2022年卒の就活は、常に新型コロナウイルスとともにあったと言っていいだろう。
大規模合説の中止に始まり、説明会や面接、OB・OG訪問、インターンシップまでがオンライン化するなど、コロナ禍はいわゆる「就活の常識」を大きく変えた。就活生はもちろん、企業側もこの変化に戸惑いを覚えたはずだ。
人事と学生、双方に不安が募る状況だが、それを解消するヒントはある。ウェブ上で公開されているクチコミだ。
ワンキャリアは、就活生から集めた15万件以上のクチコミをもとに「就活クチコミアワード2021」を発表した。
今回受賞した企業のクチコミを見ていくと、評価のポイントはズバリ「コロナ禍でも『学生ファースト』であり続けられたか」という点に尽きることが分かる。対面での施策ができない中、学生にどのようなフォローをしたか、代替の手段を見いだしたか……人事の対応力が、学生の満足度にそのまま表れた形だ。
新型コロナウイルスの終息がまだ見えない今、来年もこの状況は続くだろう。今回のアワードから見えてきた特徴は、学生が「受けてよかった」と思える企業の「ニューノーマル」を占うことになりそうだ。
クチコミアワードは「説明会」「インターン」「本選考」の3部門に分かれている。今回はGOLD賞を受賞した各部門のTOP10社から、特筆すべきクチコミを紹介していこう。
<目次>
●説明会部門:コロナ禍でより重視される「リアル感」。録画とリアタイ視聴の使い分けもカギに
●インターン部門:オンラインでも「職場受け入れ」、新開発のシミュレーションゲームも?
●本選考部門:アフラック、ロレアル、あいおい──オンライン「ならでは」のフォローが光る
●クチコミには、人事と学生の「不安」と「すれ違い」を解消する力がある
コロナ禍でより重視される「説明会のリアル感」。録画とリアタイ視聴の使い分けもカギに
まずは説明会部門から。就職活動において、コロナ禍で最も変わったのは説明会だろう。1回目の緊急事態宣言の最中、2020年5月にワンキャリアが2022年卒会員に行った調査では、実に9割もの学生が「今後も企業説明会はオンライン実施で良い」と答えた。
ワンキャリアも2020年3月以降、実に100社以上の企業説明会をYouTube上で実施してきた。コロナ禍が明けても、動画説明会という選択肢が残るのは確実だろう。
昨年の記事で、説明会は「その人ならではの言葉や、現場だから感じられる生っぽさが満足度を高めている」と述べたが、コロナ禍で対面コミュニケーションが減った今、その傾向はより顕著になっている。GOLDを受賞した10社は、以下のようになった。
まず目を引くのは、財務省、経済産業省、外務省と官公庁が3つも入っていることだろう。
官僚というとお堅いイメージがある人もいるかもしれないが、経済産業省や財務省のクチコミを見ると、自身の体験談や仕事のやりがいなどを「熱く」語る場面も多いことが分かる。
コロナ禍以前の話にはなるが、外務省などは本格的なワークを通して、業務内容を伝えていることが分かる。表に出づらい業務だからこそ、伝え方は重要だ。各省とも「リアルさ(生っぽさ)」が高評価を得ている。
また、リクルートマネジメントソリューションズのクチコミにもあるように、オンラインの特徴を生かした「録画式」の説明会も好評だ。チャットなどで質問ができる「リアルタイム参加」といつでもどこでも確認できる「録画視聴」。両者の使い分けが、学生の満足度を左右するようになるだろう。
オンラインでも「職場受け入れ」、新開発のシミュレーションゲームも? 進化し続けるインターン
続いてはインターン部門。インターンシップはコロナ禍で最も人事を悩ませた就活イベントだろう。
従来、対面で行っていたコンテンツをオンラインに移行するのは、容易なことではない。サマーインターンを中心にインターンを中止する企業も相次いだ。クチコミからは企業側の苦心が感じられた。
インターン部門の受賞企業は次の通り。中でも特徴的だったのは「コロナ禍前に“超”本格的なインターンを行った企業」と「オンラインに合わせたプログラムを実施した企業」だ。
まず目を引くのはメーカーの多さだ。旭化成、ソニー、キヤノン、日鉄エンジニアリングと10社中4社が製造業絡みの企業となる。説明会、本選考においてはGOLD賞に輝いた製造業企業はない。インターン部門だけ特筆して高い評価を得ているようだが、クチコミを見るとその理由が見えてくる。
コロナ禍以前の話ではあるが、ソニーとキヤノンの両社は、自社の最新技術や工場といった魅力的なコンテンツを生かしながら、超本格的な職場体験を実現したようだ。
また、オンライン実施に合わせたコンテンツが高評価を得た企業もある。東京海上日動火災保険は、例年、職場受け入れ型で開催されているインターンを、規模を縮小しながらもオンラインで実施したようだ。
今年はコンテンツを一から作り直した会社も多かったはずだ。旭化成のようにゲーム型のプログラムをインターンに使っている例もあり、オンラインと相性の良い方法を模索しているように思える。手をかけて生み出したコンテンツには、必ず良い反応があるはずだ。
アフラック、ロレアル、あいおい──オンライン「ならでは」のフォローが光った本選考部門
最後は本選考部門だ。多くの企業がオンライン化で選考フローが変わる中、不安を感じる学生に、ていねいに寄り添えた企業が評価を集めた。GOLD賞の受賞企業は以下の通りだ。
まずは、あいおいニッセイ同和損害保険のクチコミを取り上げる。今年は非対面の選考として「録画面接」を取り入れた企業が目立ったが、同社はていねいなフォローがクチコミから見えてくる。
次はアフラックだ。オンライン選考では、社員と対面できないというデメリットがあるが、同社はそれを解消するために初めて、最終選考前に社員との座談会を開催したという。
オンラインでのコミュニケーションでは「社風の伝わりにくさ」が課題として挙がりやすい。「一度も社員と会ったことがない会社でやっていけるのか」と不安に思う学生は多いはず。多少手がかかっても、コミュニケーションの機会を増やせば、入社後のミスマッチを減らすことができるだろう。
とはいえ、何もその手段は座談会に限らない。日本ロレアルのクチコミからは、オンライン「ならでは」のフォローのあり方がうかがえる。
また、当然のことではあるが「結果連絡の早さ」や「納得して就活を終えられるための気遣い」といったポイントが好評価を得るのは、コロナ禍以前と変わらない。いわゆる「オワハラ」への対応も含め、ISID(電通国際情報サービス)へのクチコミが学生の心情をよく表している。
クチコミには、人事と学生の「不安」と「すれ違い」を解消する力がある
2019年に始めた「就活クチコミアワード」は今年で3年目を迎えた。
コロナ禍で対面のコミュニケーションが制限される中、今年ほど「クチコミ」の存在感が高まった年はなかったのではないだろうか。
ワンキャリアに集まった膨大なクチコミからは、就活を経験しないと分からない企業の評価を読み取ることができる。
ただ、それは単なる評価という価値を超え、学生と企業、双方が就活を円滑に進めるための「羅針盤」のような役割を担いつつあるように思う。実際、今回取り上げたクチコミからは就職(採用)活動にまつわるさまざまな示唆が得られた。これらは人事と学生の「不安」と「すれ違い」を解消する力があるはずだ。
騙し合いではなく、本音のコミュニケーションが取れる就活へ。より多くの人が納得してファーストキャリアを選べるように。今後もワンキャリアは人事と学生の双方に、価値ある情報を届けていく。
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就活クチコミアワード2021