日系から外資、小規模から大手までコンサルティングファームには、それぞれ特徴があると言われています。その特徴というのもあくまでイメージの話。本当にそうなのかは、実際に現場で働く人にしか分からないでしょう。
ワンキャリ編集部は先日、「個人主義」というイメージを持たれている「A.T. カーニー」に対して、新卒入社した若手コンサルタント3人を招き、その真偽を検証しました。
【参考記事】
・若手コンサルタントのぶっちゃけ座談会 「A.T. カーニー=個人主義」の真実に迫る
今回は、他ファームから転職してきたコンサルタントである小泉さんに、A.T. カーニーへの印象を聞いてみました。複数のファームを渡り歩いたからこそ見えるファームの特徴、そして、コンサルタントとしてのキャリアの築き方に迫ります。
<目次>
・経営の根本へ挑むため、総合系ファームから戦略系ファームへ
・戦略系コンサルと総合系コンサル、同じプロジェクトでも「視点が全く違う」
・「頭の回路を焼き直す」 戦略コンサルに生まれ変わるための試練
・A.T. カーニー「らしさ」がないのが、A.T. カーニーらしさである
・総合系と戦略系、両方を経験したコンサルが語るキャリアの築き方
・提案のストーリー設計と緻密なヒアリング 裁量の大きさがもたらす成長
・「コンサルは激務」の誤解
・「ケース面接は粘り強さを見る」 現役コンサルが語る対策の勘所
経営の根本へ挑むため、総合系ファームから戦略系ファームへ
──小泉さんはA.T. カーニーに入社されてから6年目を迎えたとのことですが、転職をした理由について、自己紹介も兼ねて教えていただけますか?
小泉:端的に言えば、「より企業経営の根本課題に近いところへアプローチしたかったから」ですね。
私は新卒で総合系のコンサルティングファームに入社し、ITコンサルタントとして働いていました。私の場合、最初の2~3年は実際に自分でプログラミングすることから始まり、徐々にクライアントと直接、業務の要件について話すような仕事もしていくようになりました。
総合系ファームの中にもいろいろなプロジェクトがあるものの、最も一般的な「ITコンサルタント」の仕事は、私のように、クライアントのビジネス戦略に沿い、必要となったIT領域が決まった段階になってから、そのツールやソリューションの導入の支援を行うことです。
言い換えると、クライアント企業の中でビジネス上の戦略や狙いが先に決まっており、その中でどのようなITを活用すべきかも見えていて、場合によっては、どのITベンダー(IT機器やソフトウエアを提供する企業)のソリューションを利用するのかも既に決まっている。そこでようやく、初めてITコンサルタントとしてシステム導入の支援という仕事が始まる、というパターンが多いと感じています。
小泉 拓也(こいずみ たくや):大学卒業後、総合系コンサルティングファームへ入社。ITコンサルタントとして5年間勤務し、金融機関の会計システムの保守運用、公共系機関向けのITに係る事業継続計画(BCP)の策定などのプロジェクトに携わる。2014年にA.T. カーニーへ転職。IT・デジタルをはじめ、消費財、メディア、投資ファンドなど幅広い領域、プロジェクトに関わる。
──なるほど。さまざまな要件がほぼ決まった状態で、仕事が降ってくるというわけですね。
小泉:そうですね。もちろん、面白いと感じる部分も多かったのですが、働く中で、ITという領域や視点に限定したコンサルティングの仕事に、ある種の物足りなさや歯がゆさを感じるようになりました。
クライアントの経営全体から考えたときに、ITと一言で言っても、自分が支援する領域とは違う部分にビジネスの差別化につながる要因があるかもしれないし、そもそも狙うべきビジネス領域の選定に課題があるかもしれない。
そして当然ながら、そのような根本的な課題にアプローチすることの方が、クライアントのビジネス全体から見たらインパクトが大きく、貢献できることも大きいだろう、と感じるようになり、戦略系と言われるコンサルティングファームに転職することにしました。
──転職後、A.T. カーニーではどのような業務に携わりましたか?
小泉:消費財、メディア、投資ファンドなどさまざまな業界で仕事をしました。テーマについても、これまでの経験を生かしてITやデジタルといった領域を扱う一方で、経営戦略やマーケティング戦略の策定、業務改善やコスト改善といった幅広いテーマに取り組んできました。最近では、企業のデジタル戦略から、それを進めるための組織作りや人材選定といった部分にまで携わるプロジェクトも増えてきています。
戦略系コンサルと総合系コンサル、同じプロジェクトでも「視点が全く違う」
──転職してから、仕事の進め方に大きな変化はありましたか?
小泉:大きくは「プロジェクトの幅広さ」「携わる時の視点」「スピード感」の3つですね。こうやって3つ挙げると何だかコンサルっぽいですが(笑)。特に扱うプロジェクトの幅は、A.T. カーニーで広がったと思います。
──戦略系ファームと総合系ファームで違うということですか?
小泉:そうですね。一般的に総合系ファームは採用人数が多いので、新卒で入ると、特定の業種やテーマを扱う部門やグループに配属されるケースが多いです。
そこで数年を過ごすことも珍しくないため、最初から、かなり決められた領域で経験を積むことになります。例えば、私は最初、金融系の財務会計システムの保守運用をメインで扱う部門に配属され、3年ほど同じテーマで働いていました。
それに対し、A.T. カーニーでは、最初から特定の部門に配属されるということはなく、さまざまなテーマや業種のプロジェクトで、幅広い経験を積むことができます。新卒も中途もそのスタンスは同じで、特に若手のうちは多くのテーマのプロジェクトを経験させて一人前のコンサルタントとして育てていくイメージです。1つのプロジェクト期間を3カ月程度とすると、1年あれば4業種、4テーマを経験できる計算です。
もちろん、総合系ファームも、世の中のほぼ全ての業種を取り扱っていますし、IT以外のテーマも扱っています。各社のWebページを見ると、総合系も戦略系も、会社として扱っているテーマの幅は似ているように見えるかもしれません。しかし、「そこで働く一人のコンサルタントとしての目線」で見ると、経験できる幅広さは大きく異なると感じています。
──「携わる時の視点」についてはいかがでしょう。学生にも分かるような形で、かみ砕いて教えていただければと思います。
小泉:A.T. カーニーでは「CEOアジェンダ」と呼んでいますが、「マネジメント目線からみた課題」を扱うことをミッションとしており、コンサルタントも経営者目線で思考することが求められていると感じますね。前職との比較で分かりやすいよう、ITやデジタルのテーマで具体的にお話ししようと思います。
例えば、前職のITコンサルタントの場合、クライアントが利用しているさまざまなITシステムの中で、会計領域のシステム担当に選ばれます。さらに、その中で「ハードウエア」や「ソフトウエア」や「ネットワーク」という形で担当領域が細かく分かれており、私の場合、その会計に関するソフトウエアの部分、さらに会計のソフトウエアの中でも、例えば「売掛金の管理」といった一部の業務について担当するITコンサルタントでした。
──ここまで細かく分かれているとは、思っていませんでした……。他の領域でも、一業務のレベルで専門のITコンサルタントがいるということですか?
小泉:おっしゃる通りです。それだけ、ITが担う業務は幅が広いということでもありますね。実際のプロジェクトでは、その業務を日々担っているクライアントの実務担当者と相談し、どのような業務にどのようなITを構築していくのかを議論しながら進めていくことになります。
それに対し、A.T. カーニーでは、例えば全社の「デジタルトランスフォーメーション」がテーマであった場合は、そもそも、企業経営(運営)の上流から下流までの業務がどのようになっているか、デジタルの活用余地が大きいのはどの領域で、それぞれにどのような具体的な打ち手があり、それは誰が、どのように、どのくらいの期間をかけて推進していくのか、といったことを考えます。
全体の経営戦略や事業戦略、そして、そこから導かれる「競争優位性の要件」や「組織のあり方」等の整理から始め、そのあとで初めて「必要なITは何か」といった検討に入るわけです。デジタルやITがテーマのプロジェクトでも、ツールありきの検討ではなく、あくまで「経営者の視点」で、企業の事業価値を向上させるためのデジタル活用をゼロベースで検討していくイメージです。
「頭の回路を焼き直す」 戦略コンサルに生まれ変わるための試練
──なるほど。同じコンサルタントでも両者は全く違う仕事だと感じました。こうした仕事の進め方やスタイルの違いは、すんなり受け入れられたんですか?
小泉:特に3つ目の「スピード感」の違いには戸惑いましたね。転職してきた人だと「頭の回路を焼き直す」という表現をする人もいるぐらい、頭の使い方も変わりました。さきほどの「CEOアジェンダ」というテーマになるほど、課題やプロジェクトのゴールが曖昧なものになりますが、それでもスピードは求められます。
たとえば、転職後間もないころは、自分のタスクが与えられて丸1日考えてから上司に相談したこともあるのですが、「それだけ自分1人で作業のゴールが曖昧なまま作業していたということは、かなりの時間をロスしている」とアドバイスを受けました。
──頭の回路を焼き直す!「生まれ変わる」くらいのインパクトがあります。ここからどう改善したのですか?
小泉:それからは、1〜2時間ぐらいで内容を消化し、半日たたないうちに相談というサイクルを回すようにしました。それでもすぐにうまくいくということはなく、自分なりに戦略コンサルタントの仕事のリズムになじむまでに半年、どうやったらプロジェクトでバリューを出せるのか、何となく分かり始めたのは1年以上たってからです。もっと早い段階で「もう慣れた」と言う人もいますし、そのペースは人それぞれだと思います。
A.T. カーニー「らしさ」がないのが、A.T. カーニーらしさである
──総合系コンサルとA.T. カーニーの両社を経験した小泉さんから見て、両者のコンサルタントの雰囲気は違いますか?
小泉:かなり違いますね。A.T. カーニーのコンサルタントは、何というか非常に個が立っているように感じます(笑)。前職の総合系と比べてもそうですし、他の戦略系ファームと比べたときにも、A.T. カーニーの1つの特色になっているのではないでしょうか。
他の戦略ファームのコンサルタントとも働いた経験のあるクライアントや、他の戦略ファームのインターンを経験してA.T. カーニーに入社した新卒コンサルタントの方からも、「会う人によってキャラクターが違う」と言われることがあります。
──それは面白いですね……! なぜ、そうなっているのでしょう?
小泉:ここから先は私の勝手な推測ですが、これは「いまこの瞬間、たまたま戦略系ファームの中でA.T. カーニーに個性的な人が偶然集まった」というわけではなく、ファームの規模を考えると必然的かなと思っています。
「ダンバー数」と呼ばれるらしいのですが、とある研究によると、人間が集団になったときに自然にまとまっていられる人数は150~200人くらいらしいのです。ちょうどA.T. カーニーの規模がそのぐらい。逆にそれ以上の人数で集団としてまとまるには、強制的なルールやノルマのようなものが必要になるというのです。
これが本当だとすると、大規模な戦略系ファームは、特に似たような人を集めようとしていなくとも、まとまるために自然と「会社の文化やカラー」が明確になり、働くコンサルタントにも一定の均質性が生まれているのではないでしょうか。それに対して、うちは「A.T. カーニー『らしさ』がないのがA.T. カーニーらしさ」という(笑)。もちろん、どちらの方が居心地が良いかは人それぞれですが。
総合系と戦略系、両方を経験したコンサルが語るキャリアの築き方
──「特徴がないのが特徴」というのは、何とも哲学的ですね。前職である総合系コンサルの魅力についても教えてください。
小泉:もちろん総合系コンサルにしかない魅力もたくさんあります。入ってからすぐ、明確に決まった領域で専門性を高められる点はメリットにもなります。例えば、「グローバルの会計システム」「サプライチェーン×デジタル」「M&A領域」など、やりたい領域が明確に決まっているのであれば、総合系やブティック系(※)のファームを選ぶのも良いと思います。
また、総合系の場合、大規模なプロジェクトだとコンサルタントだけで100人を超えるケースがあります。
大人数のプロジェクトマネジメントの経験や、多数のステークホルダーを巻き込んで達成感を味わう喜びは、総合系の大規模なプロジェクトならではと思います。どういった形で仕事をしたいか、といった点も考えてみるといいかもしれません。
(※)……M&A、人事・組織、ブランディングなどテーマに特化してサービスを提供しているファーム
──手触り感という面ではいかがでしょう?
小泉:戦略系が、経営視座に近い位置で仕事に取り組むことで手触りを感じるのであれば、自ら手を動かして、システムが動く様子を感じられるのは総合系ならでは。自分で設計やプログラミングしたシステムが目の前で動くわけですから、ある種、モノづくり的な楽しさを感じられるでしょう。
また、もしデジタル的な側面からコンサルをやりたいのであれば、総合系でIT領域を学んだ上で、戦略系に移るというのも、キャリアの組み立て方の一つだと思います。
提案のストーリー設計と緻密なヒアリング 裁量の大きさがもたらす成長
──転職してからの5年間、さまざまなプロジェクトにアサインされていると思いますが、一番印象に残っているプロジェクトを教えてください。
小泉:入社から1年半が過ぎたころ、映像コンテンツに関するクライアントの依頼で「国内でコンテンツ産業振興のプラットフォームを作る」というテーマに取り組みました。この時、私のチームにはアソシエイト、マネージャーといった、自分よりも上のランクの人間がおらず、マネージャー業務を自分が中心となって進めていく必要がありました。
──マネージャー級の人がアサインされないというのは、A.T. カーニーではよくあることですか?
小泉:どちらかと言えば少ないケースだと思います。もちろん、パートナーやプリンシパルはレビューをしてくれますが、日々のタスク設計や細かい判断はお客さまと調整しながら自分で進めていきました。このプロジェクトはテーマの抽象度が高く、具体的にどんなタスクに落とし込むとバリューが出るのかを考えるのは苦労しましたね。
──具体的に、どのように仕事を進めていったのでしょう?
小泉:官公庁の方やコンテンツ関連の業界団体、コンテンツ関連の企業も含めて20人ぐらいにインタビューを設定し、話を聞きました。社内でインタビュー候補者につながりのある人がいれば紹介してもらいました。
もちろん、Webページから電話番号を調べて、直接コンタクトを取ることもありましたよ。1件1件、趣旨を説明して、アポイントを獲得するような地道なこともしましたし、実際にインタビューを受けてくれた方に「どんな人たちを巻き込むと、この検討を前に進められるか?」といった相談をして、新しく人を紹介いただくようなケースもありました。
──地道な作業がプロジェクトのカギになったということですね。厳しい場面も多かったんじゃないですか?
小泉:地道な作業もそうですが、特に「皆がそれぞれの視点でインタビューで語ったことから、本当に意味のあるクライアントへの示唆をどう抽出するのか?」「インタビューだけでなく、データ分析やリサーチの結果も踏まえたA.T. カーニーとしてのクリエイティビティのある提言をどのように一つのストーリーとして描くのか?」といった点は大変でしたね。
マネージャーがいると、ストーリーの方向性をある程度定めて、そこから作業を各コンサルタントに分担するように設計してくれるものですが、それすらも自分が責任者。その時の自分の実力から考えると、大きなチャレンジをする機会を与えてもらったと思います。
──学生の中には「地道なことやしんどいことはしたくない」という人もいます。しんどいと感じた時、成長できるかはやはり自分次第なのでしょうか?
小泉:ここまでの話で伝えたかったのは、「自分の能力をブレイクスルーできるかどうか」「その機会やシチュエーションをポジティブに捉えられるか」ということです。
それこそ、前の人や過去の自分ができたことを、再現しても仕方がないのが戦略コンサルという仕事。前に達成できたのであれば、もっと先へ行く。そして「先に行くためにはどうしたら良いのか?」を常に自発的に考え続ける必要がありますし、そういったことを考えること自体をある程度楽しいと感じられることが重要です。そういう意味だと、自分次第でしょうね。
「コンサルは激務」の誤解
──小泉さんは、転職の前後で働き方は変わりましたか?
小泉:今の方がメリハリのある生活になりました。有給についてはプロジェクトが終わるタイミングでまとめて消化しており、消化率はほぼ100%です。もちろん、プロジェクトのフェーズによっては、昔より忙しいタイミングはあります。ただ、これをワークライフバランスとして捉える場合、単純に「一日の労働時間が短ければ、ワークライフバランスがよい」と捉えるのは、視野が狭すぎる可能性があると思います。
──視野が狭い、とは具体的にどういうことでしょう?
小泉:一般的な戦略コンサルタントのプロジェクト中の1カ月を切り取ると、世の中平均と比べたら、やはり労働時間は長いケースが多いのが実態だと思います。これは扱っているテーマの難度の高さや与えるインパクトの大きさから、考え抜くことが必要であるためで、そこには一定の時間がかかるものです。
しかし、われわれの場合、その「テーマに答えを出すこと」が仕事の成果であり、それを生み出すための「時間の使い方」は、問われません。そこはある種、個人の自由で、コントロールを効かせられる余地が大きいです。毎日のように遅くまで仕事をしているわけではなく、仕事と生活のバランスを考えて、メリハリのある働き方をしているコンサルタントが多いです。
──確かに、働き方をコントロールできるというポイントは、ワークライフバランスにつながってきそうです。
小泉:1年という長いスパンで見れば、私の場合、1週間程度のまとまった有給休暇を年に3〜4回は取ってリフレッシュしています。社外の友人には「休みすぎじゃない?(笑)」と言われることもあるのですが、A.T. カーニーではそんなことはありません。世の中平均で言うと、まとまった有給は年に一度お盆休みくらい、という話も良く聞きますし。
話は少し変わりますが、私は育児休暇を半年ほど取得しました。これもまたワークライフバランスと言えますよね。A.T. カーニーでは、子供が生まれたタイミングで、男性も3カ月ほど休む人が多いです。「男性が育休なんて取ったら、会社に居場所がなくなるのでは?」と周りには心配されましたが、そんな問題は全くありませんでした。もっと取ればよかったんじゃないかと思っているくらいです(笑)。
──なるほど。「日々の時間の使い方に対する自由度」や「長期で見たときの時間配分」まで考えると、忙しさの見え方が変わってくるということですか。自由に休暇を取得できるといった、環境も大きく影響するのですね。
小泉:その通りです。さらに、もし5年というスパンで考えたなら、また見え方は変わるでしょう。身に付けたい能力を付けて、転職することを前提とするなら、その時間は大切な投資になる。単純にワークライフバランスと聞くと、「何となく忙しすぎるのはイヤだ」というくらいで考えが止まってしまいがちですが、時間軸も意識してみると、自分がどんな働き方にフィットしそうか、見え方は大きく変わってくるはずです。
──A.T. カーニー全体としても「ワークライフバランス」を進める風潮があるんですか?
小泉:そうですね。社内報や社員旅行といった取り組みや社内の交流イベントも充実していますし、皆が仕事と遊びのバランスをうまく取っているように思います。私自身も、社内報と社員旅行の企画担当をやっているんですよ。東京オフィス内でコンサルタント自身が作成している社内報は、企画がかなり練られており「覆面座談会」や「パートナー全員の顔を合成してみた」といった遊び心のあるコンテンツもあります。
「ケース面接は粘り強さを見る」 現役コンサルが語る対策の勘所
──戦略コンサルを目指す学生は、既にケース面接などの対策を行っていると思います。現役のコンサルタントという立場から、アドバイスはありますか?
小泉:私自身も面接官をやることがありますが、ケース面接では「事前に考えていなかった質問に対して、深く考えることができるのか?」が求められます。「キレイに計算できる」「計算式が組み立てられる」というより、「ふわっとしている題材に対して、どこまで深く考えられるか?」という粘り強さを見せられるかが重要だと思います。
──せっかくなので、具体的な事例を教えてください!
小泉:例えば「ミネラルウォーターの市場規模を推測せよ」というお題があったとしましょう。ワンキャリアを読んでいるような、ケース対策をしっかりしている皆さんなら、年代別の人口に分けて単価と数量に分解して……というレベルの話はできるでしょう。しかし、私たちはそこから先のディスカッションでどう振る舞うか、どこまで考えを深めていけるのか、という点を見たいのです。
──小泉さんが面接官だった場合、どんなディスカッションをしますか?
小泉:例えば「20代の1人暮らし世帯は、週に3本消費するとして……」というふうに、仮定を感覚値で定義する人は多いです。それ自体はいいのですが、そこから「週3本は本当に妥当なのか?」「20代で区切ってみたけれど、違う方法がないのか?」という形で話を進めていきます。このやり取りを通じて見たいのは思考力。公式を当てはめるのではなく、本当にリアリティを持って、考えられているかを見たいのです。
ケース面接の対策本を見てみると、「抽象的なお題であっても、こんなステップやフレームに分解すれば答えられる」というようなことが書かれていたりもしますが、コンサルティングの実務やいわゆる「ロジカルシンキング」と呼ばれるものが、そのような公式にあてはめて答えが出せる仕事かというと、それは全く違います。すぐには答えが出ない、どこからどう考えたら良いかも分からないような課題に対して、愚直に、そして粘り強く考えて筋道を立てていくというのが、コンサルタントの現場には求められます。そういった議論を、私たちと一緒にやっていけそうな人材かどうか? という点を、ケース面接では見ているんですよ。
──ありがとうございます。最後に、ここまで記事を読んでくれた学生に向けて、メッセージをお願いします。
小泉:コンサルタントとして働き始めてからの話になりますが、若手のうちは、特に「謙虚さ」と「主張」のバランスが大事だと思います。
例えば若いうちから、周りの人のレビューに対して「いや、私はこう思うんです」という主張が強い子がいたとしましょう。周囲の意見を受け止められないと、スキルの成長曲線はゆるくなってしまいます。逆に謙虚になりすぎ、レビューされたことだけを素直に反映していると、「君はどう思うの?」という部分が抜けて受け身になりすぎてしまう。これではコンサルタントとして弱い。「自分はどちらに傾きがちだろうか」「最近、自分はどちらかが強くなり過ぎていないだろうか」といったことを、常に自問自答することが重要だと思います。
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【ライター:スギモトアイ/撮影:友寄英樹】