こんにちは、ワンキャリ編集部です。
ワンキャリ編集部が総力を挙げて紹介する【最新版:業界研究】。
今回は、金属業界の中でも、非鉄金属といわれる地金や亜鉛、ニッケルなどを扱う住友電気工業、JX金属、三菱マテリアル、住友金属鉱山の非鉄金属業界の4社について、各社の特徴を比較しながらお伝えします。
<目次>
●非鉄金属業界全体の動向
●非鉄金属業界大手4社の業績(売上高/営業利益)比較・ランキング
●非鉄金属業界大手4社の特徴・強み
・住友電気工業:ワイヤーハーネス・光ファイバーなど「線」に強みあり。多角的な経営で日系非鉄唯一の売上3兆円超え
・JX金属:世界屈指のシェアを誇る銅事業。鉱山から世界トップクラスの製品まで
・三菱マテリアル:事業のバランスが強み。地球環境に良いサステナブル経営を推進
・住友金属鉱山:海外鉱山開発に注力。素材に絞ったバリューチェーンで安定した経営
●非鉄金属業界大手4社の社風の違い・制度
・住友電気工業:裁量権のある営業職。社内外問わずコミュニケーション力が重視される技術職
・JX金属:社員同士が切磋琢磨(せっさたくま)しあい助け合う文化
・三菱マテリアル:海外経験を豊富に積める環境
・住友金属鉱山:一人ひとりの意見を尊重する社風
●非鉄金属業界大手3社の平均年収・平均年齢・平均勤続年数
●非鉄金属業界大手4社の選考対策・クチコミ
●非鉄金属業界以外の業界研究記事
非鉄金属業界全体の動向
非鉄金属業界は、その名の通り「鉄以外の金属」を取り扱う業界です。
金、銅、ニッケル、アルミニウム(以降、アルミ)などの非鉄金属の採掘から、それらを加工する製錬を行う上流。そして製錬された加工品を電化製品などにさらに加工して、主に法人向けに販売する下流まで、幅広い工程をカバーする企業もあることが特徴です。ビジネスモデルが複雑なため、下記のグラフなどを参考にしてください。
※参考:リスクモンスター「業界レポート 非鉄金属製造業 2022.07 P.3」
業界のトレンドを考える際、まず「非鉄金属の需要は世界経済に左右される」という点は押さえておいたほうがよいでしょう。事実、2000年代以降、中国経済の発展と成長鈍化が、各社の業績に大きな影響を与えました。そのため、現在は業界全体として、素材に付加価値を付けるなど、高い技術力を生かした成長を目指しています。
最近では、5GやIoTといった技術革新を背景に、コネクテッドカーなど高機能な製品の需要が高まっています。電化製品や自動車などには、非鉄金属を多く含む電子部品や配線ケーブルなどが数多く使われているため、高機能な素材のニーズも高まり、技術力の高い日系企業が注目されているようです。
こうした要素から、中国企業との競争の激化などマイナスな要素がありつつも、業界全体としては、緩やかな成長が見込まれています(※1)。
(※1)参考:独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構「非鉄金属市況と需給動向 P.3-6」
非鉄金属業界大手4社の業績(売上高/営業利益)比較・ランキング
非鉄金属メーカーの中でも主要3社である住友電気工業、JX金属、三菱マテリアル。そして鉱山開発など最上流に注力している住友金属鉱山を特集します。それでは、売上高と営業利益を見てみましょう。以下のグラフは各社の業績です。
※出典:2022年度有価証券報告書(住友電気工業 P.67/三菱マテリアル P.86/住友金属鉱山 P.85)
※出典:ENEOSホールディングス「2023年度第2四半期決算 参考資料 P.4」
※住友金属鉱山のみ税引前当期利益を記載、その他は営業利益を記載しています。
※連結決算のデータを使用。各社の会計方式は住友電気工業・三菱マテリアルが日本方式、JX金属・住友金属鉱山がIFRS基準です。
※JX金属はENEOSグループの「金属事業」の数値を記載しています。
2022年度は、売上高は住友電気工業、営業利益は住友金属鉱山がそれぞれトップでした。
非鉄金属業界大手4社の特徴・強み
それでは、各社の特徴を見ていきましょう。
住友電気工業:世の中を「つなぐ」住友電工、多岐にわたる事業領域
住友電気工業は、1897年(明治30年)に電線・ケーブルの製造から始まり、現在では、超硬合金や光ファイバなど、画期的な製品を幅広く手掛けているメーカーです(※2)。
高い技術力を生かして、電線製品を使う部品や機械も生産しています。電線分野においては、送電用の電力ケーブル、通信用の光ファイバー、車載用ケーブルなどエネルギーを運ぶだけでなく、情報も運ぶなど世の中のニーズに合わせて進化させてきました。
現在では、電線製品から派生した「自動車」「環境エネルギー」「産業素材」「エレクトロニクス」「情報通信」の5分野で製品を展開しています(※3)。中流から下流まで幅広い非鉄金属に関わる事業を行っている企業といえるでしょう。
2022年度のセグメント別の売上高は以下の通りです。
※出典:住友電気工業「2022年度有価証券報告書 P.105」
住友電気工業は数多くの製品で世界トップシェアを誇っています。
特に、「ワイヤーハーネス」は世界シェア25%越えを誇っており、同社のメイン事業といえます(※2)。ワイヤーハーネスとは、自動車に搭載されている電子機器をつなぎ、さまざまな電気や信号を、車内のすみずみまで伝える重要な部品の1つです(※4)。「後部座席でのテレビ視聴」や「車内での通話」など、車の多機能化に寄与しています。自動車は、AI(人工知能)の搭載などますます高機能化すると見られており(※5)、成長が見込める分野でしょう。
「住友電工グループ 2030ビジョン」では、特に「エネルギー」「情報通信」「モビリティ」を注力分野と位置付けており、今後も幅広くインフラや産業を支える製品・サービスを提供し、市場の期待に応えていくとしています(※6)。
(※2)参考:住友電気工業 新卒採用サイト「3分でわかる住友電工」
(※3)参考:住友電気工業「なるほど!住友電工」
(※4)参考:住友電気工業「もっと知りたいあの製品技術!アルミハーネス」
(※5)参考:IBM公式レポート「Automotive 2025: Industry P.11」
(※6)参考:住友電気工業「長期ビジョン『住友電工グループ 2030ビジョン』」
JX金属:世界屈指のシェアを誇る銅事業。鉱山から世界トップクラスの製品まで
JX金属は、ENEOSホールディングスというガソリンスタンドで有名な「ENEOS」を経営する企業の金属部門の完全子会社です(※7)。
2022年度のセグメント別の売上高は以下の通りです。
※出典:ENEOSホールディングス「2023年度第2四半期決算 参考資料 P.5」
度重なる統合と合併で名前が頻繁に変わってきた同社ですが、元は「久原鉱業」から発展した歴史ある企業です。
久原鉱業は、日立鉱山という銅鉱山を採掘・採れた銅を精錬していた企業であり(※8)、採掘に機械を積極的に導入するなど日本の鉱山業の近代化に大きく貢献しました(※9)。
当時から銅の採掘・精錬・加工に強みをもち、現在でも変わらず銅事業に大きな強みがあります。上流の資源開発から下流である素材の開発まで一貫して銅事業に携わっている点が特徴です。
・権益銅生産量 約20万トン
・年間粗銅生産能力(佐賀関製錬所)約45万トン
・【世界シェア 約80%】FPC用圧延銅箔(スマートフォンなどの回路基板に使われる銅を薄く伸ばした素材)※参考:JX金属「早わかりJX金属」
同社は中期経営計画で、「高収益・高成長のフォーカス事業が全社成長をけん引、グローバル水準の収益性および資本効率を目指す」ことを掲げており、半導体用ターゲット、圧延銅箔(あつえんどうはく)に次ぐ第三の柱を確立し、成長を加速するとしております(※10)。
(※7)参考:ENEOSホールディングス「ENEOSグループについて」
(※8)参考:JX金属「沿革」
(※9)参考:東洋経済オンライン「『世界の日立』を生んだ街、駅が人気スポットに」
(※10)参考:JX金属「JX金属グループ中期経営計画(2023-2025年度) 2023年5月発表 P.2」
三菱マテリアル:事業のバランスが強み。地球環境に良いサステナブル経営を推進
三菱マテリアルは、三菱グループのルーツである九十九(つくも)商会を起源とし、1990年に三菱金属と三菱鉱業セメントが合併して発足した素材企業です。合併以降、石炭やセメントに続き、銅製錬事業や家電製品のリサイクル事業など、さらなる事業の多角化を進めてきました(※11)。
現在では同社が取り組んでいるそれぞれの事業で、生産量や販売量などにおいて、世界No.1または国内No.1を獲得しており、バランスの取れた経営をしています(※12)。
また、アジア、ヨーロッパ、北米、南米などにも事業展開をしており、グローバルネットワークを広げています(※13)。事実、2023年時点で連結売上高の58%を海外での売上が占めています(※12)。
2022年度のセグメント別の売上高は以下の通りです。
※(上表)出典:三菱マテリアル「2022年度有価証券報告書 P.138」
※(下表)出典:三菱マテリアル「5分でわかる三菱マテリアル」
三菱マテリアルの最大の特徴は「環境に対する強い意識」です。企業理念に「人と社会と地球のために」を掲げるとともに、全ての事業でリサイクルを展開(※14)。2023年に公表した中期経営戦略において、「循環をデザインする」という新たなビジョンを掲げ、「持続可能な社会(豊かな社会、循環型社会、脱炭素社会)を実現する」ことをミッションとしています(※15)。
(※11)参考:三菱マテリアル「沿革」
(※12)参考:三菱マテリアル「5分でわかる三菱マテリアル」
(※13)参考:三菱マテリアル 新卒採用サイト「事業所」
(※14)参考:三菱マテリアル 新卒採用サイト「循環型社会実現に向けて 各事業におけるリサイクル」
(※15)参考:三菱マテリアル「中期経営戦略」
住友金属鉱山:海外鉱山開発に注力。素材に絞ったバリューチェーンで安定した経営
住友金属鉱山は創業以来430年、非鉄金属などの素材提供を通じて産業や社会の発展に寄与してきました(※16)。現在では、14の国と地域で産業インフラの構築に奔走しています(※17)。
2022年度のセグメント別の売上高は以下の通りです。
※出典:住友金属鉱山「2022年度有価証券報告書 P.100」
住友金属鉱山は、非鉄金属メーカーの中でも特に「資源×製錬×材料の3コア事業」に特化した企業です(※18)。資源開発から製錬、機能性材料の生産までを一貫して行う同事業モデルは、以下のような競争優位を創出しています。
・資源開発の規制/需給動向の共有化による調達リスクの低減
・非鉄金属素材の技術情報共有化による、材料事業顧客との新製品開発での効率的協働
・製錬/材料事業の連携がもたらす供給素材の特性の最適化
など※参考:住友金属鉱山「事業紹介」
一方、上記のセグメント別売上高比率のグラフを見ても分かるように、現在は売上の約71%を製錬が占めています。これは、同社が世界トップクラスの生産効率や技術力を有しているためです。
例えば、銅の製錬において、東予工場は電気銅の生産量が年間45万トンと、世界トップクラスのコスト競争力を有しています(※19)。また、ニッケルの製錬においても、下記2つの製造技術の組み合わせにより、世界トップクラスの効率性を誇ります。
(1)HPAL……低品位のニッケル酸化鉱からニッケルを回収する技術
(2)MCLE……ニッケル・コバルト混合硫化物(マットおよびMS)を高温で塩素に溶かし、電解法を用いて高純度のニッケルを生産する技術※参考:住友金属鉱山「統合報告書2023 P.22」
上記のように、銅やニッケルなどの素材を安定的に自主生産できるため、同社は強いコスト競争力を持っていると言っても過言ではありません。一貫したサプライチェーンの優位性を持っているため、高い利益率にも納得できるのではないでしょうか。
(※16)参考:住友金属鉱山「社長ごあいさつ」
(※17)参考:住友金属鉱山「企業情報」
(※18)参考:住友金属鉱山「事業紹介」
(※19)参考:住友金属鉱山「製錬事業」
非鉄金属業界大手4社の社風の違い・制度
住友電気工業:裁量権のある営業職。社内外問わずコミュニケーション力が重視される技術職
住友電気工業では、主に営業職と技術職の2つの職種が存在します。それぞれにおける環境についてご紹介します。
【営業職】 営業職では、商品企画・生産・販売の全過程に携われる裁量権の大きさが特徴です。ある社員は、「顧客とのやり取りも工場とのやり取りも全て自分1人で行う。そのため、顧客からの納期の変更などもすぐに工場に伝え、実現可能かどうかを自分で判断することができる」と話していることから、裁量のある環境で主体性が重視されていることが伺えます。また、部署ごとにも環境の違いがあるようで、環境エネルギー事業部では穏やか、エレクトロニクス事業部で活発な雰囲気があるようです(選考対策ページより)。 【技術職】 技術職では「研究開発」「生産技術」「工場」の3つの職種があります。いずれの職種に関しても、社内外を問わずさまざまな人との関わりがあることが特徴的です。そのため、関係者との利害調整をする際のコミュニケーション力が重視されていることがうかがえます(選考対策ページより)。
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JX金属:社員同士が切磋琢磨(せっさたくま)しあい助け合う文化
JX金属には、「相互尊重」という言葉が掲げられており、仕事上の立場だけではない個人への尊重やリスペクトを大切にされています。そのため、同社では業務においても協力し、支え合う側面が強いのが特徴です。
同社の社員からも、仕事で困難に直面した際に同僚に助けられたことや、上司や後輩といった立場を超えて相談し合える環境があるという声があります。このように、チームワークが重視される環境で挑戦したいと考える学生にとってはおすすめの企業です(選考対策ページより)。
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三菱マテリアル:海外経験を豊富に積める環境
三菱マテリアルでは、海外経験を豊富に積める環境が整っています。 その背景として、東南アジア、中国、欧州、米国、オーストラリアなどにも事業展開をしている点、2023年時点で連結売上高の58%を海外での売上が占めている点が挙げられます。ある大規模なプロジェクトに参画した社員は、既に海外出張回数は150回を超えていることからも、海外での活躍が豊富にあるといえるでしょう(選考対策ページより)。
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住友金属鉱山:一人ひとりの意見を尊重する社風
住友金属鉱山は、日々の業務において一人ひとりの意見を尊重する文化が根付いていることが特徴的です。この背景には、「人間尊重を基本とし、その尊厳と価値を認め、明るく活力ある企業を目指す」という理念があることが考えられます。
同社の社員からは、「個々の提案やアイディアをとても大事にしており、提案を頭ごなしに否定されたことは一度もない」、他の社員からは「財務の業務から生産現場勤務への異動希望を出したところ、周りの上司や同僚が自身の思いを後押ししてくれて、人を大事にしてくれる会社だと感じた」との声があります。このように、一人ひとりの社員の意見を尊重する社風は、主体性を持って働きたいと考えている学生にとって魅力的です(選考対策ページより)。
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非鉄金属業界大手4社の平均年収・平均年齢・平均勤続年数
以下の表は、各社の平均年収をまとめたものです。
企業名 | 平均年収 | 平均勤続年数 | 平均年齢 |
住友電気工業 | 779万円 | 16.9年 | 43.1歳 |
JX金属 | 不明 | 不明 | 不明 |
三菱マテリアル | 697万円 | 17.8年 | 42.2歳 |
住友金属鉱山 | 834万円 | 18.0年 | 41.5歳 |
※JX金属は、有価証券報告書の公開がないため「不明」と表記しています
※出典:2022年度有価証券報告書「住友電気工業/三菱マテリアル/住友金属鉱山」
※平均給与は千の位を四捨五入しています
3社の平均年収は約770万円です。同業界の内定者は「特に近年は残業をしない風潮があるため、時給で考えれば高いのではないか」と話しています。
非鉄金属業界大手4社の選考対策・クチコミ
非鉄金属業界は扱う商材や加工品の幅や種類が多く、時代の移り変わりとともに大きく変化していく業界のため、新しいことに挑戦し続けたい方や社会を支えたいと感じている方に魅了的な業界になるでしょう。
また、上流から下流まで幅広い会社があるため、自身の興味や適性を考え、ぜひエントリーしてみてください。
今回の記事ではその全てに触れることができませんでしたが、非鉄金属業界の企業は幅広い分野に展開しています。化学や自動車メーカーなど、一見他業界にみえるBtoB分野も調べてみると、複雑なBtoB向けの業界への理解が深まるかもしれません。
※注釈のない記載は、選考対策ページ(下記)の情報をもとにしています
さらに詳しい選考ステップは、下の「選考対策ページ」を参考にしてください。
住友電気工業
JX金属
三菱マテリアル
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