もあるようです。結果的に高校名が地頭の良さを証明しているといえるのではないでしょうか。
開成高校出身:高校名は頭の良さを証明する手段でしかない
——東大はそもそも官僚志望が多いと伺ったんですけど、開成高校は特にその傾向が強いそうですね。
Bさん:開成出身のトップ文系生は、外銀・外コンと官僚の両方に内定して、最終的に官僚を選ぶことが多いです。確かに大学というより、出身高校の方が就活のスタイルに影響があるかもしれませんね。
——なるほど。Bさんは日系・外資系企業ともに内定していますが、選考中に「高校名が有利に働いた」と思う瞬間はありましたか?
Bさん:リクルーターが高校OBになったくらいでしょうか。東大ではあまり関係ないと思います。むしろ人数の多い早慶生の方が、御三家(開成高校、麻布高校、武蔵高校)出身者だと差別化できて有利になる印象があります。
——それは興味深いですね、具体例はありますか?
Bさん:開成で同期だった慶應生は、日系金融機関の面接で高校名を褒められたと言っていましたね。単に地頭を評価しているというだけでなく、「御三家出身の学生は勉強も、遊びも全力になれる」というイメージがあるようです。高校名でポテンシャルを判断してくれる会社もあるのではないかと思います。
早慶などのマンモス校では、高校名がその人の「人となり」を表す要素として評価されることがあるようです。しかしAさんと同様に、選考にあからさまな優遇は見受けられず、高校名はあくまで補助的な要素ということが見えてきました。
関東の中高一貫が一人勝ち? 結局、高校名で就活は有利になるのか
2名のインタビューから「高校名が内定に直結するわけではないが、OB・OGとのつながりや人となりの点で、面接官の心象がプラスになる場合がある」ということが分かってきました。企業に提出するES(エントリーシート)には、多くの場合高校名を書く欄があることからも、高校名が就活に与える影響はゼロではなさそうです。
特に、先に挙げた「御三家」のように、関東の中高一貫校にその傾向が強いようです。一方で、地方の県立高校や関西圏の私立高校の場合、偏差値が70を超えていても、面接などで話題になることは多くありません。記事を書いている私も「地方では負けなしの高校」出身ですが、就活で出身高校の話題になったことはありません。
では、その理由は何があるのでしょうか?
ある中高一貫校出身者は、「中学受験は家庭環境などバックグラウンドが合否に影響してくる。『ちゃんとした』家庭環境の人かどうか判断しているのだろう」と語ります。実際に、面接で幼少期からの経験を徹底的に深掘りするなど、学生の生まれ育った環境や幼少期からの価値観を重視する企業もあります。
大学名のように直接的ではないにせよ、緩やかな学歴フィルターを与えているのが高校名ではないでしょうか。
おわりに
新卒採用にかけるコストは1人50万円、採用に積極的な企業なら100万〜200万円という試算もあります(出典:東洋経済ONLINE「企業が新卒採用に投じる「1人50万円」の中身」)。高校名で学生の家庭環境や人となりをある程度見極めるのは、企業にとっても有効でしょう。
実際に「トップレベルの進学校出身者は採用サイドから『ぜひとも採りたい』と専用枠すら用意されている」という話もあります。その点、高校名がその人の『名刺』代わりになることもあるでしょう。
しかし、あくまでも名刺は名刺。トップ企業に内定する有名高校出身者は、あくまで自分の能力を魅せる一つの手段として高校名を活用しているのかもしれません。