相変わらず毎月 ”奴” はやってくる。
面接の多くがオンラインになって、少なくとも面接中に志望企業の椅子を血まみれにする「最悪のケース」の心配は減ったかもしれないが、生理のつらさそのものがなくなるわけじゃない。
お腹の鈍痛に耐えてようやく書き上げたESが一蹴されて落ちたり、暴力的な眠気のなかで面接官に向かって画面越しにニコニコハキハキ喋らなければならなくて、支離滅裂な返答をしてしまったり、PMS(月経前症候群)で死にたい気持ちになっているときにお祈りメールが届いてメンタルに追い打ちをかけてきたりする。
就活や面接のやり方が変わっても、我が軍の戦いは生理のない軍に比べて不利な面があるというのは、確かな事実であろう。
まず言わせてほしい。みんなえらい。私たちは本当によくやっている。ソーシャルディスタンスハグ。
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しかし来るものは来る。ならばやれることはやってこの戦いを乗り切っていくしかない。人生の勝負所をホルモンなんぞに邪魔されてる場合ではないのだ(ホルモンの存在はめっちゃ大事だけど)。
ということで今回は、生理とともに就活と会社員生活を送ってきた一人として、いくつか対策案を提案したい。
若い子たちのなかには生理にまつわる不便さについて、意外となんの手も打っていない人も多いと聞く。高額なお金がかかるために難しい場合があったり、適切な医療に到達しにくいシステムがあったりするのはこれから私たち大人が解決していかなくてはいけないことだ。
ただ、今まで知らなかった生理への対策案を知ることで、助けになるケースも大いにあるはず。今まさにPMSや生理痛で世界を呪いたくなっている誰かに届いて、「ちょっとした掴みやすい藁」くらいの役に立てれば嬉しい。
もちろん、私はいち「生理のある人」としての経験をもとに書くのであって、産婦人科の専門家ではない。なので、生理に関する困りごとがあれば、まずは怖がらずに産婦人科に行って相談してみてほしい。ということを念頭に置いてもらいつつ以下を読んでもらえると幸いだ。
低容量ピル、怖くないよ
まず、早いうちから低容量ピルに慣れておくのは個人的にかなりおすすめする。「ピル=避妊」のイメージを持っている人も多いかもしれないが、月経困難症・過多月経・月経不順・PMSの治療薬として広く使われている。
私は大学時代から3種類ほどのピルを試して、今は「ヤーズフレックス」という「月経を3か月に一度だけ起こすピル」に出会い、服用している。
私の人生はヤーズフレックスによって「確変」したと言っても過言ではない。何年間も、毎月に1回、1週間もの間、私を「世界を呪う女」にしていたPMS。そんなPMSもヤーズフレックスによってきれいさっぱりなくなった。1回あたりの経血量や生理痛も減り、なんといっても生理の頻度が3カ月に1回になるのは神すぎる。生理が年4回に減るんですよ!? 医学の進歩すごくない!?
とはいえ、ピルにはたくさんの種類があり、体との相性もある。最初は不正出血があったり、服用中は血栓症のリスクも多少あったりするので、産婦人科で相談しながら自分にあったピルを早めにみつけておくのが良いだろう。
また、ピルの処方のために定期的に産婦人科に行く習慣がつくのも良いことだ。ピル服用を機に、体の悩みを相談しやすい、通いやすい産婦人科を見つけておくと何かあったときにめっちゃ心強い。少し下腹部が痛い、経血量が多い気がする、生理不順気味、PMSがつらい、でも産婦人科に行くほどじゃないかな……、というぼんやり抱えていた不安を相談する機会が定期的にあるのは本当に安心だ。
けれどもピルは1シート(1カ月分)で2,000〜3,000円程度かかるため、ちょっと支払うのが難しい学生も多いかもしれない。月経困難症などの場合は保険適用で安くなる可能性もあるので、なんにせよ早めに産婦人科にGOするのがおすすめだ。
ちなみに「ピルを飲むと不妊になる」はド迷信だし、「ピルを飲んでいる奴はビッチ」などと抜かす奴には、その辺の草でも煎じて飲ませてやればいい。
タンポン×給水ショーツの安心感
「絶対にモレられない戦いが、そこにはある」な日は、私はタンポン×吸水ショーツ(ナプキンやタンポンがなくても経血を吸収してくれるパンツ)の布陣で挑む。
もう安心感がすごい。タンポン単体でも数時間守れる上に、いざというときには吸水ショーツがいるという二段構え。この安心感で、面接や大事なアポを普段通りに乗り切れる。吸水ショーツは近年出てきた新しめの生理用品で高価なものが多かったけれど、最近はGUから1,490円(税込)のものが発売され、学生でも手が届きやすくなったのは大変良いことだ。
「いうて吸水ショーツにはまだ抵抗がある」という気持ちもわかるので、そんな人には履くタイプのナプキンをおすすめしたい。私も最初は「それって要はおむつじゃん!」と思ったが、これがふんわり履き心地最高。お尻全体が優しさで守られているような気分になれた。意外とボトムスにも響きにくい。何社か出しているので一度試してみてほしい。
こんなふうに自分なりの「最強の布陣」を探すのは案外楽しいものだ。今はフェムテック界隈(かいわい)も盛り上がって便利アイテムがたくさん出ているからぜひ「ナプキンオンリー」の戦いから脱して、自分に合った武器を増やしてみてほしい。
生理のない側の経営者・人事の方へ
就活生だけじゃなく、生理のある側の人はいろんな面倒ごとを何事もないかのように振る舞っている。「生理なんて大したことないでしょ」と思うのは、これまで生理のある人たちが「大したことがないように見せていた」からだ。
普段と同じに見えるその社員、本当は今めちゃくちゃ生理痛でお腹が痛いかもしれないし、PMSでいつもよりネガティブに考えてしまっているけれど必死に笑顔で振る舞っているかもしれない。そして、「男らしい格好やふるまい」「女らしい格好やふるまい」が「生物学的な性」をそのまま表しているとは限らないため、「生理がある人」かどうかは、見た目ではわからない場合も大いにある。
人に言いにくいつらさを抱えることがあるのは生理中の人だけではなく、不妊治療や妊娠、病気、子育てや介護など、年齢・性別・タイミングに関係なく私たち誰もに起こりうることだ。
だから「◯◯なんて休むほどじゃなくない?」「◯◯でパフォーマンスが落ちるなんて社会人として失格」という空気を作らないでほしい。体調不良や生理、家族の事情での休暇が当たり前に取れる制度と雰囲気づくりが、どれほど大切なことか。
優秀な社員を採るために必要なことは、モン◯セレクションのようななんとかマークを取得したり、働きやすい会社なんとかランキングに入ったプレスリリースを出したりすることより、休みたいときに休める制度と、制度が当たり前に活用される空気の醸成なのではないだろうか。
この仕事は、会社の働き方や方針を決める特権を持つ経営者や人事の皆さんにしかできないこと。どうか一人でも多くの意思決定層の人々が、一社でも多くの企業が、より良い方向に進んでいってくれたら嬉しい。
※こちらは2021年4月に公開された記事の再掲です。
(Photo:Nadia Snopek/Shutterstock.com)